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麻痺#8

だんだんと人の死に対して麻痺しているのを感じていた。

例えば夜勤に入る。

まず、日勤者から日中の申し送りを受ける。

「山中さん、体温38.5℃、血圧65の触診、脈88」


・・・・。うん。今夜の可能性高いな。

そう思うのである。


可能性が高いというのは亡くなるということ。

今夜亡くなる。もらうな。と思ったものだ。しかも冷静に。この方、中心に夜勤の仕事を組み立てる。どのタイミングでご家族に連絡を入れようかなとか冷静に。


仕事なんで、オロオロと動揺するわけにもいかないが、あんなに人の初めての死を見たときに動揺していた自分はいなかった。


冷静に。人の死もこの仕事としては受け入れて、感情を出しすぎず対応していく。

この日は午前5時前に、予感していた通り亡くなった。

ご家族も間に合い死後の処置を行う。

腹圧をかけておしっこを出し、摘便もする。

穴という穴に綿をつめる。

身体を綺麗に拭き、着物に着替え、化粧をする。頬がこけていたら綿をほっぺの裏に入れる。

葬儀会社の方が来られたら引き渡してお見送りをする。

あっという間に時間は過ぎていた。


この介護の仕事をしていき、だんだんと死生観変わってきた。


精神的に追い詰めれることもあったけど、そんなとき救いとなったのが同期の存在である。

特に同級生の亀田くんの存在は大きかった。



つづく・・・

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