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『VALUE BOOKS』の鳥居希さん | より良い本の循環を目指して

サステナビリティを継続的に学ぶラーニングコミュニティ「Sustainability College」。月に2回の授業のうち、1回は多種多様なフィールドで活躍されているゲストをお招きした「講師回」、2回目は生徒同士の交流や知恵を交換し合う「ゼミ回」を行っています。

今回からスタートするマガジン「 #サスカレ授業参観 」では、講師回のダイジェストをお届け。講師による45分間の講義とそれを受けた生徒たちからとめどなくあふれる質問たち...。「Sustainability College」が普段どんなふうに学びを高めているのか、その様子をレポートしていきます!

「Sustainability College」では4期生を募集中!
締切は2021年10月23日(土) 23:00まで。
気になる方はぜひこちらから詳細をご確認ください。

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秋の気配を感じる9月8日。ゲスト講師としてお越しいただいたのは、『VALUE BOOKS』の鳥居希さん。「日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える」をミッションに掲げ、ネットでの古本販売だけでなく、本との出会い方から手放し方、循環方法まで、本にまつわる新しい仕組みづくりに挑戦する会社です。

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株式会社バリューブックス 取締役 鳥居希さん

2015年、長野県上田市を拠点として古本の買取・販売を行う株式会社バリューブックス入社。2年間古本による寄付「チャリボン」を担当。
現在、営利企業を対象とするB Corporation認証の自社での取得プロセスを進行中。同時に、黒鳥社 x バリューブックスで行う「あたらしい会社の学校」プロジェクトの一環として「B Corpハンドブック翻訳ゼミ」のファシリテーターを務める。このゼミではコミュニティで行う翻訳を通じてB Corporationの解釈を深め、企業の行動に繋げるような挑戦をしている。

「45分で赤裸々に話させていただきます」という鳥居さんのひと言から始まった本講義。鳥居さんが『VALUE BOOKS』に入った経緯や古本を循環させる仕組みづくり、組織マネジメントの試行錯誤、B Corp認証取得に向かう道のりについてなど、本当に盛りだくさんの内容を語っていただきました。

そんな中でも、特に生徒からの反響が大きかったのが「VALUE BOOKS ECOSYSTEM」というプロジェクト。「VALUE BOOKS ECOSYSTEM」はどんなもので、どんな想いから生まれたものなのか、生徒からの質問とともに紐解いていきます。

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Q1.「VALUE BOOKS ECOSYSTEM」とは?

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「VALUE BOOKS ECOSYSTEM」は、「VALUE BOOKS」がパートナーシップを組んでいる出版社の本を買い取り、販売した場合、その売り上げの3割を出版社に還元するというシステムです。現在は4社の出版社とパートナーを組んでいます。

『VALUE BOOKS』に毎日届く古本の量は約2万冊。その数字だけでも驚きですが、その中で値段をつけられる本は半分に限られています。値段がつかない理由はさまざまですが、出版社ごとの買取率を見ていたとき、いくつかの出版社は、9割以上の本を買い取れていることに気がついたんです。つまり、古本市場でもしっかりと値段がつく本を生み出してくれている。そういった出版社にお金が回ることで、より継続的な本の循環を作れるのではないか、という気持ちで始めた取り組みです。

Q2.出版社に還元するというシステムは納得です。しかし、『VALUE BOOKS』にとっては正直、収益が減ってしまう仕組みですよね。それでもこのエコシステムに踏み切った経緯を聞かせてほしいです。

このアイデアは創業者の中村が長い間あたためていたものです。私たちのビジネスは、古本市場で収益を得るというもの。つまり、出版社や作家さんが作ってくれたものを二次流通の中で販売することで成り立っているんですね。作った人の取り分がない状態で、人が作ってくれたものから、収益をもらうことに、負い目のようなものを感じていました。作り手に利益が還元されないことへの問題意識が強かったんです。

現時点では3割を還元するところまでしかできていないですが、いつかは出版社から読者に「私たちの本を売るときは、『VALUE BOOKS』へ」と言ってくれるようになったら嬉しいなあという気持ちがあります。『VALUE BOOKS』で売ってくれれば、出版社にも利益が生まれ、売ってくれたお客さんにとっても、好きな出版社を応援できる。循環の輪の中でみんながハッピーになれる関係を続けていけることがベストですよね。

Q3.古本として、定価より価格が下がる本と下がらない本の違いはありますか?

