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♬とらねこ村の共同マガジン~歌詞のパティシエ~

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歌詞パティシエの武炭宏(Hiro)さんととらねこが共同運営する、音楽記事を専門的に扱うマガジンです。 歌詞、音楽動画、所感、ミュージックボックスなどを専門に載録します。 専門マガ…
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#クラシック音楽

コラボ企画<歌詞のパティシエ>

武炭宏(Hiro)さんとの共同企画です。 音楽ジャンルの記事を専門的に取り扱う共同マガジンです。 🎼歌詞のパティシエ コンセプト 音楽に関する記事を広める 管理人 武炭宏(Hiro) とらねこ 専門分野 ・歌詞 ・音楽動画 ・所感 ・ミュージックボックス ・その他それに準じるもの 活動頻度 ・月1回からの投稿 ・ときどき書いている音楽記事の投稿 参加方法 この記事にコメント下さい。 歌詞のパティシエで一緒に活動したい人は、気軽に声をかけてみて下さい。 ***

芳醇な香りを奏でる -サンソン・フランソワのピアノの魅惑

【金曜日は音楽の日】 私が好きなピアニストは、どこか軽やかさのあるピアニストです。 以前バッハの時に名前を出したヴィルヘルム・ケンプや、マリア・ジョアン・ピレシュ、私の中ではグレン・グールドもここに入ります。 リヒテルやゼルキン、アファナシエフのように、信じられない程重く、強い幻想を打ち出す芸術家を尊敬します。でもピアノに関していうと、この硬質な音響の楽器を、もう少し華やかに使う演奏家が好きというか。 そんな最愛のピアニストが、フランスのピアニスト

風に溶ける幻想 -シベリウス『交響曲第五番』の美しさ

【金曜日は音楽の日】 面白い作品、傑作というのは、必ずしも安定した状況で創れるから生まれるとは、限りません。 フィンランドの作曲家、ジャン・シベリウスの交響曲第五番は、様々な意味で不安定な状況で創られたにもかかわらず、美しい清涼感と斬新さが同居する傑作です。 シベリウスですと、交響曲第二番や交響詩『フィンランディア』が人気で、私も大好きですが、私はこの第五番を偏愛しています。 第一楽章は、雄大なホルンの旋律に木管が鳥の啼き声のように絡んで始まりま

黄昏のまばゆい光 -オペラの演出を巡る随想

私は、若い時映画を沢山見ていたせいもあり、舞台や演劇を観に行く楽しみを、正直そこまで味わっていない人間です。 とはいえ、演劇の中でもオペラは、ジャンルとして自分が大好きだというのと、昔の貴重な演出が結構映像ソフトとして残っており、今でも色々と見る楽しみがあります。 今日はこのオペラの舞台における印象深い演出について、少し語りたいと思います。 私が好きな演出家の一人に、1997年に亡くなったジョルジョ・ストレーレルがいます。 彼の代表的なオペラ演出と言えば

太古の森のきらめく夢 -オペラ『魔弾の射手』の魅力

【金曜日は音楽の日】 オペラには、主に二つの軸があると思っています。一つは、お涙頂戴のメロドラマ。もう一つは、どこか懐かしい御伽噺。 前者が、近代的な感覚だとすれば、後者は、オペラが生まれたバロック時代の匂いを濃厚に残したアルカイックな感覚です。 勿論、多くのオペラはこの二つが様々な割合で交じり合っているのですが、ウェーバーの『魔弾の射手』は、後者に振り切った、森の御伽噺のような美しいオペラです。 カール・マリア・フォン・ウェーバーは、1786年、当

軽やかな光明 -バッハのピアノ演奏を巡って

【金曜日は音楽の日】 バッハの音楽の面白さの一つは、驚くほど解釈が多様だということでしょう。 クラシックの中でも録音が多いのは、作品自体の多さも勿論ありますが、解釈することが面白く、様々な演奏家に、自分の解釈を残したいという意欲を涌かせるものだということもあると思います。 今日は、そんなバッハの中でも、鍵盤での作品について語りたいと思います。 バッハの鍵盤演奏作品で、一番名高いのは、何といっても、グレン・グールドではないでしょうか。 彼が1956

世界を広げる青春の音楽 -ベルリオーズ『幻想交響曲』の面白さ

【金曜日は音楽の日】 フランスの作曲家、ベルリオーズの『幻想交響曲』は、クラシックの中でも人気曲であり、一風変わった曲でもあります。 なかなかに派手で、滋味深いとはちょっと言い難い曲なのですが、色々と聞き込むと、面白い面が見えてくる曲だと思えます。 エクトル・ベルリオーズは、1803年フランス南部生まれ。医者の息子として生まれるも、音楽に興味を持ち、独学で音楽理論を身に付けます。 パリに出て医科大学に入学するも、医者への道を断念(解剖が苦手だったよ

