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籠の鳥 B:部屋

♂ 

 やっと捕まえて、ここまで連れてきた。そんな言い方すると、ちょっと、子どもの頃のことを思い出す。貴女には、失礼だけど、その感じに似ている。

 自分の不器用さとか、色々、考えて、意を決して、こういう形にした。多分、俺としては、飛び級のことをした感じだ。今はもう、このまま、ここから、帰さないで、ずっと、一緒にいられたら・・・ぐらいの、達成感だ。まあ、事実、それはできないことなんだけど。だから、同時に、不安でもある。

 そういう意味合いで、次の店の話とか、してみたりする。いつも通り、「なんで?」って、顔されたのもよく解ったけど。一度、手を離してしまったら、二度とここには来てくれない、そんな感じもしたから。

 小学生の頃、野鳥を捕まえて、家で飼っていいか、親に聞いたら、ダメだと言われた。やっと捕まえたのに「やっぱり、野鳥は、自然の中で生きるのが、一番だから」と、兄貴が普通に言って、籠から出して、窓から放して、帰してしまった。一緒に飼おうと決めて、捕まえてきたのに、お袋から言われたら、いい子の長男アニキは、言うことを聞いて、そのようにした。弟の俺の意見は、全く通らなかった。

 貴女は、別にそうではないけど、ある意味「籠の鳥」なんだろうね。そうそう、「籠があるから」「籠に帰らなきゃいけないから」ということを、「ダメ」の理由にしていた。

「ん・・・ちょっと、痛いかも・・・」
「あ、ああ、ごめん・・・大丈夫?」

 うん、と頷いた。腕の中にいる大切なものの価値は、この間にも、上がり続けてる。いつの間にか、力が入ってしまっていた。

 今まで、頭の中で、色々と考えていた。初めは、ただ単に、そうなったら、いいかもしれない、という妄想に過ぎなかった。貴女は、毎晩、俺の隣にいた。でも、朝、起きて、事実、いる筈もない。時には、夢まで支配してきていたとしても。まあ、当たり前なのだが・・・。でも、今は、こうやって、一夜明けて、朝になっても、ここにいる。夢ではなかった。

 それは、似て非なりだった。想像に及ばない、その本物という存在と感覚、小鳥を手で捕まえた時だって、遠目で見ていた時と違った。それと同じだった。温みがあり、初めて見た、反応が、そこにあった。

💛

 ・・・なんだろう?・・・多分ね、いいのだと思うのだけれど。

 あの焼きもち焼きが、その腕を、初めて緩めた。たまたま、あの人が死ぬかもしれないと連絡を受けた時に、居合わせたのが彼だった。・・・不思議というより、もう、符号合わせができていて、スライドしていったのかもしれない。

「今日の予定は・・・?」
「・・・まあ、もう、帰るだけだから」

 ん、これで良かったのかな?回答は。・・・なんとなく、解るんだけど。多分、ここから、このまま、すぐ出ること、許してもらえなさそう・・・。こういう言い方で、遠隔的に伝えてくる、それは解った。まあ、これも、解るまで、時間がかかったんだけど・・・。

 物事の全てが、納得づくで、進むとは限らない。いつもと違うのは、今までの決定打が、まだない感じだ、ということ。違うのは、この人が自由だということ。これは、果たして、大丈夫なんだろうか?

 最初の彼が、自由だった私を捉えた。鍵はかけなかった。出入り自由にしていた。ひょっとすると、逆の立場なのではないか?

 求めて、得られると思わなかったものが、向こうからやってきた。
 求められて、沢山、求められて、全て、取り込まれてしまった。
 それらは、お腹に落ちた。そうして良いと、心から思えたから。

 ・・・でも、今回は、どうなんだろう?

 私は、本当に、これまでのジャッジのように、掛け値なしで、先に進んでもいいのだろうか?

 この部屋のベッドで、朝を迎えていた。今、抱き締められて、身動きが取れない。
 なのに、まだ、最後のジャッジができていない。

💛💛

 確証が欲しい。この期に及んで、流石に自信を持って、安堵するだろうと思ったら、却って、落ち着かない。物理じゃなくて、・・・そんなことは解っているのだが、今一つなのだ。

 解らない。その気持が掴めない。そのことが、こんなに不安になる。

 これじゃあ、何も変わっていない。どうしたら、いいんだ。
 そうなんだ。決定打の意志が聞けていない。貴女の気持というものが。

 確か・・・、聞き違えでなければ、その時に口をついて言った、その言葉に嘘がなければ。

 嫌、もう一度、確かめればいいんだ。何も臆することはない。彼女は今、ここに、腕の中にいるのだから。

                             ~つづく~


みとぎやの小説・ラベイユプチ連載中 籠の鳥 B:部屋

 お読み頂きまして、ありがとうございます。

 兄弟の同胞関係、二人いると、正反対とか聞きます。複数いると、気が合ったり、合わなかったり、それぞれ、相性があるとも聞きますね。
 彼のお兄さんは、いい子で要領が良く、彼は立ち回りが下手だったみたいですね。色々と手が遅いというか、前回の「その手を取って」の穂村さんと似たようなタイプかもしれませんね。
 想像よりも、リアルがいいに決まってますし、小鳥だって、手に乗せてみて、その温かさや重さがわかるしね・・・想像よりも、彼女は、やはり、得難く、愛おしい、どうやら、彼は、かなり長い片思いをしていたみたいですね。やっと、彼女を昨夜、手に入れた、ようですね。
 片や、彼女と来たら、相当の経験者の様で・・・、色々な心配をしているわけですね。久方の新しい恋というか、そのような場に、少し面食らってる感じ・・・。さてはて、ちょいとすれ違い気味の二人、どのようになっていくのか?・・・まだまだ、もちょもちょ続くのか?お楽しみに。

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