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【weekly post】2021年8月建設領域Pre-Seed~SeriesA資金調達in欧州

先月から始めた建設領域資金調達in欧州ですが、今月も引き続き見ていきます。

前回のnoteにも書きましたが今月はお試しで最終週に東南アジアも見てみようと思っています。とりあえず8月分の東南アジアを見てみた上で、引き続き毎月みていくのか、それとも他のテーマにするのかは考えたいと思います。

ちなみに建設領域in東南アジアがボツになった場合はヘルスケアか教育、または隔月で両方といった感じで別領域のピックアップにしようかなと思っています!

再掲になりますが今月のweekly postの予定になります。

5日週:建設領域8月の調達@ 米国
12日週:建設領域8月の調達@ 欧州(←今回)
19日週:oura ringレビューに絡めてヘルスケア系
26日週:建設領域8月の調達@ 東南アジア

さて、今回は欧州系ということで、7月の欧州はアメリカとそんなに変わらない雰囲気だなぁと思ってみていたんですが、今月の新規調達企業は、「あー、なんか欧州っぽい!」って感じのとこが多かったので、その辺も少し触れようと思います。

それでは今回もいつも通り4,000文字くらいになってしまう気がするので、興味があるところに飛んでいってみていただければと思います。

8月のサマリー
今回のweeklyの対象になる企業は下記の通りで、該当する企業の数は14社でした

■対象企業

所在地:スイス、ドイツ、リトアニア、エストニア、UK、スペイン、ベルギー、イタリア、ノルウェー

対象領域:建設・不動産領域

企業ステージ:プレシード~シリーズA

ファイナンス時期:2021年8月1日~8月31日まで

資金調達まとめトップ画

USと比較するとどのラウンドも比較的小さめの調達だった印象で、先月の欧州と比較してもかなり小さくなってる印象でした。

なんでだろうかと思ったんですが、別に先月より重めの投資が不要な企業ばかりかといえば、別に先月もそんなことなかったし、著名VC投資先が先月の方が多かったかと言われれば、確かにRocket Internet投資先がありましたがSeriesAで1社だけだし....

強いていうならUKの企業が今月は少ないんですよね。他の国と比較するとシードでも100万USD以上の調達をしてるseed企業がUKに偏ってる気がするので、その影響はあるのかなと。(欧州でも国ごとにかなり調達環境違うんだろうか??そんなイメージないけど....)

(1社平均調達額は非開示企業を除いて計算しています)

■企業カテゴリー分布と調達総額

資金調達まとめトップ画

カテゴリー分布としては、管理/メンテナンス/セキュリティ系が中心でカテゴリー別の調達総額としては、今月唯一のSeriesA企業が入ったこともあり、投資/資産価値管理系が最も大きくなりました。

この後の個社ピックアップのセクションでいくつか取り上げようと思うのですが、冒頭で「あー、なんか欧州っぽい!」と思ったのが、「建設×環境」系のスタートアップが多かったことですね。

あくまでも個人的な印象で分けてるので、「いやいや、それは」ってのがあるかもしれないのですが、14社のうち3社あって、結構多いなと思いました。

環境という点では関係ないですが、今っぽいなと思ったのは、オフィスないでの占有状況管理SaaSのようなもので、オフィスのどのエリアがどの程度使われているか、誰に使われているかをwifiの接続状況などから把握するようなサービスもあり、COVID-19影響でオフィス出社がまばらになったり、密集を避けなければならなくなった今ならではなのかなぁと思いました。(すみません、あまり興味が湧かなかったので、取り上げてはいません....)

それでは今回は5社取り上げていこうと思います!(今回は多い....)

