夏
夏がきた。
いや、夏に私がきた。
茹だるような暑さはきっと、あの子のせいだ。
テレビではまた、どうしようもない人間の、どうしようもない執着を見せつけられた。そんなに認めて欲しいなら死ねばいいのに。と思った自分はもう、限界なのかもしれない。
錆びた弦を見て笑い、錆びた弦に触れて泣いた。
紫煙を燻らせた自分の目に映るモノは、現実以外のなにものでもなかった。
最初で最後の夏を、後何回繰り返すのだろうか。
月にはいつ、いけるのだろうか。
死んだ人間は後、どのくらいで生き返るのだろうか。
海は今日も大荒れで、たった一隻の船は行先を知らない。
それでも大きな波に立ち向かい、体を揺らすその姿に、美しさと不気味さを感じる。夏。
明日って土曜日だよね?というあの子の唐突な問いに、思わず若干の警戒を持った速度で答えた。
土曜日でも日曜日でも、どうでもいいけど。僕は君のことだけを知りたい。
もうそろそろお別れしなくちゃいけない。
もう千秋楽だよ。まだいけるなんて嘘なんだ。
自分の弱さ?そんなものない。
君もそうだよ?おんなじだよ。
おんなじ?おんなじ。
でもね、気付かないで。
夏がきた。この夏はどんな夏?
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