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ベッドレストにおける筋力低下の生理学的メカニズム

▼ 文献情報 と 抄録和訳

神経筋接合部の不安定性と細胞内カルシウムの変化は、ヒトの除荷時の力の低下を早める要因となる

Monti, Elena, et al. "Neuromuscular junction instability and altered intracellular calcium handling as early determinants of force loss during unloading in humans." The Journal of Physiology (2021).

[ハイパーリンク] DOI, PubMed, Google Scholar

[背景] 除荷は、骨格筋の急速な萎縮と機能低下を引き起こす。重要なことは、筋力は筋量よりもはるかに高い割合で失われるということである。我々は、除荷に伴う筋力の低下が筋量の低下に比べて不均衡であることの初期決定要因を調べることを目的とした。

[方法] 若年者10名を対象に、10日間のベッドレスト(BR)を行った。ベースライン時(BR0)と10日後(BR10)に、大腿四頭筋の体積(VOL)と等尺性最大随意収縮(MVC)を評価した。BR0およびBR10において、血液および外側広筋(VL)のバイオプシーを採取した。神経筋接合部(NMJ)の安定性と筋線維の神経支配の状態を、単繊維の機械的特性と小胞体カルシウムの取り扱いとともに評価した。

[結果] BR0からBR10にかけて、QFVOLとMVCはそれぞれ5.2%(P = 0.003)と14.3%(P < 0.001)減少した。神経細胞接着分子(NCAM)陽性の筋線維がBR10ではBR0に比べて増加したことから、初期および部分的な脱神経が検出された(3.4%増、P = 0.016)。さらに、NMJの不安定性は、血清中のC末端アグリン断片濃度の増加(BR10で19.2%増、P=0.031)からも推測された。高速繊維の断面積(CSA)は、BR10で15%(P = 0.055)減少する傾向を示したが、単繊維の最大張力(力/CSA)は変化しなかった。しかし、BR10では、カフェインに反応したSR Ca2+の放出は、速筋と遅筋でそれぞれ35.1%(P<0.002)と30.2%(P<0.001)減少し、興奮と収縮のカップリングが損なわれていることが示された。

[結論] これらの知見は、NMJの不安定性の早期発生とSRの機能障害が、除荷中の筋力の低下が筋サイズの低下よりも大きいことを示す適格なメカニズムであるという見解を支持するものである。

▼ So What?:何が面白いと感じたか?

筋力の向上と筋肥大に経時的なギャップがあることは知っていた。しかし、逆もまた真なりとは知らなかった。ベッドレストによって、まず筋力の低下が起こり、その後に筋量の低下(筋萎縮)が生じる。そして、この機能としての筋力低下を引き起こしているメカニズムが①神経支配の状態の変化と②単繊維の小胞体機能の障害ということが明らかにされた。これをみて思ったことは、ベッドレスト筋萎縮に対する介入も、期間別に至適強度や頻度が変わるかもしれないということだ。まだまだ、未知の世界はある。

今回の論文には、より噛み砕いた論文レビューがあるので、そちらも参照いただきたい。

https://doi.org/10.1113/JP281761

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