転職の難しさと本音を探すことの難しさ
日本でも転職が一般的になりつつある昨今。だが転職はうまくいくことばかりではない。転職によって幸福な人生につながる人もいれば、転職先でもまた問題が発生し、何度も転職を繰り返す人もいる。
私も1年ほど前に初めての転職をした身であるが、「転職しない方がよかったのではないか」「この転職先も自分には合っていないのではないか」と考える日も多い。
本の紹介
「退職学」の研究者であり、転職エージェントとして数多く転職の支援をした経験を持つ佐野創太氏は、自身の著作「「会社辞めたい」ループから抜け出そう! 転職後も武器になる思考法」にて、この転職後にうまくいかない問題の原因と対策を取り上げている。
同書では転職し続ける負のループにはまる人と、転職に成功して充実した人生を歩める人との違いは、本音と向き合い、本音を磨いて臨んでいるか、であるとしている。
その違いは、 転職活動に〝本音で挑んでいるかどうか〟 です。
自分の正直な気持ちにフタをしても、内定をとることはできます。頭のいい人ほど、ロジカルに話ができるので、本音を隠したまま内定はとることができます。
しかし、仮に内定がとれて転職できたとしても、また「会社辞めようかな……」とモヤモヤしはじめてしまうのです。
佐野 創太 サンマーク出版
そして本書では、自分の本音を洗い出し、磨き上げるための方法を3つ紹介している。
現職に対するネガティブな本音を吐き出す「退職成仏ノート」
人間関係を「つながり」と「しがらみ」にわける「人間関係の仕分けノート」
現職や人間関係への本音をメッセージの形でアウトプットする「明日への手紙」
これらのワークを通じて磨き上げられた本音をもって転職に臨むことで、心から満足できる転職が容易になるのだという。
本音を知るのは難しい
実際にこのワークを通じて転職のループから抜け出せるかは試していないのでわからない。しかし、自分の本音を知ることは、後悔しない選択をするうえで非常に重要なのは間違いないと思う。それと同時に、自分の本音を知ることは、実はとても難しいと思う。
本音、というのはかみ砕いて言えば、自分が何を感じているのか、自分は何がしたいのか、自分は何が好きで何が嫌いなのか、というありのままの感情のことだ。
自分の本音なんてすぐわかる、と思われる方もいるかもしれない。しかし生きていると、外側から提示される「あるべき姿」に向かって進むことが求められることが多くはないだろうか。受験、就活、そして働き始めてからも、色々な方向から「あるべき姿」を提示され、そこから外れれば生きていくことさえ難しいような感覚がする。
例えば、本屋さんで売られている本を眺めてみてほしい。「教養として」「一流の」「知っておきたい」などの枕詞が付いたものがどれだけあるだろうか。そうした書籍の一つ一つが、「これを知っておかないとサバイブできませんよ」というメッセージを発しているように感じてしまうのは私だけだろうか。
書籍に限らず、メディアやSNSを見ても、「成長せよ」「こういう風にお前もなれ」とのメッセージであふれている。そしてまじめな人ほどそんな「あるべき姿」にはまろうと努力しているのではないか。そんなメッセージを真正面から受け止めて、段々と自分の感情的な反応(特にネガティブな反応)にさえ、正しいか否かで評価するようになり、自分の本音から遠ざかっていくのではないか。
そんな環境では、自分の本音を見つけることにご紹介した書籍にあるようなワークに取り組む必要がある。ご紹介した書籍だけでなく、やりたい事探しの方法を解説する書籍も多くなった。それだけ方法論に則ったワークとして取り組まなければ、ありのままの自分がどんな姿だったのかさえ、本当に見えなくなってしまった人が多いということだと思う。
よくよく考えれば本音がわからないなんてとても奇妙なことだ。だが、ありのままの自分を見えなくする構造が、この世の中には組み込まれているのではないかと思う。
終わりに
本記事は、書籍の要約を目的としたものではなく、したがって抜け落ちている要素もあれば、もしかしたら理解が間違っている個所もあるかもしれないが、何卒ご容赦願いたい。今回の記事をきっかけに、関係する問題を持っている方が同書と出会い、何かのきっかけとなれば幸いである。
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