ほんとうに治療されるべきものは
こんにちは、島村です。
まだまだ暑い日がつづきますね。
最近わたしは、依存症について書かれた本を読んでいました。
きっかけは、前の職場がおなじだった友人Aさん。現在、彼はアルコール依存の療養施設にいます。しばらく連絡がとれなかったのですが、すこし前から連絡がとれ、いまは手紙やLINEでやりとりをしています。
Aさんは、本が大好きな、おだやかな人です。
Aさんのことで思い出すのはこんなこと。
5年くらい前のある日、いつもだらしない格好の彼が、スーツを着込んできたことがありました。今日どうしたんすか、打ち合わせすか、ときくと、「あっ、いやさ、今日さ、命日なんだよ、いずみさんの」。
いずみさん? 最初、Aさんの友人か何かかと思いましたが、いずみさんというのは、ZARDこと坂井泉水さんのことでした。
「泉水さんが亡くなった日に、レコード会社が献花台をおいてくれてて、いまでもぱらぱらとファンが集まってくるです。集まってきた同士で何するってわけじゃないけど……そこでしばらく、いずみさんのこと考えるんだよね」。Aさんは教えてくれました。ほかにも、泉水さんの声や、引っ込み思案な人柄の魅力についても。
わたしは正直、今でもZARDをそこまで好きな人がいることに驚きつつも、ちゃんと自分だけの大事なものをもっているAさんを尊敬したのでした。
そんなAさんがアルコール依存になったのです。
わたしは「アル中」というと、赤塚不二夫、小田嶋隆、ECD、吾妻ひでお……そんな顔が浮かび、なんとなく「無頼な」イメージをもっていました。
しかし、精神科医の松本俊彦さんの本には、まったく別のことが書いてあるのです。
松本さんは「依存症の根っこには、必ず、歪んだ人間関係がある」として、こんなことを書いています。
「自分を傷つける関係」に身を置く――この社会は競争をあおり、みんな「満たされなさ」をもたされています(そう、「もたされて」いる)。人によっては、イライラをもてあまし、誰かにぶつけることも。「自分を傷つける関係」はいたるところにあるのです。ならば、依存症は、無頼でもなんでもなく、誰だってかかる可能性がある。
ここまで考えて、ふと、ほんとうに治療されるべきって、Aさんみたいな人ではなく、この社会のほうなのでは? そうわたしはおもうのです。
幸い、Aさんは快方に向かっています。
元気を持て余しているのか、読んだ本の感想を長い長いLINEで送ってきます。極端なひとだなあと、わたしは少し苦い笑いしながらも、こんど会ったら、ZARDについて心ゆくまで話してみようと、Spotifyでプレイリストを探すのでした。
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