【企業/個人】2020年VTuber業界動向予測!オワコン?それとも始まり?
分析大好き、スシテンコ先生(@sushitenko)です。
2020年のVTuber関連事業の動向予測を行っていきます。
各企業の事業計画・決算報告書・株主総会議事録などはそこまでリサーチしていないので、かなり体感での予測になることをご理解いただいた上でお読みいただけると幸いです。
「にじさんじ」「ホロライブ」のブランディング・キャラIP展開がさらに加速
まず、VTuber企業の動向から。
「にじさんじ(いちから)」「ホロライブ(カバー株式会社)」の二社に関しては、ブランディング展開および今後の継続・維持に関しては、ほぼ成功だと言ってもいいでしょう。
数々の有名VTuberやVTuber関連企業のボロが出始めた2019年において、生き残って安定稼働しているあたり、今後の生存率も高いと見ていいでしょう。
(経営知識のない物申す系が勝手に「炎上」と認定して騒いでいるケースは、まったくの障害ですらないので無視)
問題児である「ふぇありす」含む「にじさんじネットワーク」の分離も完了したことからして、今後は増々、個人VTuber勢と完全に切り離して企業(にじさんじ)所属VTuberの価値を上げるためのブランディング戦略が加速していくはず。
キズナアイなどを手がける「upd8(Activ8株式会社)」に関しても、安定軌道。
ただ、upd8勢に関しては、にじさんじ・ホロライブと比べると「箱感(ブランディング戦略)」に関してはやや弱めの印象。
(にじさんじ・ホロライブと比べると、個人の裁量が広めに感じる)
いずれにせよ、この3大勢力に関して言えば、今年はよりキャラクターIP(知的財産権)による販売戦略の拡充に乗り出す時期に来ているはずです。
(個人的にこの3社以外は、事業としてはかなりの不安要素が透けて見えるので、2020年にも何かしらの問題が露呈すると踏んでおります)
既存IP(著作物)利用のVRアバターの普及可能性
2020年以降、企業側の動きとしてより顕著になって行きそうなのが、既存IPを利用したVRアバター動画の普及です。
IP(intellectual property)とは、日本語では「知的財産」と訳されます。
知的財産とは、発明やデザイン、著作物など、人間が創造的活動により生み出したものを指し、楽曲やデザインといった芸術分野の作品のほか、顧客リストや社内のノウハウといった営業秘密も対象となります。
最近の有名どころで言えば「ハローキティ」のVTuber(バーチャルYouTuber)化でしょうか。
また、既存IPでのVTuber運用に関しては、以下のような動画チャンネルもとすでに登場中。(櫻井眞尋さん[@mahiro3901]からの情報提供)
いずれも原作付きのキャラクターで、元ネタのコンテンツと親和性の高いコンテンツ題材を扱っているので、原作を知っている視聴者から強い興味・関心を惹けるという強みがあります。
後述しますが、VRM規格の制定とモーションキャプチャーの導入の低コスト化に伴い、企業でのVTuber運用が楽になったことで、増々この動きは加速していくかと思われます。
FANZAの参入でライブチャット+アダルトVR事業の加速が予想される
FANZA(旧:DMM、アダルト部門)のライブチャット参入も、見逃せません。
これに関しては、すでににじさんじが布石を打っている気配があるので、順調にいけば参入してくるのではないか…と予想。
「いちからCEO」「下ネタオープンな企業VTuber」「VR展開しているAV女優」の三者が表で絡んでいる以上、おそらくFANZA(DMM)へのバーチャルライバー事業参入・業務連携の布石だと見ていいでしょう。
また、DMMではなくわざわざアダルト部門のFANZAでサービス開始される当たり、ほぼR-18部門につなげる算段ありだと思います。
VTuber文化を通して芸能プロダクションの人材リクルーティング事業化が進む
一方で、ライバー(配信者)よりも、エンタメ性を重視するタイプのVTuberに関しては、動画プラットフォームへの芸能事業参入に伴い、人材リクルーティング的な色合いが強くなると予想。
その流れが色濃く出ているのが「SHOWROOM」で、業務提携先や資本先が芸能関連事業メイン。
また、公認ライバーとなる際に「オーガナイザー」と呼ばれる存在が個人VTuber勢に営業している動きも見受けられます。
オーガナイザーとは、公式アカウントの発行や管理ができる、SHOWROOMと契約をした法人企業(芸能事務所・スクール・代理店など)のことを指します。
オーガナイザー契約を行うにはSHOWROOMで定めた審査を通過することが必要です。
上記の通り、SHOWROOM内では芸能プロダクションなどが人材集めで利用しているので、今後も個人VTuberの発掘用途で使われることが多めになるかと思います。
つんく♂氏がVTuberに対してアプローチしているのも、この流れだと思います。
ですので、芸能業界に入ることを目的とする個人VTuberであれば、オーガナイザーが多く出入りしている配信アプリを使う流れになってくることでしょう。
※個人的に、有名芸能プロダクションが本腰入れて参入して来ない以上、中小以下の微妙な企業がオーガナイザーになるパターンが多くなるので、養成所・スクール以上の動きには期待できない…という意味で、このビジネスモデルにはあまり期待してません。
見逃せない中国資本の動き
VTuberのみならず、今後の動画市場全体で見逃せないのが「中国」の動きでしょう。
前述の「にじさんじ」「ホロライブ」「キズナアイ(upd8)」の3大勢力は、すでに中国市場に参入済み。
また、ゲーム実況に関しては、国内のe-sports事業制圧に向けて、中国資本の「Mildom」が参入済み。
このMildomですが「配信するだけで時給500円相当のポイントが獲得できる」という性質があります。
これはおそらく「時給で有力ゲーム実況者をリクルーティングして独占する」という意図ありきなのかなぁ…と予想。
また、Mildomの資本参加にBATHの一角である「テンセント」も参加しているようなので、Google資本のYouTubeに対抗する気もあるのでしょう。
※余談ですが、外資系企業の予算配分は国内企業では考えられないほど羽振りが良かったりするので、時給500円程度は人材確保のためには安い初期投資なのではないかと思われます。
あとは5G回線の普及に関して「中国が一番早いのでは?」という声も企業経由でちらほら聞くので、インフラ整備も中国の方が早い可能性も。
いずれにせよ、動画市場の拡大に関しては、中国の動きも無視できないレベルの脅威となっているので、YouTubeのみならず、今後も注目しておきたいところです。
ライブコマースの可能性は?
