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花売り

松の林の合間を縫って
花売りが花の市場をひらく
鮮やかな南国の赤から
深く落ち着いた緑までが揃う
その市場の華やぎに
花見客は浮かれ
彩りをつまみに酒を飲む

花見客は旧知の仲と酌み交わし
あるいは新しい顔とも乾杯をして
いかにも心地良いといった様で
鳥たちの歌声に時間を預けている
その流麗な歌声に混ざって
市場の向こうから聴こえくる
寄せては返す波の音
生命はそうして日々の谷を越え
連綿と紡がれてゆく

いよいよ春が来た
夜の明けゆくさまに頷けなくとも
道路脇の雪は溶け花は開いた
結び目の解けるような陽気のなかで
木漏れ日を掻い潜って駆けるこども達がある

太陽が昇ることをやめて
真っ黒な夜が続くこともあった
それでも目に見えぬように蓄えられた
露の落ちるあいだに蕾は花になり
丁寧に気をやった時間はいつか果実になる

落葉樹は冬のはじまりに必ず葉を落とし
時が来ればまた新しい葉を付ける
どれほど澱みが留まっていても
そのうちに時間は流れてゆくよ


I appreciate your brilliant photo, 김경복
https://pixabay.com/ja/users/%EA%B9%80%EA%B2%BD%EB%B3%B5-15418216/

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