①【トータルコーディネートインテリアレンタル】Pabio(Pre-seed)

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設立:2020年

所在国:スイス

今回調達金額:$1M

調達総額:$1M

投資家:Y Combinater(他3名)

サービス内容等

個人宅向けのパーソナライズされたインテリアのサブスクリプションレンタルサービスを提供しています。

国内でもいくつか近しいサービスを提供していますが、Pabioでは自分の好きなスタイル、同居人の人数、インテリアを使いたい部屋の数、収納スペース規模、暮らしに関する情報、間取り図情報、各部屋の写真などをアップロードすることでインテリアをトータルコーディネートし、3Dモデルを生成し、どのような仕上がりになるのかを示してくれます。気に入ればそのままレンタルをするというような感じです。

価格は、おそらく家具の量などにもよると思いますが、1部屋€120/月~という感じで1部屋増えるたびに+€40といった価格設定になってます。

料金の中には、配送設置や家具の保険なども含まれています。

決まったパッケージというわけではなく、その部屋に合わせてコーディネートしてくれて、1ヶ月1.5万円程度からでそのほかにコストがかからないってのはかなりお得な感じがします。(ちなみに、もちろんレンタルしたものをそのまま購入することも可能です)

②【不動産ライフサイクルマネジメント】emonitor(SeriesA)

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設立:2016年

所在国:スイス

今回調達金額:$5.45M(CHF5M)

調達総額:$6.65M(CHF6.1M)

投資家:W&W IMMO(事業会社:不動産系ソフトウェア、他4社)

サービス内容等

不動産ライフサイクルって何よってことなんですが、建てる>マーケティング>貸し出す>売却するという一連の流れのことをこのサービスでは指しておりそれぞれでサービス提供を行おうとしています。(建てる部分はまだサービスリリースされていません)

マーケティング部分に関しては、物件オーナーなどを募集する際のリード顧客とのコミュニケーションや内見予約、契約書面の管理ややりとりの管理だけでなく、マーケティング用のwebサイトなどが含まれています。

賃貸の部分に関しては、契約部分の一元管理を軸に、不動産関連のポータルサイトへの広告出稿や管理などを行う機能も付いています。

最後に売却の部分に関しては、不動産ポータルサイトへの掲載、広告出稿からリード顧客とのコミュニケーション、内見予約、契約関連の一元管理までを一括で提供しています。

③【コストと炭素の削減に向けた現場廃棄物管理】Qualis Flow(seed)

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設立:2018年

所在国:UK

今回調達金額:$2.4M

調達総額:$3.3M

リード投資家:Green Angel Syndicate

サービス内容等

建設プロジェクト全体での材料や廃棄物のデータを集積することで、分析を自動的に実施し、ダッシュボードに分析結果や現状を表示します。

サービス側でアプリケーションを用意しており資材の納品書、廃棄物データや廃棄物委託メモなどの写真をアップすることで自動的に分析を行います。

すでに8つほどのケーススタディが上がっており、温室効果ガス削減目標を掲げている企業の削減実績を示すためのれポーティングや環境関連省庁へのレポーティング、FSC認証取得のためのエビデンス管理等、社内外から求められる環境系の取り組みへのレポーティングを中心に活用されています。


④【ビルマネジメントシステム】Clev Air(seed)

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設立:2016年

所在国:ノルウェー

今回調達金額:不明

調達総額:$935.8K

リード投資家:不明

サービス内容等

築25年以下の建物をターゲットとしたビルマネジメントで、既存の機械に後付けすることで、既存のインフラを変更することなく利用することができます。

屋外の気温、天気、建物内の占有率などのデータとさまざまなセンサーを活用することでHVACシステムを自動的に最適化します。

このシステムの活用により、換気のオンオフや温度調整などビルのリモート管理のみならず、空気質(温度、湿度、CO2レベル)の管理やコストCO2排出量削減を行います。

⑤【建物改修用ソフト×プレハブ外装】ecworks(seed)

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設立:2018年

所在国:ドイツ

今回調達金額:$4.6M(€3.9M)

調達総額:$11.6M(€9.8M)

リード投資家:不明

サービス内容等

主に外装のリノベーションに特化したサービスで、さまざまな物件に対応できるよう、独自のソフトウェアを持ち、リノベーションの計画を行い、プレハブ設計をし、工場で生産まで行います。これにより従来95%程度が現場で行われていた施工を、80%程度工場で行い職人を工場に集めることで短期間かつ高品質での施工を行います。

