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ステラおばさんじゃねーよっ‼️89.初恋の萌(きざし)①〜光のバブル

👆ステラおばさんじゃねーよっ‼️89.初恋の萌(きざし)①〜シャンパン は、こちら。




🍪 超・救急車



「コーヒー、ご馳走様でした。では俺はこのあと別アポあるんで失敬するよ。萌シャン、後はよろしく!!」

若森は萌へ告げると、カイワレ宅から颯爽と出ていった。

前ぶれなく取り残されたふたりは呆気に取られ、何から話せば良いのか分からず互いに下を向いた。

沈黙は、淹れたばかりのコーヒーの湯気が消え失せるくらい続いた。

数分後、ふたりの間に横たわる重い空気を打ち砕いたのはカイワレだった。

「あの、質問しても良いですか?」

「あ、はい。なんなりとどうぞ」

萌はたどたどしく応えた。

「萌シャン…て、あの有名シャンパンが愛称の由来ですか?」

モエシャンと言えば、高級シャンパンメーカーの《モエ・エ・シャンドン》の略称である。

高級酒をあまり嗜(たしな)まないカイワレは、若森とそれを開けた時に散々その銘柄のウンチクを聞かされたので、シャンパン由来の愛称だろうと見当はついた。

しかしモエシャンのきらびやかなイメージとはかけ離れ、萌は控えめでおっとりとした印象だった。

みるみる真っ赤になりゆく顔を、萌は両手で覆った。

「恥ずかしいんです。若森さんが、【萌シャンです】って自己紹介したら初対面のひとでも一発で覚えてくれるから…って仰るのですが、やっぱり自分で言うのはこっぱずかしくてですね」

指のすきまから垣間見せる涙目の萌から、ちいさく光が溢(こぼ)れているように見える。

眩しさを手で振り払い、萌を慰めるためにカイワレは若森をなじりだす。

「あの、ダジャレジジイ〜!…俺、若森さんとは7年くらいの付き合いなんですが、人をおちょくるの、大好きなんですよ!!萌サンもあの人の言う事をまともに受け止めなくて大丈夫ですよ。90%おふざけ、10%酒好きで出来ているタダのオッサンですからね、若森さん」

笑い呆れながら伝えると、ようやく萌の緊張も解けて自然と笑顔になり、

「仲、いいんですね」

と言い、節目がちな目元にはじめて笑みがこぼれた瞬間、萌全体から光のバブルが弾け出した。

え?!何、これ?!…

何度か目をこすり、何度も彼女を見直すカイワレ。

笑顔のままの萌自身がそれを発泡させている。

その光景は今までに見た事もなく、感情は昂り、カイワレの体温を急激に沸騰させた。

すると急に白目をむき、カイワレはフローリングの床にバタンと大きな音を立て崩れた。

「あれ?!カイワレさん、どうしましたか?大丈夫ですか??」

萌はカイワレの崩落に一瞬とまどったが、体格差のあるカイワレをどうにか仰向けにし額に手を当てた。

すっごい熱!…どうしよう…とりあえず応急処置しないと!!

瞬時に浴室へタオルを探しに行こうとした。

けれど初来訪の先生宅の間取りなんて把握している訳がない。

申し訳なさげに扉をひとつひとつ開閉し部屋の状況を確認した。

4つめの扉でやっと浴室につながる洗面台を発見する事ができた。

そこからタオルを数枚拝借し、1枚は洗面台の水で濡らした。

萌はようやく、カイワレの額に濡れタオルを置いた。

細く開いていた窓も閉めた。

生ぬるい風はいつしか冷たさを帯び、悪寒を感じさせる程にひんやりとしていた。

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