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仮想世界の夢と現実

#日経COMEMO #NIKKEI

 投資家や株主が「メタバース」に関心が薄れ、資金調達が難しくなっているという。それをもってこの記事では「メタバースは本当の意味では始まってもいない。と同時に、すでに終わってしまっていたのだ」とくくっている。

 個人的にはこれを技術一般の捉え方とするにはやや悲観的に過ぎるような気もする。テクノロジーが、注目され始めると同時に過剰な期待を持たれ、色々と試しているうちに現実がわかり始めると幻滅され、徐々に地に足の着いた実装方法が見いだされ定着していく。
 技術のトレンドなんてそんなものと言ってしまえばそんなもの。実際、調査会社のガートナーはテクノロジーの社会における位置づけについて「ハイプサイクル」という概念で、そのような分析している。ちなみに同社によると、2022年の段階で「メタバース」は、まだ始まったばかりで普及には時間がかかる、と予測されている。

「ハイプ・サイクル」とは
ガートナーが毎年公開している「ハイプ・サイクル」は、先進技術の成熟度と現在のビジネスへの採用状況、および今後のビジネス展開に実用性があるかを評価し図示したものです。毎年8月に公開されます。投資判断の基準にも用いられ、前年との比較で各技術分野がどの程度進展したのかを知る根拠としても頻繁に引用されます。
グラフは横軸に大きく5つの段階に分かれており、「黎明期」「『過度な期待』のピーク期」「幻滅期」「啓発期」「生産の安定期」の順に発展するとしています。各期間の詳細な説明はガートナーの公式サイトで参照できます。

Mogura VR 上記記事より

 ただし、このまま見守っていけばメタバースが自然と普及するだろう、という見立ては楽観的過ぎると思う。メタバースが抱える課題については、FT記事と自分も同意である。

 まず技術的な問題がある。今のHDM(ヘッドマウントディスプレイ)を装着し続けられるのは、せいぜい2,3時間が限界ではないかと思う。装着し続けたまま長時間、或いは常時生活することはとてもじゃないけど難しい。また、物をつかむとか、歩行するとか、飲み食いするとか、通常世界でできることを、同じように仮想空間内で行うには、まだ技術は途上にある。そういう点でも、メタバースが現実世界に代わる新たな世界として受け入れられるには、まだまだ時間がかかるだろう。

 もう一つ、そもそもメタバースの定義をだれも明確にしていないというのも、普及を妨げる問題ではないかと思う。ニュースなどで度々メタバースの文字を見かけたが、正直「MMO」や「デジタルツイン」と呼んだ方が適切なのでは?と思ってしまうケースも多かった。また、定義があいまいなため、あえてPC画面ではなくメタバースでやることの意義を見出せる活動を考えることもできなかったのではないか。この点に関しては、どことなくNFTや一時のブロックチェーンと似たような流れを感じる。もしかしたら今のWeb3や自動生成AIも同じ道をたどるのかもしれない。

 いずれにせよ、技術やコンセプトの目新しさから飛びついた勢が、現実を見始めて冷めているのが現状なのかもしれない。それは同時に、メタバースだからできること、メタバースで実現したい世界観について、きちんと技術を理解した人たちで今一度地に足の着いた議論をできる時ということではないかと思う。クリアすべきハードルは多く、技術開発はまだまだ途上だと思うが、可能性は捨てたくないというのが個人的な思いである。
 個人的にメタバースは、現実とは姿も性別も性格も全く異なる、新たな自分の在り方を創造できる世界が実現できるのではないか、と誇大妄想気味な期待を寄せているのだが、いかがだろう。

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