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よる(nuit)

夜が好きだった
夜は自分に妙に馴染んで優しくあり
ただそこに在って静かに受け容れてくれた

数えられるだけの星が瞬く不便な夜空の
何層にも連なった階調を知られるほど長く過ごして
さながらそれは夜の国の住人になったような気分であった

高層マンションの屋上に浮かぶ赤いてんてんの明滅は
眠れずに加速する脈拍を宥めてくれるようで
穏やかさがすんなりと肌に染み入ってゆく

喧騒の裏側まで来てすっぽりと月に隠される
物事の淡い側面がぼくを支えてくれているように感じて
暗がりにそうっと体を預けた

いまデネボラの足下で太陽が眠っている
かつて溶けてしまいたいと思ったのはその暗がりにだけ
白日のもとで細部をさらけ出す明快な死にはなりたくなかった

ぼくは人々のねむる夜が好きだった
夜はねむれない人間には妙に優しいから
光から隠された少しの間だけは
自分のコントロールを取り戻せた気がしていた

I appreciate your brilliant photo, zhangliams 
https://pixabay.com/ja/users/zhangliams-606349/

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