【5000/10000m世界記録保持者】ジョシュア・チェプテゲイのトレーニングメニュー
2020年はジョシュア・チェプテゲイ(2020年に3種目の世界記録更新)やジェイコブ・キプリモ(世界ハーフ優勝)といったセベイ族のウガンダ長距離選手の活躍が目立ったが、彼らが所属するトレーニングキャンプや、どのようなトレーニングをしているかについてはあまり知られていない。
以下の記事はウガンダのカプチョルワを拠点としている3人のウガンダの長距離金メダリストの基本情報をまとめた記事である。
今回の記事では、現役選手としての世界一だけでなく、歴代最速の座に何度も居座り続けているチェプテゲイについて詳しく書いていく。
チェプテゲイのコーチ:アディ・ルーターとウィリアム・チェプテク
(写真:左ファラー 、中央アディ・ルーター、右チェプテゲイ)
チェプテゲイのコーチを務めるオランダ人のアディ・ルーターは元トライアスロン選手。選手としては大成しなかったが、30代後半からオランダのジュニア選手の指導に携わり、やがてそれらの選手はオランダのシニアのトップ選手へと成長した。
そのうちの1人がオランダのロイ・フォルンヴェーク(5000mPB13:31.41)。チェプテゲイが打ち立てた10km(後にR. キプルトに塗り替えられた)15km、5000m、10000mの4つの世界記録のレースの時にこのフォルンヴェークがペーサーを務めたのは記憶に新しい。
現在、コーチルーターはオランダのIKEAに勤務しており、コーチ業は彼にとって副業である。昔から引き続きオランダの選手の指導をしているが、オランダでの仕事が落ち着いている時、年に何回かはウガンダに赴いて現地の選手を指導するという形をとっている。
カプチョルワにあるウガンダのNNランニングチームのトレーニングキャンプの選手をはじめ、首都のカンパラを拠点とするドーハ世界選手権女子800m金メダリストのハリマ・ナカイらを2017年から現地で指導しているが、コーチがオランダにいる時はリモート指導の形をとっている。
【NNランニングチーム・カプチョルワキャンプのチームメイト】
・フェリックス・チェミンゲス:マラソンPB2:05:12(ウガンダ記録)
・ボニフェイス・アベル・シコウォ:ドーハ世界選手権3000mSC出場
・アブダラ・マンデ:10000mPB27:22.89。ドーハ世界選手権10000mでチェプテゲイのために序盤のペースを作った。
・スティーブン・キッサ:10kmPB27:13、2020年世界ハーフ19位。チェプテゲイの5000m/10000mの世界記録更新のレースでペーサーを務めた。
・ステラ・チェサング:リオ五輪、ロンドン、ドーハ世界選手権出場。2018年英連邦大会でチェプテゲイとともにアベックでの10000m優勝(女子10000m)
など男女合わせて12人のウガンダ人選手がプロ選手としてトレーニングキャンプで寝食をともにしている。
オランダでコーチとして成功していたルーターをウガンダのキャンプに招聘したのが、WA国際代理人のジュリー・ファン・デル・ベルデン(写真左:グローバルスポーツコミュニケーションズ)である。
ファン・デル・ベルデンはルーターが指導するオランダ人選手の代理人を務めていた。その時同時にウガンダの選手の代理人を務めていたこともあり、NNランニングチームカプチョルワキャンプの発足時のヘッドコーチをルーターに打診した。
チェプテゲイは2014年にグローバルスポーツコミュニケーションズと契約しプロ選手となったが、2015年にはケニアのカプタガトでパトリック・サングの指導を受けて(=キプチョゲと同じトレーニングキャンプで)トレーニングし、2016年にはリオ五輪に5000/10000mに出場(2種目入賞)。
高校時代から陸上長距離のトレーニングを本格的に開始して数年後の五輪で入賞するのだから、チェプテゲイは素晴らしい才能を持っているといえる。その高校時代にチェプテゲイにトレーニングすることを勧めたのが、幼なじみのベンジャミン・ンジャである。
ンジャ(左)は現在、ウガンダ陸連のコーチ/トレーナーとして活躍しておりチェプテゲイをサポートしている。また、アディ・ルーター以前のチェプテゲイの元コーチであるウィリアム・チェプテク(右)は現在のNNランニングチーム・カプチョルワキャンプのアシスタントコーチでもある。
コーチルーターがオランダにいてリモート指導を行う際は、現地でコーチチェプテクがNNランニングチーム・カプチョルワキャンプの選手らの指導に当たっている。
チャンピオンの聖地:ウガンダのカプチョルワと周辺の練習場所
ケニア北西部とウガンダ南東部にまたがるエルゴン山の麓にはカプチョルワというウガンダ長距離選手にとっての聖地がある。この標高1935mの小さな田舎町にはいくつかのトレーニングキャンプがあり、その1つがNNランニングチームのトレーニングキャンプである。
カプチョルワは丘陵地にあるため、↑を見てわかるようにフラットのコースが1つも無い(なかには25-30%の勾配がある箇所もある)。
そのようなことから、イージーラン以外の練習場所はかなり限られており、彼らにとって練習場所のバリエーションがあるとは言い難い。
【カプチョルワとその周辺のおもな練習場所】
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