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インテリア好きを激怒させる名作映画3選

アイキャッチ画像引用元:The Cinematograph
前にインテリアが必見の映画について色々と書き(マガジンにまとめてありますので良ければどうぞ)、今回はインテリアが全然魅力的ではない映画を3つ紹介します。
そんなの教えてもらってこっちに何の得が?と思われた方。これらの映画はインテリアが見所ではないけど、映画の中身が文句なしに面白いですから!あとインテリア好きに、何かしら思うところを残すと思います。ネタバレはなし。

1.ファイト・クラブ(1999年)

引用元:The Cine-fiiles

人生ベスト1位の映画。
主人公(エドワード・ノートン)は空虚な日々を送るエリートサラリーマン。ひょんなことからカリスマに満ちた謎の男タイラー・ダーデン(ブラッド・ピット)と同居することになり、夜な夜な男達が集い殴りあう秘密集会ファイト・クラブを開くことになる。

主人公とタイラーが同居する家は郊外にあるおんぼろ屋敷で、おそらく不法侵入して居着いている。ここは正直インテリアどうこうではなく遅かれ早かれ病気になる環境。雨漏りしているし、あちこちにカビが生えているし、扉がちゃんとしまらなくて音漏れまくりで、ベッドのスプリングもいかれている。そして極めつけは水回り。この汚さ、汚部屋時代の自分の部屋思い出すなぁ。

主人公はタイラーに出会う前は高級マンションに住んでいて、しょっちゅうIKEAの通販で家具を買っています。ここで短く主人公の部屋が紹介されるんですが、これは自分が見た中で最もクリエイティブなルームツアーだと思う(Blu-rayだとホーム画面でも見られる)。
タイラーは、消費社会に生きる現代人は所有物の奴隷であると説きます。主人公を含め、皆必要でもないモノを集めることに執着していると。タイラーの基準では、インテリアに凝る私も勿論この奴隷の中に含まれるでしょう。
タイラーに感化された主人公は、男同士殴りあうことにより眠っていたマスキュリニティーを解放し、消費社会からの脱却を図るのですが…

この映画は世間一般的に「男の映画」として認識されている印象。劇中の台詞には「男らしさ」を賛美している(かのような)ものがちらほらあり、ファイトシーンもあるし、劇中のブラピ(特に山寺宏一吹替バージョン)がまさに「男が惚れる男」って感じだし、そもそもタイトルからして男臭い。でも、個人的には性別関係なく楽しめる映画だと思います。
前半は消費社会に翻弄され、後半は自らの本能のコントロールを失う、常に自我喪失気味の人間を客観的に、知的に、新鮮に、ユーモラスに描いた名作です。
映画の公開当時より、更に混沌を極める現代の消費社会に対するコメンタリー(解説)としても、まだまだ十分通用します。
あ、コメンタリーといえば、この映画の音声解説(オーディオ・コメンタリー)の感想の記事もあるので良ければどうぞ。


2.ドッグヴィル(2003年)

引用元:The Cinematograph

人生ベスト2位の映画。
デンマーク人監督ラース・フォン・トリアーのファンなのですが、彼の作品の中でこれが一番面白いと思う。
ロッキー山脈の麓にある貧しい村ドッグヴィルに美しい女グレース(ニコール・キッドマン)が逃げて来る。これをきっかけにドッグヴィルの住人は徐々に変容していく…

これは大恐慌時代のアメリカの村の設定だけど、スウェーデンにあるスタジオで撮影されている(監督は飛行機恐怖症なので基本的にスカンジナビアあたりから動かず、俳優を呼びつけるスタイル)。スタジオにはいわゆる一般的な建物などのセットが組まれておらず、床に白い線が敷かれ、○○ストリートとか、○○の家とか、グーズベリー畑とか、文字で説明が書いてあるのみ。あとは家のなかに家具が少し置いてあるくらい(家といってもただの白い線で囲っただけの空間だけど)。

まさかの建物なしという状況のためインテリアについて語りようがない。でもこの建物なしという環境には、家の壁もない状況で、村の全てをむき出しで見せるという重要な意味がある。そして地面にお絵かきされただけのこの村で、観客は人間の本性を嫌でも見せつけられる。
私自身はインテリアは自分らしさを表現する手段と思っていますが、もしかしたら本当の自分を包み隠す仮面という側面もあるのかも?

