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映画「THE FIRST SLAM DUNK」鑑賞レビュー 家族の再出発物語である必要性を問うー

スラムダンク世代の中年おっさんが年末休みの暇を埋めるべく、現在ヒットしてる「THE FIRST SLAM DUNK」を見てきましたので鑑賞レビューです。

師走の忙しい中、見やすい座席をチョイスしたく、”早起きは三文の得”を実践して時間のやりくりをするのがベターと判断が組み合わさり朝イチ9:00の開演の上映時間でIMAXシアターを特等席をチョイス。


ー事前情報ー

 原作は人気絶頂でジャンプ連載を一気に駆け抜けた連載・アニメの放送終了から実に26年、当時の読者は30歳オーバー、アラウンド中央値でも45歳オーバーのはず。テレビアニメでは放送と映像化されてない「山王戦」を現代の技術アニメーションで甦るとのこと。監督・脚本・監修も原作の井上先生が指揮をとる。作品自体は原作準拠で進むので安心感を持って視聴が期待できる。

井上先生が『バカボンド』と『リアル』で漫画家、作家表現者として何段もステージも上がり、その経験値を踏まえての続編なので物語の深みに期待して映画に臨んだ。ポップコーンも購入して準備は万全。

前段 ポジション

 私は世代ど真ん中、ティーンエイジの時夢中になって読んだ。いわゆる原作既読組。

バカボンドのファンです。
そして原作至上主義者ではありません。
アニメは数回オンエアで見ただけです。ほぼ記憶にない。

声優交代も容認派。
騒ぐほどのことなのか甚だ疑問。

先に結論。

 正月映画のチョイスとしては正解。
家族でみるにはNOTチョイス、
すずめの戸締まりがカップル家族向け。
バットチョイスはアバター2。

良作です。良プラスと言い切っていいでしょう。

但し、一元さんと既読組、
オールドファンではオモイや感想は異なると思います。

大傑作とはいかないが、
お金を払って見ても損したオモイはしない。
大人も無理なく見れるアニメ映画。

ご新規さんを取り組む気配は弱く、
新規勢、原作勢に向けた多くのメッセージ性の強い映画。

原作当時の思い出込みのカタルシスは少ない。
アバター2とは異なるCG表現の映像表現の進化と
物語の2つの核となる”親子・家族の再出発物語””山王戦の天王山”を余すことなく映像化に成功してます。

スポーツアニメの興奮とクロスする二つのストーリーを堪能できます。

以下感想レビュー(若干ネタバレあり)

ー冒頭ー

宮城リョータをフォーカスし物語が幕をあげる。本編映画の主人公は宮城リョータなのだ。まず、この驚きを持って続けざまオープニングのサウンドが鳴り、手書き風味の絵面からCGモデリングされた各キャラクターに変容して行き舞台は山王戦に移行する。

山王メンバーが出揃うと手書き風演出と相まって迫力が凄い、THEラスボス感圧巻の開幕です。

時系列が再び宮城家に移る。

宮城にはバスケの上手な兄がおり海難事故で失っている事が判明し、家族は長男の記憶を忘却できずに家族全員がトラウマを抱えたまま生活してきた。

舞台は再び試合会場に移り山王戦のホイッスルが鳴る。

試合と宮城リョータと宮城家の過程を丁寧に振り返りが交互に描かれていくのです。

宮城がどのような経緯で神奈川に引っ越したのか、小学生時代などのバスケのシーンなど見どころがある。母親が勇気を持って次男リョータのミニバスケ大会に応援にきてるシーンなどが入る。

中盤以降とクライマックス

原作ベースを忠実に最新CG技術のモデリングされたキャラ達がバスケスポーツそのものを見てるような錯覚になる。応援シーンやバスケの臨場感が実写のような、アニメのような中間で表現され何ともいえん。

監督自身がバスケ経験者であるからこそ、細かなところにも音のこだわりが散りばめられていて、コンクリートでボールを突くとパァーンパァーンと鳴る高い音と、体育館でボールを突くとダムダムと鳴る低い音も忠実に使い分けられています。

ロトスコープの技術も進化しており、数年前のCGアニメーションと雲泥の差。CGと技法がさらに組み合わさってアニメはどこに向かってるのかさえ考えさせるには十分だった。

