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“冨所の鰆”はやめられない #冨所

 そもそも「鰆」の読み方すら知らない人も多いのではないでしょうか。私もそうでした。「さわら」と聞けば少しは耳馴染みのある”あの魚”くらいにはなるかもしれませんが、個人的にはそれでも印象の薄い魚でした。日本人の文化とも言える回転寿司でも出会うことは少なく、あるとすれば家で食べる西京焼きか煮つけくらい。そのせいか、私が冨所で鰆に出会った時、初めてソフトクリームを食べた赤ちゃんのように目を見開いて夢中で食べていました

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8月
正確には「青箭魚(さごし)」というまだ小さい鰆のこと。鰆前か鰆後かと自分の鮨ライフの転換点になるような衝撃的な出会いだった。

 鰆は「魚」に「春」と書きますが、旬は秋から冬にかけてと言われています。お店ごとに親方の言うことが少しずつ違ったりもしますが、鰆の旬に関しては満場一致で秋から冬と聞くので確実です。ではなぜ「春」の文字が入るのかと言えば産卵期が関係しています。お腹に卵を持てばそこに栄養を集中させるわけで、自然と身が痩せていきます。鰆はそのタイミングが丁度春頃で、海岸に近いところで産卵を行うために昔の人が春の風物詩として認識していたようです。身に栄養が行かなくなる春よりも、産卵の準備で栄養を蓄える春の前=秋から冬が美味しくなるというロジックです。

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9月
8月はまだ「青箭魚」だったが、9月頃にはどこの店でも「鰆」として提供され始めた。秋から冬にかけて旬を迎える、いわば”走りの”鰆だった。

 ネタとしての鰆は味が濃く、分かりやすい味で万人うけするタイプです。個人的には見た目(特に顔)が強面なのにも関わらず美味しいところにギャップ萌えを感じています(笑)。魚自体のポテンシャルが高いので大抵どこのお店でも美味しく食べられるのですが、特に冨所の鰆は格別で毎回楽しみにしています。

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10月
背側に近いからか、玉葱醤油の入りが絶好調で”The 冨所の鰆”を感じられた。冨所の握りは全て旨いのだが、ひと際輝きを放っていた。

 鰆は燻製をしたり、薬味で味に変化を付けたりと選択肢の多いネタですが、冨所では提供の直前に玉葱醤油に漬けるのが特徴です。味が濃いので玉葱のような多少強い香りが付いても動じることなく、相乗効果となって美味しさに貢献します。口に入れた瞬間に広がる玉葱醤油の香り、噛んでしみ出す濃厚な味、鼻を覆う鰆自体の香り。ただ生で食べるよりも味の奥行きが段違いに違います。

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11月
いつもと見た目が違うのは腹側の身を使っているから。ふっくらと溶けるような食感に濃厚な脂。ただ脂に弾かれて玉葱醤油の入りが弱いと感じた。

 私は去年の8月から今年の1月まで毎月欠かさずに通っていますが、その月毎に鰆の状態が変わり、出される部位も少しずつ異なるので全く飽きません。頻繁に鮨屋に通う理由の1つです。

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12月
11月の腹側から12月は再び背側?に戻った。全体的に脂が乗って来たからか玉葱醤油が当初よりマイルドに感じなくもない。

 今回は鰆だけを特集しましたが、冨所の握りはどれをとっても唸るほど美味しくて旨いです。そんな握りコースがランチなら6000円から食べられてしまうのが更に驚きで、教えたくないけど教えたい、鮨オタクに愛されるお店です。気になる方は是非、昼に一度、夜に一度行ってみてください。つまみにもここでしか食べられない味が待っています。

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1月
もうこれで6回目。自分でも飽きるんじゃないかと心配し始めているが、ここの鰆は毎回期待を超えてくる。今後も楽しみだ。

link here ☞ 冨所

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