ひとつは生産量の影響は大きいと思っています。過去のベストセラーなどは売れそうに見えて実はいい値段がつかない。その理由は、シンプルに持っている人も売る人も多いからです。出版社に適正な量で作ってもらうというのはとても大切ですね。

しかし、ただ量を減らしてもらうだけでは、経済はシュリンク(縮小)してしまう。適正な量が販売されるためにも、「VALUE BOOKS ECOSYSTEM」のように中古でも収益がちゃんと還元されるようにしないと循環の輪は続いていかない。作られた後の仕組みが変われば、入り口も変わっていくかもしれません。

あとは、学術書など、時間が経っても内容が古くならないものは、しっかりと値段がつきますね。

Q4.本に限らず、刹那的な流行を刈り取って、大量に作り、大量に破棄される現状があります。しかし、「VALUE BOOKS ECOSYSTEM」で提携されている出版社は、このエコシステムが生まれる前から適正量だけを作って、古本として買い取られる割合が高い。

メーカーは結局ものを作って売らない限り収益が出ないビジネスなわけですが、それでもその出版社の方々が適正量で販売されていた理由を知りたいです。

パートナーの出版社に共通しているなと私が勝手に思っていることは、1冊の本を出すまでの過程がとても慎重だということ。1年間に出版するタイトル数を絞っているところや社員全員の拍手が出版へのGOサインとなっているところもあります。「なぜその本を出すのか」何度も何度も議論を重ねた上で、本を世に送り出す。

適正量で販売する理由になっているかは分かりませんが、純粋な本づくりへのこだわりが、ただ流行りのものを量産するという考えを遠ざけているのではないかと思っています。

Q5.出版社に還元された3割は著者にも回っているのでしょうか? クリエイターを大切にするというか、自分たちを楽しませてくれる著者を応援したい読者にとって、著者にお金がいくことはすごく大切なんじゃないかと思いまして。

今のところは、契約的にどうしても難しいところもあって、できていないのが現状です。「VALUE BOOKS ECOSYSTEM」を始めるとき、著者にも還元されるところまでやりたいという思いはありましたが、現段階だとまだ難しい...。

今、「あたらしい会社の学校 <B Corpハンドブック翻訳ゼミ>」というところで、『VALUE BOOKS』が出版社として本を作っているんですね。この本を古本として販売するとき、原書の出版社にも収益が還元される仕組みを実験的に作っている最中なんです。実際にシミュレーションしてみると、その都度払うのは難しいよね、とかいろいろ課題が見えてきます。まずは自分たちでやってみて、ゆくゆくは著者にも還元されるようにしていけるといいなと思っています。

Q6.『VALUE BOOKS』のミッション「日本および世界中の人々が本を自由に読み、学び、楽しむ環境を整える」。とても素敵だなあと感じました。今後、このミッションをどんなふうに実現していきたいですか?

出版社や図書館、本を送ってくださる方々、「チャリボン」の寄付先など、いろんな方たちの協力で私たちのビジネスや実現したいことが成り立っています。事業を支えてくださっている方々にとっても『VALUE BOOKS』と組むことで継続的な成長が叶ってほしい。そのためにも、ただ本を売るだけでなく、関わるすべて人がハッピーになる仕組みづくりを日々ブラッシュアップしていきたいです。

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「Sustainability College」の講師回では、毎回講師からの宿題が出されます。今回は、こちら!

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自分のお仕事の関係者すべてを含めて、よりサステナブルに存続していくための戦略を次のゼミ回までに各自考えてくることが宿題です。(サスカレの宿題は強制ではありませんよ^^)

ぜひこの記事を読んでくださったあなたも、『VALUE BOOKS』の取り組みをヒントにしながら、考えてみてくださいね!

次回の「#サスカレ授業参観」では、Allbirds 箕輪光浩さんの回をお届けします!お楽しみに。

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今後のサスカレの予定

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「Sustainability College」では4期生を募集中!

現在70名が参加する「サスカレ」では新メンバーを募集しています。
いまエントリーすれば11月の講義回からの参加になります。

なお、過去のゲスト講義はすべてアーカイブ視聴することができます。
今回のnoteで紹介した「VALUE BOOKS」鳥居希さんの回も視聴できます。
ゲスト講義の動画数は現在11本。

4期生のエントリー締切は2021年10月23日(土) 23:00まで。
気になる方はぜひこちらから詳細をご確認ください。

【おまけ】今月のサスカレニュース
サスカレに参加している生徒や学級委員長の近況など、ちょっとしたニュースを毎月お届け!

▼スパイバー | 新興最大340億円調達 「人工クモ糸」量産https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC068Q70W1A900C2000000/

▼greenz | 「自分をいかす仕事に出会う」トランジションコミュニティ開始
https://job.greenz.jp/

▼ファッションを再考・再価値化するコンテスト型プログラム「Rethink Fashion Program」
https://shoichi.co.jp/rethink-fashion-program/

執筆:佐藤 伶

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