ロトスコープとは
モデルの動きをカメラで撮影し、それをトレースしてアニメーションにする手法。マックス・フライシャーにより考案された。ロトスコープは歴史的に議論の的となっており、実写を用いるがゆえに純粋なる運動の創造ではないという批判をつねに浴びてきた。撮影の手間と機材の用意を考慮すれば、非常に贅沢な制作方法と言えるが、近年はデジタルアニメの技術向上などにより、インディーズのアニメにも時折使用される。

また、ライブアクションモデルによる演技を完全にトレースするのではなく、あくまでアニメーションを作成するための参考に留めておくといった場合もある。

Wikipediaより引用

各キャラクターの葛藤なども追加要素で散りばめられえており、連載時のギャグ要素は省略されて雰囲気を壊さずに進行する。

あくまでも試合の映像化なので、バスケットの凄さとか楽しさは皆無であり原作どおりのイメージした動きをトレースしていくだけ。ここは人によってはつまらなく、眠くなる人もいてもおかしくない。合間に連載時には省略された挟む宮城と三井揉め事一部始終のドラマで埋める。

安西先生のタプタプなどは現代のCG技術じゃなきゃ再現できないリアルな表現などもある。

試合はクライマックスへ向かい、名場面シーンの連続を見事な映像化にする。これが描きたかったアニメ映像だといわんばかりの作画と動画アングルがヌルヌルする。

宮城家の再出発に関して

私は子を持つ親になった。
スラムダンクを当時読んでた人の多くが大人になり親になってる。はたして、我が子を亡くした親の気持ちを理解できるわけがない。我が子が足をちょっと擦りむいただけで心が痛む。それほど、親は子を思うのだ。まして、我が子が亡くなったとなれば想像を超えるトラウマになると思う。

それでも、残された者、家族は生きて行かなければならない。家族の再出発というテーマを扱うにはスラムダンクという題材にぶち込む必要があったのだろうか。井上先生が描きたかったリョータのバックボーンを深く重いものにする必要があったのだろうか。あまりにもエモーショナルすぎる。

バカボンド、リアルと後者は社会性、前者は生死を司る剣士を題材にしてる。作家性を十分に発揮してる先生だからこそ、別作品でこのテーマをモチーフにしてもよかったのではないだろうか。

エンディング(ネタバレあり)に関して

最後にエンディングにおいて
元・山王工業高校バスケ部のエースであり、アメリカへと渡りバスケを続ける沢北栄治と、同じく渡米し沢北とのマッチアップが実現した同学年のリョータの姿でした。

え、宮城が!ってなります。ルカワより先にアメリカ行きになってる。未来軸で描かれてる時点でこれは強いメッセージ性。

宮城は身長が低いので、あえて宮城を意図的にラストカットにもってメッセージをコメたと思っていいでしょう。

それは、日本のプロバスケットボール選手であり、“日本人初のNBAプレーヤー”となったという実績を持つ田臥勇太その人です。

秋田県立能代工業高校(山王工業高校とモデルとされています)のスタメンとして3年連続でインターハイ・国体、全国高校選抜の3大タイトルを制し、史上初の「9冠」を達成した田臥勇太。その後のアメリカのブリガムヤング大学・ハワイ校への留学時代、スーパーリーグでの国内プロ入り後においても輝かしい成績を残します。

ついにはフェニックス・サンズとの契約により、人気・実力ともに世界最高のバスケットボールリーグ「NBA」に進出。それまで日系アメリカ人選手は存在していたものの、“日本人のNBAプレーヤー”は田臥が初となりました。

チビでもNBA目指せるメッセージをあえていれたのではないでしょうか。


まとめ

宮城家の再出発、バスケの山王戦、アニメ表現の新機軸としてのロトスコープ表現、名シーンの映像化と見どころは満載。

東宝の底力をまざまざと見せつけてきたなーって感じでした。

「諦めたら試合終了ですよ」のワードマジックに取り憑かれて思考停止の大人たちとは違う今のZ世帯には言いたい。

宮城家が過去を受容し、過去を乗り越えて今を生きていく姿に感情を揺さぶられる。

どうしようもないことはどうしようにもないのである。

諦めていいんだよ、諦めて次行こうかが正解。
諦めてさっさと退いた方が健全だって事もある。

井上先生は新しい基軸となるメッセージを込めて、
二つの物語を映画に込めた。

縛られ続ける事なかれだ。


補足
ジャイアンがジャイアンボイスでないのも良かった。
タイトル間違えっちゃた。。。時間ある時に修正していきます。

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