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リンクスランドをめぐる冒険Vol.36 ウィットと優しさがあるリンクス リーイー・ゴルフ・クラブPart.1

前回までのあらすじ
スコットランドのゴルフコースをめぐる1人旅、英国メインランド北端編。前回は9ホールのショートコース、ライブスター・ゴルフ・クラブでプレー。まったく誰もいなくなったコースでの1人プレーは不安もあったが少しずつ面白くなり、最後は土砂降りの雨に遭いながらも大満足の結果。ショートコースであっても、そこはスコットランド。日本のコースにはない面白さがあった。

メインランド最北端のリンクスコースへ

Google Mapではリーイー・ゴルフ・コースとなっているが、これは誤り。
正しくはリーイー・ゴルフ・クラブ。

英国メインランド北端のゴルフコースをめぐる旅、2日目はライブスター・ゴルフ・クラブの反対側、北西にあるリンクスコースのリーイー・ゴルフ・クラブを選んだ。リンクスコースとしてはメインランドの最北端だ。
宿を取ったサーソーの町は人口、約9,000人程度でメインランド北端としては大きい方。小さな入江、サンドサイド湾に面したコースは目と鼻の先ほどの距離にある。それでも2〜3km離れると周囲は海と低い岩肌の丘と緩衝地帯の牧場だけの、スコットランドらしい田舎風景が広がった。
小さな教会と墓地の隣、低い石積みの塀の向こう側に、リーイー・ゴルフ・クラブがあった。
平日の昼前ということもあってプレーする人はおらず、クラブハウスも明かりが落ちていて薄暗かったが、私が入って声をかけるとラウンジの奥から体格の良い中年男性が出てきた。
「Mr.kanekoかい?予約の確認は取れているよ?どうする?まだスタート時間には早いけれど、すぐ回れるよ?」
と笑顔を浮かべて言った。
この頃になると決まった会話なのでスムーズだ。
私はトロリーを借り、すぐにスタートすることにした。

リーイー・ゴルフ・クラブのコース全長はイエローティで5,628ヤード、Par69。
スロープレーティングは119(標準は113)だから、やや難しいといったところ。
面白いのは1番と18番がともにPar3で、どちらもクラブハウスのラウンジから見渡せること。
きっと、メンバーたちがプレーヤーを肴に1杯、という魂胆だろう。
以前の公式サイトには各ホールの解説が丁寧に書かれていて、18番ホールにはこんなことが書かれていた。

”Don't be putt off by the Rogues watching from clubhouse as you try to negotiate this green."

日本語に訳すとこんな感じ。
「このグリーンを狙っている時にローグたちがクラブハウスからジッと見ていても気を悪くしないでくださいね?」
ちなみにRoguesとはならず者たち、という意味。

ニヤニヤ笑いながらクラブハウスから見ているメンバーたちを想像できるだろう。なんともヤンチャで楽しそうな雰囲気ではないか。
各ホールの解説、他のコースにはない趣きでなかなかウィットに富んでいる。
たとえば17番318ヤードpar4。
「もっともタフなホールです。ここを通過した後でスコアカードを破くプレーヤーが多々、見られます」とか。
最近、この原稿を書くために公式サイトを見たら各ホールの解説がなくなっていた。これを読むだけで各ホールの性質が分かると同時に小さな笑いを誘う文章だっただけに、なくなったのは残念。

ジェントルというコースの魅力

2番Par4は418ヤード、4番Par5は566ヤードなど、しっかりと距離のあるホールもある。ただしフェアウェイにはリンクスらしいコブが少なく、広くてフラットなのでストレスがない。
もちろん、左右に曲げれば深いフェスキューに飲み込まれてロスト必至だし、コース中央に流れるリーイー・バーン(小川)は所々のホールでしっかりハザードの役目をする。
けっして易しいコースではないが、アドレナリンが全開になったり果敢に挑戦しようという気分にはならない。
なんというか、妙に気分が落ち着いて穏やかなのだ。

景色はリンクスそのもの。
深いフェスキューに緑濃いハリエニシダ。サンドサイド湾は小さいけれど時折、強風が吹く。だだっ広くて目標物がないことも同じ。
しかし、同じリンクスでもマフリハニッシュのように剥き出しで荒々しいマッチョさがない。ホープマンのような突出したシグネチャー・ホールもない。

派手ではないが、優しさがある。

それは多分、コースを囲むアイゾールド川、サンドサイド川の緩い流れとか、湾内に打ち寄せる穏やかな波とか、水平線とリンクスらしい砂丘との美しいコントラストとか、そんなホールの要素以外のことも影響しているのだろう。
そんな景色を眺めながら1人で回っていたら、たいした疲労感もなく18番ホールを迎えた。
18番Par3、152ヤード。
私が6番アイアンで放ったショットは幸い、左右の深いバンカーに捕まらずグリーンに乗り、ピン左横3mほどのところで止まった。
18番は前述したように、ローグたちがクラブハウスで高みの見物…のはずだが、この時、私はここのコースにただ1人。
誰も見ていない中でグリーンに上がった。

…もっとも、バーディパットを外したので、もしローグたちがいたらさぞ、喜ばせる結果になっただろうけれど。

これが以前の公式サイトに掲載されていた18番ホールの解説
4番から9番にかけて海沿いのホールが続く
4番グリーン奥のサンドサイド川。この柵を越えたらO.B.
「バーディ取ってやる!」というより「どこ落としてもボギー取れるよね」と
緩い気分にさせられる126ヤードの15番Par3
18番のグリーンとクラブハウス。ビデオを画像にしてつなげたので継ぎ目があるのはご容赦を

続く




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