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[小説]家族交換(2112文字)

 他人の家のおじいちゃんと僕の家のおじいちゃんを交換した。そして1週間の間、お試し期間で違う他人の家に住んでいるはずのおじいちゃんと生活した。
 このおじいちゃんがなかなか大変で暴れたり外に行って以来帰ってこないなど苦労することがたくさんあった。

 1週間後におじいちゃんが帰ってきて他人の家のおじいちゃんも元の家へ帰っていった。やっぱりいつものおじいちゃんが1番だ。
 この世界では家族の交換が許されている。1週間生活してみて合うかどうかを決められるのだ。
 そこで本当に交換するかを決めることとなる。

「あんた、家族交換に出すことになったからね」
「うそ!?」
 そしてとうとう僕も家族交換に出されてしまった。なんでも友達のお母さんが自分のことを大変気になったらしくて、自分の家の子どもにしたいんだとか…。

 ことの発端友だちの太郎くんの家に遊びに行った時のことだった…
「太郎くんのお母さん美人でいいなぁ~」
「そうか? うちの母ちゃん別に普通だけどな」
「何言ってるんだよ! みんな太郎くんのお母さんは美人だって言ってるぞ! 僕も太郎くんのお母さんの子供だったらなぁ~」
 どうやらその会話を太郎くんのお母さんが聞いていたらしい。

「あらやだー!嬉しいこと言ってくれるじゃないの!じゃあ一回私の子供になってみる?」
 今振り返ってみると多分これが原因だったのかもしれない…。いや絶対これだ…。
 そして僕と太郎くんはお試し期間で1週間交換されることになった。今太郎くんのお母さんと晩御飯を食べている。

「どう?お母さんの料理美味しい?」
 太郎くんのお母さんはすっかり僕のお母さんっぽくなっていた。

「はい!おばさんの料理美味しいです! とっても!」
 僕はパクパクとご飯を食べていた。

「ちょっと僕くん! おばさんじゃなくてお母さんでしょ! それとお母さんには敬語も禁止! 今は私の子どもなんだから」
 太郎くんのお母さんはニコニコしてる。

「は、はい…」
 もう3日間一緒に生活しているがどうにもまだ慣れそうにない…。

「良い子だねー」
 太郎君のお母さんは僕の頭を撫でてきた。

「あ、僕食べ終わったから片付けます!」
恥ずかしくなって食器を急いで片付けようとした時だった。

「片づけなくていいのよ! お母さんが片付けてあげるから!」
 このままだと自分はダメ人間になりそうな気がする。

「いや、これくらいは自分で出来ます!」
「だーめ!お母さんが子どもに手を焼くのは当たり前なんだから!」
 言われるがままに片付けてもらうことにした。今太郎くんとお母さんがどうなったのか気になって電話をしてみたくなった。

「あ!すいません。ちょっと電話借りて良いですか?」
「どうして?誰に電話するの?」
「お母さんと電話して良いですか?」
「絶対ダメ! 今僕くんは私の子どもなんだから違うお母さんの話は絶対にしないでね! 分かった?」
「はい…」
 そこからもまだまだ太郎くんのお母さんはエスカレートしていった…

「お母さんが僕くんの歯を磨いてあげるね!」
「いや、自分で磨けますから…」
「一緒にお風呂に入ろう!体洗ってあげる!」
「1人で入れます!」
「はい、あーんして!」
「1人で食べれます!」
「はいお着替えしましょうね!万歳してー!」
「1人で着替えられます!」
「1人で寝るのは怖いと思うから一緒の布団で寝よっか!」
「1人で寝れます!」
 こんな感じでとにかく毎日大変だった。そのあと太郎くんのお母さんには泣かれてしまった。

「何で何もさせてくれないの! そんなにお母さんが嫌いなの!」
 太郎くんのお母さんは泣く。

「あ、いや、そういう訳じゃ…」
 さすがにちょっと子どもに対してやりすぎではと僕は思ってしまった。これは本当に子どもとして僕を見ているのだろうか?

「じゃあ、お母さんに手を焼かせてよ!」
「あ、はい…」
 最後の1日は太郎くんのお母さんにされるがままだった。まるでお人形さんだった。
 言い忘れていたが、太郎くんのお父さんはお仕事が忙しくて1日にも家で会うことはなかった。
 太郎くんのお父さんがいたらどうなっていたのだろうか?

 そんな感じでお試し期間は終了した。お互いに違う家庭で生活してみてやっぱりいつもの家族が1番だ!ということになった。
 太郎くんも元の家族の家に戻れて何だか嬉しそう!

 その後、太郎くんの家へ遊びに行った。
「太郎くん、早速ゲームしよっか」
「あ、その前に何かお前のことを母ちゃんが呼んでるからちょっと母ちゃんのところ行ってきて」

「分かった」
 太郎くんのお母さんのところへ行ってみた。

「あ、僕くんいらっしゃい」
「お邪魔してます!」
「はいあげる! これ太郎には内緒のお菓子ね!」
 太郎君のお母さんにお菓子を手渡された。

「ありがとうございます!」
 僕はポケットに入れた。

「あと、いつでも私の子どもになっても良いからね。募集中だから!」
 太郎くんのお母さんは僕に耳打ちしてきた。

「あはは…」
 まだ諦めていなかったらしい。自分は太郎くんの元に戻った。

「お、戻ってきたか。母ちゃん何だって?」
「いや、僕にもちょっと分からなかったよ。」
 こんな感じで家族交換は終わっていつもと同じ日常が戻ってきた。

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