俳優たち(ニコール・キッドマン以外にもポール・ベタニー、ステラン・スカルスガルド、ローレン・バコールなど一流ばかり)はこの特殊な状況での撮影中かなりストレスを感じていたようだけど傑作です。お疲れさまでした。
ちなみに映画撮影中のドキュメンタリー「ドッグヴィルの告白」では、監督、出演者達がいかに惨めな気分で映画を作っていたかがよくわかる。興味がある方は見てみることをお勧めします。

3.ブレードランナー2049(2017年)

引用元:映画.com

人生ベスト…58位とか??すみません。上の2つと比べると熱量はだいぶ低い。いや、文句なく面白いですけどね?ドゥニ・ヴィルヌーヴ監督作品につまらないものはない。
ただ、この映画の好きな部分があまりにもニッチ過ぎて、半ば無理矢理この記事にねじ込んだ次第。そして、インテリア好きが怒る映画というよりは、この記事を読んだ無印良品愛好者の方々を怒らせる内容になっています。あとそもそもインテリアじゃなくエクステリアかな…

SF映画の金字塔「ブレードランナー」の続編。レプリカント(人造人間)であるK(ライアン・ゴスリング)はどん詰まりの地球で、人間に蔑まれながら旧型のレプリカントを処分する仕事をしている。いつものように仕事をしていたKはある「奇跡」の存在を知り、その調査に乗り出す。

この映画の中に出てくる地球は環境汚染が進んだきったないごみ溜めみたいで、Kは常にアングラな感じのところをうろついている(オリジナルのブレードランナーの主人公デッカードも同じようなもんだけど)。
あるシーンでKが街を歩いていると、風俗店っていうのか、乱交パーティー会場というのかよくわからない場所がでてくる。そのスペースは通りに面した部分が半透明の素材で覆われています(画像は諸事情から貼りません)。
私はこのシーンで、3つの点から「このデザイン考えた人天才じゃん!!」と感心しました。

①安価そうな人工物でできている。
この時代は木などの天然素材が貴重という描写があり、半透明の人工樹脂一枚でできている壁は、場末の性風俗スペースとしては理にかなっている。

②半透明なので、中のいかがわしい行為が少し透けて見える。
看板不要。しかも何となくスタイリッシュで未来的にも見える。

③無印良品のポリプロピレン収納を連想させる。

誰が性風俗×無印良品という狂気じみた組み合わせを予想したでしょう。無印側だって想定外に違いない。無印を置けばとりあえずクリーンな印象という思い込みは禁物、という学びを得ました。
この映画を見て以来、無印信者の方々が半透明の収納シリーズをきっちり並べている画像などを見るたびに、このシーンを思い出してしまう。逆にこのシーンを見るたびに、無印良品の店内で流れているBGMが脳内で流れ出す。

……。

さっきから決して無印良品を愚弄しているわけではありません。何ならこのシーンに触発されて収納買いましたから。

洗濯ネット入れとして使用

あとこの無印良品シーンと同時に、人力自動販売機(?)みたいな装置が出てくるシーンがあるのですが、この装置はカルトSF映画「ダークシティ」にオマージュを捧げています。「ダークシティ」がまあまあ好きな自分には嬉しかったけど、過去作品のオマージュよりは新しいものが見たいので無印良品シーンの方が好き。サイバーパンクの街並みはもう見飽きたと過去の記事に書きましたが、こういう新しい要素を加えてくれるんなら大歓迎。
過去の記事↓


これらの映画のセットデザインは、いわゆる「素敵なインテリア」ではありませんが、全てのデザインに意味があり、観客に強い印象を残します。インテリア好きの固定概念を崩し、挑戦状を叩きつけるようなところも好きです。他のインテリア好きの方々がどう感じるのか是非知りたいものです。

それではこのへんで。





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