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[小説] 生き別れた兄弟と殴りあい

「うっ…」
 自分の布団で寝ている時のことだった。寝ているとなんか体が重いなという感じがした。なんか自分の体の上に誰かが乗っているようなそんな感じがした。
 暗い部屋の中で目を凝らしてよく見ると自分の上に誰かが馬乗りで乗っている人がいた。そしてその人が自分にこう語りかけてきたのだった。

「俺は生き別れた兄弟だ! お前のな!」
 その人が何を言っているのか全く理解が出来なかった。そしたらそいつは馬乗りの状態で突然殴ってきたのだ。

「以前はよくこうやってたろうが!」
 以前はよく殴り合いの喧嘩をしていたとかしていないのだとか。馬乗りの状態で殴られるともう何もできずただ殴られる一方なのだ。
 とにかく顔面を殴られて痛かった。よく殴り合いの喧嘩をしていたというが、記憶がないのでそんなことは知らない。

「頼むからやめてくれ!」
「馬鹿野郎! なんで…。なんで忘れちまったんだよ! 思い出せよ!」
 と叫びながら、さらに殴られたのだった。自分はもう何度も顔面を殴られて痛くて痛くてどうしようもなかった。
 さすがに自分もムカついてきて力を振り絞って上体起こしのような感じになって相手にヘッドバットをかました。

「グワッ!?」
 その瞬間、馬乗りしてたやつは痛そうな声をあげていた。自分は暗闇の中で馬乗りになって殴り返してやった。

「ふざけんな!」
 もうさっきのお返しと言わんばかりにひたすら顔面を殴ってやった。こうして自分もたくさん殴ってとりあえずスッキリしたので一度部屋の電気をつけてみることにした。
 そしたら、そこには全く誰かも分からない人間が顔面血だらけで倒れていた。自分もなんだか殴り疲れたのかものすごく眠くなってそのまま眠ってしまったのだった。

 次の日、朝起きると昨日の晩に殴り合いをしたあいつは忽然と姿を消していた。あれは夢だったのかなぁと思って鏡を見てみるとやっぱり自分の顔はものすごく腫れていた。
 もう明らかに誰かに殴られたとしか思えないぐらいに顔面が腫れ上がっていた。もうこれは絶対に夢じゃないんだなということが分かった。

 自分の事を兄弟と言ったあの人は一体誰たったんだろうか? 過去にそんな人間に出会ったこともないのだ。
多分誰かと勘違いをしているんじゃないかなと思ったのだった。そんなこんなでテレビをつけてみた。
 そしたら昨日暗闇の中で殴り合いをしていたアイツの顔がテレビに映っていた。なんかその人は住居侵入罪かなんかで逮捕されていた。
 ちなみにそいつの顔はめちゃくちゃ腫れ上がっていた。多分これは自分が殴ったことが原因だろうなと思った。

「えー、犯人の○○容疑者は逮捕されました。生き別れた兄弟を探していたと語っております」
 結局その容疑者の名前を見ても特にピンと来るということもなく、過去にそんな人間いたっけな?と思い出すことはできなかった。
 暗闇で殴り合ったこいつは本当に誰だったんだろうか?

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