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第三十九話 桐藤礼讃①「教科書と文化祭」

「これは、どういうことなのでしょうか?」
「はい、えーとですね」
「この教科書の出版元、また、監修並びに考証、実際に原稿を書いた者、また、この責任者に対して、直訴致したく存じます」
「・・・ですが、桐藤様、柚葉様、これは、遺伝学的にも、認められた事項でありまして・・・」

 今日は、かねてから、修正したい、歴史の教科書の表記について、教育庁に直談判に来た。

「『東国と、スメラギは同根である』・・・いつから、このような世迷い事を、学校で教えることになったのでしょうか?しかも、何故、表記上、東国が、スメラギより前なのでしょうか?教育庁の皆様は、一体、何をなさってらっしゃるのでしょうか?」
「はあ、しかしですね、教科書検定審議会に於いてですね、5年前から、この内容で行くことになりました。同様にですね、東国の方は、数十年前から、この事実を教科書に掲載して、それを使用しているそうです」
「東国との、足並みを揃えないと、ということでしょうか?」
「それは、おかしな話ですね。何故、こちらが、東国に阿なければならないのでしょうか?」
「その国々の事情というものを、考慮してこそ、では、ございませんか?」

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「まったく、子どもの癖に、大人に当たり前のように、食ってかかってきて」
「第二皇妃様の息のかかった、側近の子どもらしいですけど。あの二人、ナショナリスト的な発言をしてますけどね、あの容姿から、生粋のスメラギ人ではないじゃないですか?」
「まあ、よくわかりません。皇宮の時間は、百年以上前から、止まったまま、と言われてますからね」
「ああ、また、あまり言うと、皇帝批判と、リークされたら、大変です」
「訂正は、どうしますか?」
「スルーでしょう。こんなの」
「不問ということで、上には上げずにおきましょう」
「解りました」

⚔🔑🏢

「納得がいかない。この件に関しては、もう少し、亥虞流イグル殿に、圧力をかけて頂くしかなさそうですね」
「・・・、なかなか、難しいでしょうけれども・・・」
「一緒に話をしてくれて、ありがとう。柚葉」
「いえ、まあ、東国には、我が国も、煮え湯を飲まされた歴史があるし・・・」

 教育庁からの帰り道、柚葉と肩を並べて歩く。迎えの車に乗り込む。従者が居ると、却って、面倒だから、直接、担当者に会ってきたのだが。

「しかし、最近は思う。確かに、民族の軋轢はあるにしても、心栄えの良い者はいる。スメラギの為の抗議行動は、執らせて頂くが、・・・例えば、数馬の批判はしない」
「まあ、良い奴だからね、あいつは」
「そうだ。我が御相伴衆だ。皆、スメラギのことを考えて、動いてくれる」
「・・・そのようで」
「柚葉にも、感謝している」

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 この度、数馬が、三の姫付きになり、慈朗と共に、学校に通うことができるようになった。俺は、一の姫とのことに、時間を取るように、第二皇妃から言われ、しばらく、学校の方は、週に一回か、二回通う程度になった。その頃の話である。

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 その頃、学校では、文化祭の準備とやらで、どうやら、御相伴衆の我々にも、役割の御鉢が回ってきた。しかし、今回は、数馬と慈朗が求められたので、任せることにした。柚葉は、その間の、三の姫の守役のサポートに入ってくれるらしい。

数「文化祭?」
慈「うん、僕は、劇の背景描きを頼まれたんだ」
柚「すると、やはり、芝居の方は、数馬だと思って、返事しておいたのだが」
数「柚葉―、なんだよ、それ、聞いてないよ」
柚「是非、数馬に出てほしいと、同じクラスの、演劇部の部長に頼まれてね」
数「柚葉って、俺のマネージャーかよ。何でも、勝手に決めてくるから、ハードスケジュールなんだけど
柚「悪い、今回も、話が長くなりたくなかったから、数馬に頼んでみる、と言ってしまったんだ」
慈「うーん、ちょっと、それ、柚葉、また、安請け合いしちゃって。数馬、また、部活ラッシュだよ」

 聞くところによると、数馬は、運動部から引っ張りだこらしい。

数「本当だよ。まあ、何か、よく、わかんないけどさ、俺、部活要員が過ぎるんだけど・・・」
柚「各部活動にとっては、数馬は、需要しかないらしい・・・」
慈「運動部も、少し練習すれば、コツ掴んじゃうし、今度は、文化部が、数馬を宛てにし始めたみたいだね」
数「選択肢、ないみたいだね、相変わらず」
柚「頼む、数馬、学校全体が、君の芝居に注目している・・・らしい」
数「はあ?そんな調子の良い事、言って、皆に、いい顔して、柚葉は狡いなあ、もう」

 とか言いつつ、数馬は、人が好いから、結局は引き受けてしまうのではないか?

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