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ARTのよもやま話

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アートというより「art」に関するよもやま話。Copyright©Susie Y. All rights reserved.
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#文化

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大塚国際美術館(日本・鳴門) 番外編

本物を見た時よりも、「本物の良さがわかる」こともある 〜 大塚国際美術館(日本・鳴門) 後編

大塚国際美術館(The Otsuka Museum of Art)で今回見学出来た作品の中で、個人的に印象に残ったベスト5を厳選して紹介している(順不同)。前回の続き。 2.スクロヴェーニ礼拝堂 大塚国際美術館の展示の中でも「スクロヴェーニ礼拝堂の実寸大に復元された空間」は、ダントツの完成度だ。壁画の剥がれ具合まで見事に再現している。 イタリア、パドヴァにあるスクロヴェーニ礼拝堂は、見学時間15分のみ。もちろん、撮影禁止だ。鳴門の「スクロヴェーニ礼拝堂」の画像でもおわかり

個人的に印象に残ったベスト5は。。 〜 大塚国際美術館(日本・鳴門) 中編

実は、大塚国際美術館の本当のすごさは、地下3階の古代・中世の展示場からはじまる。 もう一度、同美術館の公式サイトより以下の部分を引用させていただく(*1)。 館内には、6名の選定委員によって厳選された古代壁画から、世界26ヶ国、190余の美術館が所蔵する現代絵画まで至宝の西洋名画1,000余点を大塚オーミ陶業株式会社の特殊技術によってオリジナル作品と同じ大きさに複製しています。それらは美術書や教科書と違い、原画が持つ本来の美術的価値を真に味わうことができ、日本に居ながらに

「本物を知ること」は、本物を見なくても可能だ 〜 大塚国際美術館(日本・鳴門) 前編

私の頭の中には、「本物を現地で見る」というアートを研究してきた人間としての、どうでもいい使命がこびりついていた。ただ、下記の記事にも書いたが、ミュンヘンの古典彫刻模型博物館での体験が、「本物を現地で見る」=「本物を見ないと意味がない」という思考回路を吹っ飛ばす結果となった。 この体験を通して、すぐに思いついたのが日本の大塚国際美術館へ行ってみて、今度は、名品の複製画を体験することだった(*1)。ご存じの通り、同美術館に本物の作品は、一切展示されていない。その規模といい、世界

「本物を知ること」は、本物を見なくても可能だ 〜 古典彫刻模型博物館(ドイツ・ミュンヘン)編

本物を現地で見る。 私の「アートの聖地巡礼の旅」のキーワードだ。 正直言って「本物」が持つパワーは、計り知れない。ましてや、現地で「本物」を見ることは、誰にとっても最高の体験だ。 こんなことを書いておいて、しかも、これから旅の備忘録を様々な形で書いていくつもりなのに(先日書いたように)「その前」にどうしても書かいておかなければならないことがある。 それは、本物を現地で見るために旅を重ねてきた私が「本物を知ること」は、本物を見なくても可能だ、と気づいてしまった体験だ。逆

カルチャーの境界線を乗り越えて

先日、こんなつぶやきnoteをアップした。 泥の中から咲く花、蓮の花は、蓮華ともいう。 いろいろな象徴が言われているけれども、私としては、極楽浄土に咲き誇る花のイメージが強い。 そして、前述のように「泥の中から咲く花」ということで、蓮の花は、「再生」を意味することもある。 三浦春馬氏を注目するきっかけが、ミュージカル『キンキーブーツ』だ。 彼が演じたドラァグクイーン、ローラが見たかった。 どこかのインタビューで、三浦氏は、「女性に対してリスペクトの気持ちを持って、

西洋美術を専門にしている私が、「西洋」に対して疑問に思うこと

美術史は、問題がある学問だ。 美術史は、ツールだと言っておきながら、問題があるのであれば、避けた方がいいのか。私は、そう思わない。問題を知ることで、今まで「見えなかったことが見えてくる」。視野が広がる。なぜ、その問題が起きるのか。理由を考えると意外なことがわかってくる。 美術に興味があるのであれば、知っておくとお得くらいで、このnoteを読んでいただければ幸いだ。 まず、本題に入る前に、以下のことをお伝えしなければならない。 本来、「美術史の問題」は、美術史全体の問題

芸術や文化が少しでもスキであれば、今知ってほしいこと

追記(2020/06/14):国立西洋美術館は、2020年6月18日(木)より全館開館となることが決定。上記の「ロンドン・ナショナル・ギャラリー展」も日時指定制を導入し同日より10月18日(日)まで開催されることになった(国立西洋美術館公式サイト2020年6月12日更新現在)。 今、国立西洋美術館の中に、英国・ロンドンにあるナショナルギャラリーより計61点、全て初来日の作品が展示されている。 今回も、保険も含め、莫大な費用をかけて、英国から61点の作品が、大事に大事に日本

「私は彼らを見棄てはしません」

今、美術に関してnoteで書くのがキツい。 私にとって美術は、仕事であり、人生であり、業界のいろいろとか、ウンザリすることもあるけど、生活の一部だ。否定出来ない。一応ドクターだし。 ただ、新型の感染症で人々が命を落とす中、素知らぬ顔で美術の記事を書けない。 昨日の朝日新聞の朝刊「折々のことば」で、鷲田清一氏がドイツ文化メディア担当相モニカ・グリュッタースの言葉を紹介していた(*1)。 私は彼らを見棄てはしません。 そして、鷲田氏は、彼女が政府広報で発言した内容につい