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水無月十一の日

箱みたいな売店のカウンターには、申し込みカード、鉛筆、いろいろなお知らせパンフ、ハズレクジ券なんかをポイする入れ物が置いてある。

開店準備。
1つ1つセッティングしていく。
ポイするケースはスライド式の透明BOX。
を持ち上げた瞬間、異変に気付く。
な、なんと、Gが入ってた。

恐れおののきながら、そーっとBOXを床に置く。
私がこの世の中で一番恐ろしいG。
血の気が引いてきた。
どうしよう…汗が吹き出してくる。
防犯意識を無くして、ドアを開け放ち、シャッターを閉めるときに使う棒で、そーっとそっと
、外に向かって箱を移動させる。
もうすぐ外に出せるところまで移動させたのに、
Gが箱の中で羽ばたいた。

ギェギャーーーみたいな声が出て、足でおもいきり蹴ってしまった。
強化プラスチックのBOXが割れた。
割れたBOXからGが出てきた。
どんな叫び声を出してしまったのか記憶がない。

両手を広げることも出来ないくらい狭い箱の中で、変に暴れた私の頭に、棚から落ちてきた招き猫があたったことにビックリして、また叫びながら暴れた拍子にSECOMのスイッチを押してしまったらしい。

SECOMからの『どうしましたか?』
急に聞こえた人間の声に驚いて、また私は叫んでいたようだ。
時計を見る。開店時間が過ぎていた。
電話が鳴った。
電話の音にまた叫んだ。
知らない人がドアの外に居た。
『大丈夫ですか?』
『すみません、大丈夫です!ゴキブリがいて、驚いちゃって…』

電話がずっと鳴っている。
会社からだった。
開店報告をしていなかったので心配されたのだ。

事の顛末を話したと思う。
どんな風に話したのかは記憶にない。
『とにかく、とにかく落ち着いて!!開店して!』と言われ、だんだんと落ち着きを取り戻したところに、SECOMのお兄さん達が駆けつけて来た。

説明して、書類にサインをして、帰っていただく。
ほどなくして、エリアマネージャーが到着。
私が蹴り飛ばして壊してしまったBOXの替えを携えて。

あーぁ、やっちゃったぁ… なんでこんなことに…(泣)

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