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足の強度の40%以上を担う横アーチの『紙-筒効果』

▼ 文献情報 と 抄録和訳

人間の足の硬さと横アーチの進化

Venkadesan, Madhusudhan, et al. "Stiffness of the human foot and evolution of the transverse arch." Nature 579.7797 (2020): 97-100.

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 人間の足は硬いので、歩いたり走ったりするときに効率よく押し出すことができ、二足歩行の進化には欠かせない。他の霊長類は中足部が大きく曲がった扁平足であるのに対し、ヒトの中足部は独特のアーチ状の形態をしており、これが中足部を硬くしていると考えられている。しかし、中足部の形状と剛性の関係については、足のバイオメカニクス、足病学、古生物学の分野で議論が続いている。これらの議論の中心は内側縦アーチであり、人間の足の第2の横足根部アーチが剛性に影響を与えるかどうかは考慮されていない。

[方法-結果] ここでは、中足骨間の組織を介して作用する横足根弓が、足の縦方向の剛性の40%以上を担っていることを示している。その原理は、横方向にカールするとかなり硬くなるペラペラの紙幣に似ている

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. 人間の足には,中足部に内側縦アーチと横アーチという2つの異なるアーチがある。bは、薄くてペラペラの紙が縦方向に曲がると柔らかいが、横方向に曲がることでかなり硬くなるイメージを示している。足でも横アーチが同様の役割を果たしている可能性がある。

本研究では、足根部横アーチの剛性を支配する無次元曲率パラメータを導出し、足の力学モデルを用いてその予測力を実証するとともに、ヒトの足の骨格との相関関係を明らかにした。足部では、中足骨間の組織の材料特性と中足骨の可動性が、足部の縦方向の剛性に影響を与え、その結果、横足骨アーチの曲率と剛性の関係にも影響を与える可能性がある。本研究では、化石を分析することで、絶滅したヒト科動物における曲率パラメータの進化を追跡し、ヒトのような横アーチが、少なくとも150万年前のホモ属に先行するヒトの二足歩行の進化の重要なステップであったことを示した。

[結論] このような足に関する新たな理解は、扁平足障害の臨床治療、ロボットの足の設計、運動における足の機能の研究を改善する可能性がある。

✅ 外部リンク(日本語)
National Geographic、② Natureハイライト

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

Form follows Function(形態は機能に従う)
ルイス・サリヴァン

建築や工業におけるデザインを考える際の原則の1つだ。
「建築物や物体の形状は、意図された機能や目的に従え」というもの。
人体構造と機能を考える際には、これが逆転する。

Function follows Form(機能は形態に従う)

形態と力学的な原理を知れば、その機能がおのずとわかってくる。
今回の論文で示された足剛性に対する横アーチの威力だって、図で示されたような現象イメージ(紙を横方向に折りたたむと、縦の剛性が高くなる)は、感覚的にかなり分かりやすい。
こんなに分かりやすいのに、なぜ横アーチを軽視してきたか?
想像の方向性が逆だったからだ。
機能から考えはじめて、構造を当てはめようとしていたからだ。

✅ 機能に形態を当てはめる回路
「足の剛性を高める構造は何だろう?」→「縦アーチのトラス構造・・・!?」

僕たちは、もっともっと、形態について知らなきゃいけない。
形態の観察から出発しなければならない。
まず人の思考があるのではない。頭でっかちになるな!
まず偉大なる自然・現実があって、その現実から出発して、人が思考し・学び・変わるのだ。その逆ではない。

✅ 形態から機能を知る回路
「ふむふむ・・・、横アーチは紙を丸めたような感じで」→「あっ、これ縦に固くなるやつやん!」

この回路をたくさん回して、曇りなき眼をもちたい。

曇りなき眼で見定め、決める
アシタカ(もののけ姫)

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