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春を喜び、春を祝う、春の行いと詩のはなし

毎年さくらの花びらを掴むために、木の下で必死になる。上ばかりを見て右往左往しているわけで、怪しいよなと思いながらも、毎年恒例の"おまじない"になっていてやめられない。

花びらつかめたらいいことあるよって、心の中で自分に言い聞かせてきた。ラッキーくらいの軽いノリ。とはいえ、毎年必死に通称「花びらキャッチ」を行っている。

いつから始めたのだろうと思い返すけれど思い出せない。夫と出会った時にはすでにやっていたから、10年以上はやっている春の個人的な行い。

2023年4月1日@駅前

病院の帰り道、ふわっと生温い風が通り、見事な花吹雪に遭遇した。風が吹くと、花びらは一度空高くに舞い上がる。そしてひらひらと自由に落ちてくる。花びらが舞い踊っていた。

手のひらを上に向けてただ立ってみたら、花びらがふわりと手のひらにのった。花びらを1枚つかまえた。花吹雪の下に、ただ立っていただけなのに。

ただそこにいるだけでいいんだよって、生きてるだけで祝福されてるみたいな気持ちになった。なにかを掴もうと必死にならなくても、いまを目の前にあるものを大事に積み重ねていけばそれでいいのかもしれないなと思う、2023春の記録。


そんな春の祝福を、じんわり広げてくれるような本に出会った。池田彩乃さんの詩集。

池田彩乃『春に還る』

「春」で思い浮かぶ、ひとの想いの数々。うれしさ、さみしさ、せつなさ、こわさ、かなしさ、たのしみ、どきどき。それらに想いを馳せながら、わたしは春が到来した喜びを、なんどもなんども噛み締めてしまう。隙間風の入るさむい家に住んでいるからかもしれない。雪国じゃないのに冬が厳しい古民家暮らしの現実。ここ数年春が本当にうれしい。身体中が喜んでいる。

詩集『春に還る』。さくらの花びらみたいな色のふわりとした紙が、糸で綴られている。春の喜びを重ね合わせて届けてくれるみたい。

はじめて開いたとき、病と闘い今日を懸命に生きる大好きな先輩の顔が浮かんだ。そのひとにこの一冊を届けることにした。今日を、いまを生きていることに、お祝いの花吹雪を舞わせたいと思った。そして自分用にもう一冊注文した、ちゃっかり。

この春、なんどもなんどもページを開いている。そしてよく先輩の顔を思い出している。元気かな。

来年の春に開いたら、どんな気持ちになるのだろう。それもまた楽しみ。まもなく初夏の気配。

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