以前、私が書いた記事で「ライブコマース」に関しても紹介していましたが、これに関しては「大きく普及するのは難しいかな…」というのが実際のところ。
理由としては、
・セールス力のある人材が少ない
・通販番組自体が日本人に合わない
・企業側のやる気がそこまでない
…など、潜在的な需要に対して、人材および土壌が整ってないからです。
こと、VTuberクラスターに関しては「セールス」「広告」「有料」というだけで嫌われる対象となりやすいのも逆風。
以下の動画などで紹介されている「KENTY」も、わかりやすい例でしょう。
こういった事情もあるので、VTuberで気軽にライブコマースが出来るようになるまでは、まだまだ時間がかかるのではないかと予想しております。
個人VTuberの向かう先は?
さて、ここまではあくまで、企業・経済的な大きな動きの方の予測をお伝えしてきましたが、VTuber個人勢は2020年はどうなるのでしょうか?
まず、大前提で言うと「VTuberという共通項だけでつながっていたコミュニティが、それぞれの目的に応じて分裂していく」というのは、おおむね読者の方も体感できている流れだと思います。
より具体的に個人VTuberの目的を踏まえ、2020年は以下のような流れが加速すると予想しております。
1.個人VTuberではコミュニティ運営の最適化が進む
個人VTuberを語るに当たって、切っても切り離せないのが「コミュニティ」という概念です。
VTuber界隈参入当初、私の中で感覚のズレを感じていた原因は「VTuber=コミュニティ」として機能していたことに気づかなかったことです。
個人VTuberでは、主に以下のようなコミュニティ型サイト(アプリ・サービス含む)を主体に活動されている方が目立ちます。
・PixivFANBOX(クリエイターファン支援サービス)
・Discord(チャットツール)
・Wordpress(会員ログイン型運用)
どのサービスも、クローズドな性質があるので、形としては「オンラインサロン」的な側面が強くなっている印象。
とくに直接的な収益化を目的としないコミュニティ運営として、ディスコードにおけるサーバー運営は、個人VTuberとして活動する中では重宝する存在になっております。
ただ、個人VTuberとしてのコミュニティ運営には、以下のような問題もあります。
・サーバーの目的や色合いが定まっていないと非アクティブになりがち
・個人VTuberの匿名性が高いがため、ミスマッチが起こりやすい
・リークによる炎上ネタにつながるリスクあり
・その他、人間関係のいざこざが起きやすい
・にも関わらず、アカウントリセットなど関係を断ち切りやすいため、礼節を欠いた人間が混ざるリスクを切り離せない
私自身、ディスコードで個人VTuberのサーバーに所属したり、コンサル視点での提言を求められたりするのですが、とくに「現実のステータスが見えないことでのミスマッチに気づきにくい」という点に課題を感じております。
いずれにせよ「組織(コミュニティ)運営」という観点で、個人VTuberでの運営最適化は、ますます重要視される要素として認識されていくはずでしょう。
2.個人VTuberでは(分散型)SNS化が進む
コミュニティ運営に関しては、あくまで「クローズドな場」としての性質が強いのですが、オープンな個人VTuber同士のコミュニケーションツールとしては「SNS化」が加速化していくのはないかと予想。
もともと、個人VTuberはクリエイター・同人界隈で活躍されてる方など、多種多様で様々な年齢層の方が集まっています。
以下のツイートの通り「現実のステータスを隠してバーチャルの存在として活動することで、本来接点のない人との出会いがある」ことが、個人VTuberの面白いところです。
ですので、以下の記事で論じられている「VTuberを始める=SNSへのアカウント登録」という捉え方が、かなり近い感覚なのではないかと思っております。
「名乗り」を仮想SNS「VTuber」へのアカウント登録であると捉える。
また、年末年始に話題になった「分散型SNS」という概念も、個人VTuberの本質に近しいものがあるのではないかと捉えております。
いずれにせよ「人との交流>収益化・数値獲得」という優先度であれば、VTuberというツールは、新時代のSNSとして運用されていく動きが加速していくのではないかなぁ…と思います。
3.アーカイブ動画中心の個人VTuberは人知れず伸びていく
前者ふたつは「コミュニケーションツールとしてのVTuber」という見方が強かったですが、純粋に「コンテンツとしてのVTuber」としては、アーカイブ動画の投稿中心のVTuberが人知れずに伸びていくのではないかなぁ…と予想。