また外装は断熱処理をしっかりと行うことでエネルギー消費量を削減させ、残りのエネルギーを太陽光やヒートポンプ、熱エネルギー貯蔵などで賄うことでリノベーション後のエネルギー消費を化石燃料など環境負荷の大きなエネルギーに頼らないで済むようにしています。


編集後記

欧州っぽいということで今回は、建設×環境といった感じの企業を中心にピックアップしてみました。

5社取り上げたのでそこそこのボリュームになってしまいました。

全てに個別に触れるのはやめようと思いますが、特に印象的だったのは、3つ目のQualis Flowでしょうか。

建設領域だけでなく他の領域でも求められそうだなというサービスで、これまでに、小売や物流などに取り組まれている数人の方にお話を伺ったことがあるのですが、カーボンニュートラル以前に、そもそも、どこでどれほどのカーボンが出てしまっているのかのトラッキングができていないことが問題で、見える範囲だけで取り組んでも、場合によっては、ニュートラルどころか排出を増やしたり、焼け石に水すぎて結局オフセットするコストを積むことになる....といったようなこともあり、まずは、サプライチェーン全体を管理した上で取り組まなければいけないよねと。そうなった時に、割とまずは見える化を近いところから初めていくという意味ではすごくいい始め方なのかもしれないなと思いました。

サプライチェーンの見えるかをする時に誰が旗振り役になるのか、誰がその動機を最も持っているかが大事なのかなと思うのですが、やはり、完成品メーカーに当たるようなところが最も動機があるところなのかなと思っています。というのも、商品名orメーカー名として表に出るのが自社(完成品メーカー)になるので、責任が生じた時に矢面に立つのは自分ということで、その責任を果たせる状態にしなければならない!となりやすいのかなと思います。

一方で、カーボン排出が最も多いのが完成品メーカーというわけ"ではないはず"で、そうなると自社だけの見えるかにはあまり意味がないので、自社を含めたサプライチェーンの上下流(特に上流)まで幅を広げたトラッキングをせねばならず、その時に、もちろん自社の直前直後は、ある程度わかりやすいビジネス上の繋がりがあるので、コミュニケーションが取りやすいと思うのですが、直前直後を超えた1社以上を挟んだサプライヤー等は何故その企業のためにトラッキングに応じるのか?という動機付けが必要になるよねという中で、その人たちにとってもコスト削減や売上拡大などのメリットが作れないと厳しいのかなと思ったりします。(特に相手が中小企業の場合はコスト削減というよりは売上増の方が喜ばれる気がします。)

ただ、今後カーボンニュートラルへの取り組みが加速することで、中長期的にはサプライヤー選定も影響を受ける可能性があることを考えると、より上流でも安価にカーボントラッキングができ、それによってサプライヤーとして選ばれやすくなるという流れが作れれば結構面白そうだなと思います。

あとは、完全に個人的な興味ですが、これまでモジュール型の建築など取り上げてきましたが、プレハブのリノベーションが出てきたのは、「そりゃそうだよな」と思いつつも面白いなと思いました。リノベの場合は新設ではないので、より個別化しないといけないはずで難易度高そうだなと思いますが、リノベーションに加えて環境配慮要素も足してしまうってのは欧州っぽいなぁと思いました。

モジュール建築もプレハブリノベもどちらも事業として行うには、工場を持つという感じになるはずでソフトウェア完結に比べコストもかかるでしょうし、Katerraの件もあったので、なかなか取り組む人も出てきにくいのかなと思いますが、とても大きな変化になりますし、業界トレンド的にも、省人化や熟練以外でもできるようになることは避けれないと思うので、チャレンジする起業家さんが出てくるといいなぁと思っています。

さて今回は欧州の8月の建設領域での調達を見ていきました。

5社取り上げたこともあり5,000字を超えてしまったのですが、ここまで読んでくださりありがとうございました!

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