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Nature Medicine掲載:大腿切断者の電動股関節外骨格

▼ 文献情報 と 抄録和訳

電動股関節外骨格が膝上切断者の歩行経済性を向上させる

Ishmael, Marshall K., Dante Archangeli, and Tommaso Lenzi. "Powered hip exoskeleton improves walking economy in individuals with above-knee amputation." Nature Medicine(2021): 1-6.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 膝上の切断は、何百万人もの人々の運動能力と生活の質を著しく低下させる。義足での歩行は非常に効率が悪く、歩行経済性の低さが移動を制限する大きな問題となっている。

[方法 & 結果] 本研究では,6名の膝上切断者がトレッドミルで歩行する際に,残存肢を補助する自律型動力股関節外骨格が,代謝による歩行経済性を15.6±2.9%(平均±s.e.m.,両側ペアT検定,P = 0.002)と大幅に改善することを示した.観察された代謝コストの改善は,非切断者から12kgのバックパックを取り外すのと同等であった.すべての参加者は、歩行バランスや安定性に目立った変化はなく、外骨格を装着した状態で発進・停止を含む地上歩行が可能であった。

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a:動力付き股関節外骨格のモデルで、作動システムを示すために透明になっている。外骨格は、3次元的に印刷された装具を骨盤に固定し、柔軟なカフをソケットに巻き付けて残存肢に装着する。作動装置は、ブラシレスDCモーター、ヘリカルギア、ボールねじ、複合バネで構成されています。
b:参加者に装着された外骨格の拡大図
c:参加者が外骨格を装着し、携帯型熱量測定システムと安全ハーネスを装着してトレッドミル上を歩行している様子。

[考察・結論] 本研究では,動力付き股関節外骨格を用いてユーザーの残存肢を補助することが,切断者の歩行経済性を改善するための実行可能なソリューションであることを示した.歩行時の代謝コストを大幅に削減することで,提案されている股関節外骨格は,膝上切断者の生活の質を向上させ,モビリティに大きなプラスの影響を与える可能性がある。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

オスカー・ピストリウス
両下腿を切断しながら、オリンピック出場を果たしたという偉人だ。
近い将来、義肢装着者のパフォーマンスが生身を超える日が来るかもしれない。
そのとき、オリンピック委員会は、どう判断するのだろう?
突き進む先は、技術屋のための技術大会にとって変わられるのではないか?

そのような最高度での問いはあるにせよ、臨床現場にとっては朗報だ。
これまで、「この方の筋力では大腿義足を用いた歩行は難しいだろう」と判断されていた人の何割かが、歩行獲得できるようになるかもしれない。
機械の進歩は止まらない。
より精緻に、よりパワフルに、より美しく。
生身の人間の進歩が、こんなにも遅々としているのは、どうしてだろう?
その遅々とした歩みが、こんなにも尊く感じるのは、どうしてだろう?

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