光と水が奏でる旋律 -ドビュッシーのソナタの美しさ

【金曜日は音楽の日】 音楽は、その自由に流れていく姿が水を思わせます。 私にとって、そんな水の自由さをもっとも連想させる音楽が、ドビュッシーの『フルート、ヴィオラとハープのためのソナタ』を聞いたことでした。 はじめて聞いた時、これ程自由で、しなやかな美しさに満ちた音楽が、この世に存在するのか、と衝撃を受けました。 風にそよぐようなハープとフルートの絡みから第一楽章は始まります。「牧歌」と名付けられたその始まりの、夢見るような美しさ。 ヴィオラ

晴れやかな喜びの試み -ベートーヴェン『田園交響曲』の魅力

【金曜日は音楽の日】 ベートーヴェンの交響曲の中でも第六番『田園』は、不思議な魅力に溢れています。 第五番『運命』や、第九交響曲ほどポピュラーではないけど、滋味と喜びに満ち、そして彼の交響曲中の、異色作でもある。それゆえに美しい作品です。 『運命』は、ベートーヴェンが名付けた題名ではない通称ですが、第六番はベートーヴェン自らが『田園交響曲』と名付けています。それだけではなく、各楽章に、サブタイトルもつけています。 第一楽章は、『田舎に着いて、朗らかな気分が

デュオの魅力 -音楽で対話することの良さ

【金曜日は音楽の日】 以前、私が面白く読んだ漫画に、新川直司の『四月は君の嘘』があります。 クラシック音楽を題材にして、アニメ化もしたこの作品。トラウマを抱えて弾けなくなった、元天才ピアニストの少年と、天真爛漫な凄腕ヴァイオリニストの少女の物語です。 興味深いのは、この作品がオーケストラでなく、ソリストでもなく、デュオを題材にしていることです。 オーケストラであれば、集団の中でいかに自分の色を出すか、いかにそれを統率するかという、個と全体との葛藤に

熱狂の魔術師 -天才指揮者カルロス・クライバーの魅惑

【金曜日は音楽の日】 指揮者というのは不思議な存在です。自分で楽器を演奏するわけでもないし、歌う訳でもない。 実のところ、ある程度実力のあるオーケストラなら、ベートーヴェンやブラームスの交響曲レベルは、指揮者がいなくても、破綻無しに演奏は出来ます。 指揮者の役割とは、その「演奏」に、プラスアルファを付け、真の「音楽」を創りあげることだとも言えます。 カルロス・クライバーは、強烈で熱狂的な「プラスアルファ」を創造することができた、最高の指揮者の一人でした

夫婦で紡ぐ音楽 -映画『アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記』の美しさ

私たちは普段、映画をフィクションと思って楽しんでいます。しかし、ドキュメンタリーでなくても、あらゆる映画には、記録という側面があります。 そんな「記録」としての様々な層が積み重なって、夫婦の「愛」を、音楽という形で創造した美しい映画があります。それが、ジャン・マリ・ストローブとダニエル・ユイレによる映画、『アンナ・マグダレーナ・バッハの年代記』です。 ストローブとユイレは、それぞれ、1933年と1936年フランス生まれ。パリで出会い結婚し、初期ヌーヴェルヴァーグ

異郷は力をくれる -ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界』について

【金曜日は音楽の日】 新しい場所で、新しく何かを始めること。それは、作品に力を与えてくれます。作者がその場所に開いた心で臨めば、素晴らしい変化をもたらすこともあります。 そんな異郷での新しい力を取り入れることに成功した音楽として、ドヴォルザークの交響曲第9番『新世界』を挙げたいと思います。 第2楽章や第4楽章のテーマがBGMに使われて有名ですが、それ以外にも聴きどころがあり、複雑な味わいの名品になっています。 第1楽章は、暗い序奏から始まります。そして、玉虫

山の音楽の魅惑 -ブルックナー『交響曲第5番』について

【金曜日は音楽の日】 ブルックナーは、クラシックの中でも、不思議な立ち位置にいる作曲家な気がします。 「嫌いなわけではないけど何となく苦手」という方と、熱烈に好きというファンに分かれる感じがしています。つまり、はっきりと人を挑発するような要素はないのだけど、何かとっつきずらい感じがする。 苦手な方や、まだ聞いたことのない方には、私は『交響曲第5番』をお薦めしたいです。 『交響曲第4番(ロマンチック)』が、一般的にはどちらかというと知名度が高いですが、『第