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謡の間にて③~畸神語り 二代・三代様の段 舞って紅 第十五話

 アカは、居ずまいを正し、安行の前に座った。そして、神語かみがたりを始めた。

では、畸神語りを始め申す。二代様の段の始まりにございます。この世の乱れの生ずる折、天空と海の果ての間に、惟月島(イツキジマ)が現れ、そこに、畸神様ご夫妻が、現れまする。太祖様の御身の半分と、お心の半分を継ぐ、一対のおのこおなご、これが、次世代の畸神様となりまする。おのこは学士文官の天護(アモル)様、おなごは巫女姫の天照(アマテル)様とあいなりました。まずは、天照様、人として、『ミチヒラキ』なされなければなりませぬ。これを『仮婚』と申します。仮婚役♂が選ばれ、薬師の椎麝(シイジャ)様とあいなりました


「ああ、そこまでで・・・アカ殿、えーと、太祖様の身体と心の半分を受け継いだ男女が、天護様と天照様ですな。一応、表意文字は、調べがついておりますので・・・。聖地が『イツキジマ』というのは、この東つ国の元とも聞いておりますが・・・」
「申し訳ございませぬが、あたしは、意味は解りません。聞いたままのことを諳んじて、語っているだけに過ぎませぬ」
「ああ、そのようだったな。巫女の方の謡とは、そういうものと伺った」
「でも、恋物語としての感じは、あたしにも解ります。その読み解きみたいものは、母者から伺ったので、後で、お話し致してもいいですが・・・」
「承知した。では、それは、後ほど、お伺い致そうと思う。続けてくだされ」


この二代様のお役目は、この乱れたこの惟月島の外に、『在界(ザイカイ)』という、いくつかの伽の世界を産み出す為の、『伽畸神(トギキシン)』をお作りになること。しかし、その為には、人の娘の天照様♀は、そのままでは為せず、天界から、選ばれた仮婚役♂の椎麝様と、人としての仮婚(ミチヒラキ)を行い、一度、ご夫妻となられました。その後、天照様は陽の畸神様♀となられ、天護様が陰の畸神様♂と、天界から選ばれ、畸神ご夫妻となられた後、伽産みの陽の畸神♀日女美伽(ヒメミカ)様がお生まれになられました


「はい、そこまでで、ひとまず。ここまでが二代様の件?」
「そうです」
「・・・なるほど、この後に、三代様に続くわけだな」
「三代様のお話は長くなります。途中で切りながらが、良いかもしれませぬ」
「承知した。しかし、何となく、伝え聞いておったが、何故、仮婚役という人の夫と、陰の畸神様という夫と、陽の畸神様はお迎えになるのか・・・」
「・・・うーん、不思議なのかもしれませぬが、多分、決め事でありながらも、天照様は、椎麝様も、天護様もお好きだったのではないか、と、あたしは思います」
「な、なんと・・・そのような・・・あ、いや、それは後ほど・・・」
「はい・・・、では、次の段に行きます」


日女美伽様は、三代様になられるお約束にて、御母上の天照様とのお約束にて、椎麝様が、畸神になる為の修行を施すことになりました。椎麝様は、沢山の『智』で、世の様々な事柄を授け、日女美伽様は、賢くなられました。次に、椎麝様が、月見が池で、『気』を高める為、共に水浴にと誘うと、日女美伽様は、そのお気持ちが澄み、お心が強くなられました。そこまで、学ぶと、日女美伽様は、幼子から、娘になりました。伽三つの力とされる、『智』と『気』は学ばれたが、最後の『想』が解らぬ、日女美伽様。しかし、この時、椎麝様は、薬師の務めにて、昼間は忙しく、日女美伽様に、構っておられぬようになりました。日女美伽様は、椎麝様にお伺いしたかったが、会うことが適わず、夜に、椎麝様の屋敷に忍んで行かれてしまいました


「あ、ここまでで・・・、えーと、んー・・・はい」
「大丈夫でございますか?ここまで」
「『』と『』と『』・・・、伽の三つの理(ことわり)。なるほど。後が、気になる所だな」
「安行殿は、さしづめ、『』のお人じゃな」
「・・・そうなるのか、得意は、これしかない。お師匠様に師事できて、嬉しく思っているのだ。将来は、お師匠様を、学問でお支えする、手足になりたいと思っている」
「文章生(もんじょうのしょう)ではないのですか?聞いたことがありますが」
「ご存知か、アカ殿も。・・・それは、大それたことと思うているのだが・・・アカ殿は、我と違って、『』を司っておられる感じだな。巫女殿であられる」
「それですが、・・・まあ、斎宮のような上の方とは違います」
「そうなのか?お会いしたことないので、解らんが。アカ殿もそのように思うが」
「ふふふ、・・・そうかもしれませぬな」
「・・・うーん」

 安行は、一度書いたものを眺めている。次は、『』の件になるのだが。

「この頃の日女美伽様は、おいくつぐらいなのだろうか?」
「それは、恐らくですが、お婆に聞くと、十四、五の早乙女だと聞いておりますね」
「・・・我と同じぐらいか」
「そのようですね。続けても、よろしいか?安行殿」
「解った。続けてくれ」

                             ~つづく~


みとぎやの小説・連載中 「謡の間にて③~畸神語り 二代・三代様の段」 
                         舞って紅 第十五話

 お読み頂きまして、ありがとうございます。

 この原稿を朝から、作り始めたら、また、急ぎの仕事が入ってきました。
 まあ、そういう時なんでしょうね。今日は、ギリギリですね。こちらをお届けすることができました。

 私は、アカの明るさ、奔放さが大好きです。
 一族が、侵略者に追いやられたとしても、命がけで、その大切なルーツの神々の記憶を紡いでいく。その記憶を引き受けた、謡巫女。暗くしてたら、やってらんない案件ですよ。多くの民の中に上手く紛れながら、その役目を果たしていくに違いないんですね。

 そして、ある意味、これから安行が任されて、成そうとしていることは、口伝の記録ということで、これこそが、その実、改ざん、書き換えが可能な手段他ならないのです。その危険を冒してでも、この記憶を遺す為に、国家的プロジェクトが発動している、という所なのです。

 扉絵は、右が伝え語りするアカ。左が三代目の畸神夫妻と伝わる二人です。ちなみに、「365枚の絵」でご紹介している、天照大神様のモデルが、この三代目の畸神の日女美伽(ひめみか)になります。

 巫女の話を書きながら、つくづく、因果なものだなあと思っています。
 脳裏に過る感覚の再生が、きっと、生きているのかもしれないと思いながら、今後が、どうなっていくのか? お話を書きつけることが、私、みとぎや自身が楽しみでもあるのです。

 このお話にはテーマソングがあります。まだ、音源化に至っていません。要は、伴奏つきの歌の録音がされていないだけなのですが・・・。

 そして、ここまでのお話は、こちらのマガジンから、お読み頂きますと、より理解が深まると思います。是非、お勧めです。

  ゆっくり目になりますが、アカの世界も進んでいきます。
 次回を、お楽しみになさってください。

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