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83 発達障害の理解 LD編

新年度に向けて、
特別支援教育を基礎から学び直しです。
発達障害の主な3つの障害として
自閉スペクトラム症:ASD
注意欠陥・多動症:ADHD
(限局性)学習症:LD
の大きく3つがあります。
これらは、生まれつきの「脳」のタイプで、
ものの見方、感じ方、考え方についての
生まれつきの偏りがあります。
中枢神経系の機能障害と推測されており、
おそらく脳の中での情報処理が、
多数派の人達と異なっているのです。

今回はLD編です。
この発達障害の理解を目標に
まとめていきます。
皆さんも、一緒に勉強しましょう!


LDの定義

発達障害の多くを占める
LD、ADHD、ASDを比較すると
ADHDやASDが
医学的に定義・診断される
のに対して、LDは
教育的概念
として捉えられてきた
という歴史があります。

文部科学省がLDについて、
医学で用いられる「診断」ではなく
「判断」という言葉を用いるのも、
そうした歴史的背景に基づいています。

我が国におけるLDの定義は、
7年の期間にわたる検討の末にまとめられました。
以下が、その教育的定義です。

学習障害とは、基本的には全般的な知的発達に遅れはないが、聞く、話す、読む、書く、計算する又は推論する能力のうち特定のものの習得と使用に著しい困難を示す様々な状態を指すものである。学習障害は、その原因として、中枢神経系に何らかの機能障害があると推定されるが、視覚障害、聴覚障害、知的障害、情緒障害などの障害や、環境的な要因が直接の原因となるものではない。

LD 教育的定義

LDの定義のポイント

この定義のポイントは
①全般的な知的発達に遅れがない
②聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する
などの力に困難がる(認知的偏りの存在)
③中枢神経系(脳)の機能障害が原因と推測される
④他の障害や環境的要因では説明できない
の4点が挙げられます。

医学的領域の診断に
広く用いられているDSM-5では
知的発達に遅れがないにも関わらず、
読み書きや算数に著しい困難を示す子ども達を
限局性学習症:SLDと定義しています。

LDの判断基準

LDの判断基準は、次の4つのポイントからなり、
これらを併せて総合的に判断を行うとされています。

①知的能力の評価(全般的な知能の遅れがないことの角煮にゃ、個人内の認知能力のアンバランスがあるかどうか)
②国語・算数等の基礎能力の評価(学習能力と学習の達成のアンバランス)
③医学的な評価(中枢神経系の機能障害のサインが見られるかどうか)
④他の障害や環境的な要因から説明できないこと

LDの判断基準 4つのポイント

また、1人の子どもの中で、
「どの能力が高く、どの能力が弱いか」
という個人が有する能力間の差を
「個人内差」と呼びます。

この個人内差には3つのタイプがあり、
学校での学習に著しい
困難を示す子どもがいた場合、
個人内差の特徴の有無が
その子のLDかどうかの判断の根拠となります。

①WISC等の心理検査で測定した認知能力と
 学習の達成度の間に見られる個人内差
②認知能力間に見られる個人内差
③学習の達成度間の個人内差

個人内差の3つのタイプ

その点で重要となるのが、
心理的アセスメントと教育的アセスメントです。
WISCをはじめとする知能検査を用いて
子どもの知的発達の全般的水準や
認知機能の状態を客観的に測定します。

子どもの認知特性を
把握していく上で、
心理的アセスメントは不可欠なものです。

また、
子どものノートやプリント、テスト、製作品
に見られる特徴の分析などを通じた
教育的アセスメントも、
子どもの特性を把握する上で非常に重要です。

子どもの特性や困難の全体像を把握するためには、
心理的アセスメントと教育的アセスメントが必要であり、
両者の結果を合わせて総合的に判断してこそ、
真に効果的な支援につなげることができます。

LDの指導  

LDの子どもへの指導は、
聞く、話す、読む、書く、計算する、推論する
という6つの領域への
つまずきへの対応が中心となります。
その上で、困難から生じる
学習面、行動面、生活面
のつまずきへの対応が必要となってきます。

LDの指導 ①困難の原因の分析

LDの指導でまず重要なのは
「なぜ、そのような困難が生じているのか」
という困難の原因の分析と、
それに基づく適切な指導の手立ての立案です。

「漢字が書けない」
という問題をひとつとっても、
形態認知の困難
部分と全体の統合の困難
文字の意味理解の困難
微細運動の不器用さ…
等、様々な原因が考えられます。

そうした困難の分析を行うことなく、ただ
「がんばって、書き写し練習をしましょう」
というだけでは、効果も上がらず、
子どもにとっては苦行になるだけです。
LDの指導では、まず、
困難の分析と困難の原因に応じた指導の手立て
を考えることが大切です。

LDの指導 ②子どもの認知特性に応じた指導

LDの子どもは、
認知機能の個人内差が
きわめて大きい子どもです。

学習面の指導では、
その子のどの能力が高く、
どの能力が弱いかを考えて、
・強い力を学習に活かす
・苦手な部分をどう補うか考える
・別の方法で代替する(ICTの活動など)を考える
 ことが大切です。

併せ有する困難を考慮した指導

LDの子どもが併せ有する困難には、
ADHDなど他の障害の重複と、
学習面の困難から生じる二次的な問題
(学習意欲の喪失、自己肯定感の低下など)
の2つがあります。

前者に対しては、
その特性から応じた合理的な配慮が必要です。
後者に対しては、
学習指導の前に心理面へのアプローチが
必要です。

適切な指導の場の選択

指導を行う場は、
指導の内容によって
アプローチが異なってきます。
子どもの困難への対応は、

・通常の学級での担任の個別的配慮で可能なのか
・補助教員や支援員の配置等の
 ティームティーチングが必要なのか
・通級指導教室のような
 個別的支援の場も用意すべきなのか

それぞれ
個別の指導計画の立案にあたって
検討することが大切です。                                                                                                                                                                                                                                                                          

LDの子どもの困り感の根っこにあるもの

LDの子どもには、
上記までの説明から分かるように
様々な特性から判断し、
個人に応じたアプローチをしていく
必要があります。

いずれにしても、
「できそうに見えて、できない」
「できるけど、燃費が悪い」
といった、
困り感の根っこ
のようなものが存在します。

よって、
人前で恥をかかせないように配慮する
燃費の悪さへの対処をする
とよいです。
量を減らしたり、やりがいを演出したりする
など、日々の学校生活でできる
自己肯定感や自尊感情の低下を防ぐ
手立てや支援を我々は行っていかなければ
なりません。

今日の記事は以上になります。
最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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