暑い日が続いていますね。ビールがおいしい季節ですが、皆さん普段日本酒は飲みますか?
実は担当Sは、なかなかの日本酒オタクで、日々、全国の地酒を飲み比べており、夏でもビールより日本酒!という大の日本酒好きです。ということで今回は「日本酒」と脱炭素をテーマにお話していきます。
日本酒造りは自然とともに
脱炭素のお話の前に、日本酒造りについて少し説明します。皆さん、日本酒の原材料はご存じですか?日本酒は基本的に「米(米麹)」と「水」で作られます。種類によっては醸造アルコールが添加される場合がありますが、「純米」酒であれば、「米(米麹)」と「水」のみ。また、一般的に発酵させる際には、酵母菌や乳酸菌を人工的に添加しますが、「酵母無添加」の日本酒であれば、自然に自生している蔵付きの酵母菌や乳酸菌により作られることとなり、自然界に存在するものだけで作られています。
また、酒造りの時期は、気温が下がる冬期間が一般的です。酒米が秋から出荷されるということもありますが、気温が低い時期の方が、発酵が穏やかに進むなど、日本酒の味や質に関わるため冬期間に酒造りが行われるそうです。
こうしてみていくと、酒米の質や水の温度、酵母菌の働き、そして気温など日本酒造りは自然の影響を多分に受けるものだとわかっていただけるかと思います。
もうお分かりだと思いますが、実は日本酒造りは「地球温暖化」の影響を非常に受けやすいのです。
酒どころが北海道に?
日本酒が有名な場所というと皆さんはどこをイメージしますか?「灘の男酒」「伏見の女酒」という言葉に代表されるように、兵庫県や京都府といった関西圏は昔から酒蔵が多く、酒米の王様「山田錦」の主産地は兵庫県です。八海山や越乃寒梅で有名な新潟県や東北も日本酒の一大産地として有名ですよね。
では、北海道はというと、寒すぎて酒米の生産に適さないなどの理由から酒蔵は少なく、流通する日本酒も道内消費がメインで、これまでは正直、全国的な評価はあまり高くなかったようです。
しかし、ここ数年、地球温暖化の影響により状況が変わりつつあります。
まず、北海道で栽培することは不可能とされていた「山田錦」の生産に空知管内芦別市が挑戦。2016年から取組を開始し、2021年には生産に成功した北海道産山田錦での日本酒造りが道内各蔵でスタートしました。
また、以前から生産されていた道産酒米「吟風」「彗星」「きたしずく」といった酒米もコロナ禍で一時的に作付面積が減ったものの、順調に作付面積を増やしており、道内の酒蔵での消費はもちろん、最近は道外の酒蔵でも使用が増えているようです。北海道が主催する「北海道米でつくる日本酒アワード2023」では道外から4つの酒蔵が参加しました。
さらに北海道では酒蔵も増加傾向です。2017年に上川大雪酒造が上川町に、2020年に三千櫻酒造が東川町に、2021年には箱館醸造が七飯町に誕生。上川大雪酒造は上川町以外にも、帯広市や函館市にも醸造場を新設しており、北海道が日本酒の勢力図を変えるとも言われています。
地球温暖化で日本酒は存亡の危機
こうした北海道における酒米生産の取組や酒蔵の移転は地球温暖化対策の「適応」策の一つと言えます。2020年に岐阜県中津川市から北海道東川町に移転した三千櫻酒造はHPで経緯をこのように説明しています。
100年を超える歴史を積み重ねてきた地域から北海道へ移転するという決断はそう簡単にできるものではありません。酒蔵の中には100年どころか200年、300年という歴史を持つ蔵も少なくありません。三千櫻酒造のような適応策はどの蔵にもできるものではなく、その土地で酒造りができなくなれば当然廃業という可能性も出てきてしまいます。
また、日本酒の国内需要は残念ながら減少傾向です。地球温暖化のせいで冷暖房に余計なお金がかかれば、さらに収支は悪化します。加えて、冷暖房のエネルギー消費が多くなれば、CO2排出量が増え、地球温暖化を進めてしまうという悪循環に陥ってしまいます。
日本酒業界から脱炭素
こうした状況に対し、地球温暖化対策の「緩和」策に自ら取り組み、温暖化の進行を食い止めようと行動している酒蔵も出てきました。
兵庫県神戸市の(株)神戸酒心館では、2022年に日本酒造りの行程においてカーボンニュートラルを達成した日本酒「福寿 純米酒 エコゼロ」を販売し、話題となりました。使用するエネルギーを100%再生可能エネルギーに切り替え、カーボンニュートラルな都市ガスへの転換、米をあまり磨かないことで精米行程におけるエネルギー消費の削減など様々な取組を組み合わせてカーボンニュートラルを達成したそうです。
「弥右衛門」で有名な福島県喜多方市の大和川酒造店は、自社田での米づくりのほか、2013年に現在の代表が「会津電力株式会社」を設立し、エネルギーの地産地消による脱炭素の取組を進めています。
いかがだったでしょうか。地球温暖化は様々なところに影響を与えています。また脱炭素の取組は単にCO2を削減するだけでなく、産業や企業の持続可能性にも関わる重要な取組です。脱炭素を進めて、日本の文化や伝統を守るとともに、まだ日本酒の飲めない子どもたちが将来日本酒で乾杯できる未来を守っていきたいですね。
※お酒は二十歳を過ぎてから
※飲酒運転をしない、させない、許さない、そして見逃さない
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