これに関しての課題は、以下の通り。
・結果が出るまでに時間がかかりやすいので、中長期で取り組める人が少ない
・ニコニコ動画などのサブカルネタ中心の動画は狭い範囲でしか需要がない
・SNS上の付き合いが深いと周りに流されやすくなったり、人間関係のいざこざがつきまとう
・分析・解析などのスキルが必要になりやすい
唯一、VTuberの中でアーカイブ動画としても短期的に数字が稼ぎやすいのが「トレンド系(物申す・ゴシップ)」なのですが、これは前述の通り、有名VTuberが安定軌道に乗り出したことで、今後はネタに困るのではないかなぁ…と予想。
少なからず、既存のVTuberを真似しているだけでは、アーカイブ動画投稿でのVTuber活動は頭打ちになりそうなので、ここから個々人がどう展開していくかが、来年の山場になりそうです。
ちなみに、VTuber界隈の分析系の有識者の方も、アーカイブ動画で伸ばすためのアイデアが出せてない印象を受けます。
個人VTuberだけに取得情報を絞っていると閉塞感を感じやすいので「この状況をどうやって打破するか?」が、今年の個人VTuber勢の最大の課題となることでしょう。
以下の記事では「動画ネタを探す方法」を紹介しているので、こちらも参考に。
4.配信中心の個人VTuberは疲弊していく
配信中心の個人VTuberは、今年は疲弊していくと考えています。
それには、以下のような理由があるからです。
・リアルタイムで時間を拘束される
・収益が投げ銭に依存するため不安定
・視聴者との距離感が近すぎて疲れる
・配信するためのハードルが下がり過ぎて新規配信者の流動が激しい
単純に配信を通して視聴者と交流するのが好きであればいいのですが、そうでないVTuberの場合、よほどトークが面白いわけでもなければ、視聴者側がまず飽きます。
そして、配信プラットフォームが数多く登場し、ライバーも増えたことで、視聴者の飽きも早くなりがちです。
また、顔出し・実写動画と違って、VTuberが映像面で魅せる配信動画を制作するためには、コストがかかったり制作・編集スキルが必要なため、時間・費用的にも消耗しやすいという難点も。
配信動画は視聴者のリアルな時間も拘束してしまう点も、疲弊しやすい要素だと言えます。
ですので、配信・ライバーVTuber勢が生き残るためには「マネジメント」「スケジューリング」「プラットフォーム選び」の重要性が、増々認知されていく年になるのかなぁ…という予想。
「一般ユーザー>サブカルクラスター」の分岐点でVTuberという存在は死ぬ
既存の個人VTuberが一番考えておかなければならない問題が、一般層のVTuber認知・VTuber参入が増えるにあたって、既存の古参勢力は淘汰されていくという点です。
2019年参入の私自身の感覚としても、すでに「2018年以前に伸びたVTuberとは感覚も価値観も合わない」と感じております。
「REALITY」などの簡易アバター制作から手軽に配信が楽しめるアプリがリリースされ続けると、今後ますます一般層の参入が増えていくことが予想されます。
また、VRM協会の参加企業群を見る限り、ベンチャー企業が実験台として事例を作った中で、今年は有名大手企業が大きな動きを打ち出してくる頃合いじゃないかなぁ…とも思っております。
先述の「既存の一般IPがVRアバターとして手軽に動かせるようになる」未来が来れば、今まで一部のクリエイターやオタクに支持されていたVTuberが、ライトな一般層にも受け入れられるようになっていくはずです。
少なからず、VRM規格が制定されている時点でわかりきっていた未来なので、これにどう対応していくかが、今後の個人VTuber全体の課題だと言えるでしょう。
まとめ
以上、ざっと私が想像する、2020年のVTuberの将来予測でしたが、一年後にどれぐらい当たっていたか答え合わせする意味でも、記事にして書き残そうと思いました。
今後、私もVTuberを通して様々な情報発信をしていきたいと思っておりますので、この記事の情報が参考になったと感じた方は、ぜひ私のnoteとTwitterアカウントをフォローしていただけるとありがたいです。
また、この記事に対しての意見や補足などがありましたら、noteでの引用やTwitterでの感想ツイートもしてもらえると、今後の参考にさせていただくことがございます。
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ぜひ、お気軽にこの記事に対しての反響を投稿してみて、VTuberの未来について考えてみてください。
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