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「これ、ちょっと痛いですよ」:痛みへの期待が運動反応に与える影響

▼ 文献情報 と 抄録和訳

痛みを予期して:期待感が皮質脊髄の興奮性、自律神経反応、および痛みの知覚を調節する

Barnes, Kirsten, et al. "In anticipation of pain: expectancy modulates corticospinal excitability, autonomic response, and pain perception." Pain 160.8 (2021): 2287-2296.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景・目的] 痛みは、知覚、自律神経、および運動反応を含む、どこにでもある経験である。期待感は、痛みの知覚的および自律的な要素を増幅することが知られているが、運動反応への影響はあまり理解されていない。期待感が皮質脊髄の興奮性を調節することを理解することは、痛みを予期して適応的および不適応的な保護行動を展開することに関して重要な意味を持つ。

[方法] 我々は、高い痛みが予想される場合、低い痛みが予想される場合、そして高い痛みが予想される場合に危機的に低い痛みがあった場合の皮質脊髄興奮性を比較するプロトコルを開発した。

[結果] 高い痛みを予期すると、皮質脊髄の興奮性が抑制され、低痛覚刺激に対する知覚および自律神経系の反応が、侵害刺激の増加(すなわち、高い痛みを予期した場合)と同様に高まった。マルチレベルモデリングの結果、痛みの知覚が、侵害刺激とこの期待値で調節された痛みの両方の自律神経反応への影響を媒介することが明らかになったが、皮質脊髄の興奮性は媒介しなかった。

[考察] これらの結果は、痛みを期待するだけで、すべての痛みの構成要素に影響を与えることを示している。この結果は、期待変調型疼痛の病因に新たな光を当てている。すなわち、痛みを期待すると、皮質脊髄興奮性の低下と関連して、保護的撤退反射によって身体を害から守るために運動系が動員され、侵害受容刺激の増加と同様のプロセスが活性化されるのである。このことは、痛みの治療、特に痛みに関連した動作の回避が痛みの維持に寄与している場合には、実用上重要な意味を持つ

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

確かに、歯医者さんなどでも「はい、これちょっと痛いですよ〜」は魔法の言葉だ。
次の疼痛に備えて、身構え、痛みが来ても叫ばない用意が整う。
相手に疼痛に対する期待を与える、準備をしてもらうことは、皮質脊髄路の興奮性にも確かに影響していることがわかった。

この疼痛への期待、備えが「あった方がいいか」はまだ整理できていない。
それにより運動が阻害される人もいるだろうし、疼痛への備えが整った方がいい人もいるだろう。

もちろん、相手のパーソナリティに依存する部分も大きいと思う。
そもそも、そのような侵害刺激への耐性が非常に低い人もいるから。

疼痛が出そうな練習の前には。
相手に、疼痛に対する期待を与えた上で、その練習を行う。
そうすると、運動反応に確かな影響を及ぼすことができる。
そこに治療上の選択の余地があることを知ることは、有用だろう。

わざとボディを打たせるんだ。
打たせたボディは痛くない。

モハメド・アリ

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