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虫垂っていらない子?

最近、腸内細菌が及ぼす影響についての論文や講演会が増えてきた気がする。そんな腸内環境に虫垂が関係しているかも、ってお話。

お腹が痛い人を見た時、何の病気かを医者はどのように推測しているか。


ヒントになるのが、痛みの場所と、痛みの種類である。
痛みは炎症を起こしていることによるものがほとんどなので、痛みがある場所から炎症を起こしている臓器を考え、どんな痛みなのか、ずーっと同じ痛みが続いているのか、痛みの場所が変わるのか、痛みに波があるのかなどから病気の種類や重症度を推測している。

鳩尾(みぞおち)から右下腹に痛みが移動する

典型的な虫垂炎の症状だ。いわゆる「もうちょう」だ。この虫垂炎、治療としては、①抗生物質で散らす方法、②手術で切除する方法、がある。
昔から虫垂は進化の過程における遺残器官であり、今の人体には無用のものと思われてきた。ただ、最近の研究により、虫垂には腸内環境を保つ役割があるらしいことが分かってきた。

虫垂の働き

虫垂の働きを一言で表すなら、「細菌の貯蔵庫」である。何らかの要因で腸内細菌が乱れた時、消化管の恒常性(一定に保つこと)に関与していると報告されている。
この働きのためか、虫垂を手術で切ると、ある種の病気が悪化するとされていた。例を挙げると、免疫によって腸に炎症が起きるクローン病や慢性腎臓病、急性心筋梗塞、精神疾患などである。ただし、免疫による腸の炎症の中でも、潰瘍性大腸炎は虫垂を切ると逆に症状が軽くなるとの報告もある。この潰瘍性大腸炎は、本当に謎が多い。昨日の記事にも書いたが、一般的に悪とされる喫煙で症状が軽くなる可能性もあるらしい。

虫垂炎治療

今後は、虫垂炎の治療として、抗菌薬による治療が主流になっていき、手術するのは穴が開いたりするような、重症な場合に限られていくだろう。でも新たな発見で、やっぱり虫垂は不要でした、となる可能性もあることを考える。治療方針が変わるようなら、追記する予定。 

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