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日本の音楽の"ダサさ"に無頓着な私たち

「日本の音楽」って、何なんでしょう?
10年以上考えてきていますが、まだこれといった手応えがありません。
いったんの所信表明、現在の私の音楽観を表明します。
論旨がまとまっていない感がありますが、ご容赦ください。

なお、歴史的事実や研究結果と異なる認識が書かれている場合もあるかもしれません。
その際は、その旨Twitterなどでご連絡ください。
ぜひ勉強したいです。

①イギリスの陽キャは50年前のヒット曲を歌えていた

高校のとき、サマースクールでイギリスに2週間ほど過ごしました。
そこではみんなビートルズを知っていました。
クラスの陽キャ女子が"Come Together"を歌っていました。

"Come Together"、1969年の曲です。
1969年の日本のヒット曲って、ご存知ですか?

僕に歌える曲は、ひとつもありません。

「なんで昔の洋楽は聞けるし歌えるんやろう」
「昔の日本の曲、ダサくてよう聞いてられん。このダサさが味なのか?」
「まだ太鼓とか三味線とかやったら、"ワールドミュージック"として聞けるな」

……こういう思いを、僕は10年以上持ち続けています。

②"Get Lucky"は日本でトップヒットにはならないだろうし、"恋するフォーチュンクッキー"もアメリカではハネへんやろう 

海外のヒット曲と、日本のヒット曲には明らかな違いを感じます。
たとえば"Get Lucky"。

このメロディ、日本でヒットする気がしないんですよね。

逆に、同じ2013年の"恋するフォーチュンクッキー"。

これも、少なくともアメリカではヒットしなさそうな気がします。
アメリカっぽさを念頭に置いているだろうに。

③日本の音楽の"ダサさ"なのか"味"なのか、それは何なのか知りたい

リズム、メロディ、ハーモニー、サウンド、
"違う"ことだけはわかるけど、どう違うのかはっきり言葉にできない"何か"。
それは、おそらく、古い日本の曲のダサさにつながる何か。
結局今の僕たちもどこかで追い求めている何か、なんだと思います。

その正体も何かよくわからないまま"ダサい""かっこいい"と言うのは、
まず古い音楽に失礼("こういうところがダサい"とはっきり言うのが礼儀)だし、
自分たちの"かっこよさ"も薄っぺらくしてしまうんじゃないか。
……こういう思いを、僕は10年以上持ち続けています。

④知ろうとした結果、この国は自分たちの音楽をうまく受け継げなかったのだろうと思っている

ダサくない"日本の音楽"を求めつつ、そこに浸かり切ることもできず、
わらべ唄、民謡、戦前歌謡、端唄をかじりながら楽譜とにらめっこしてきて早10年。
いまの認識を列挙します。
※「こんな話を聞いた気がする」の寄せ集めなので、信じ込まないでください

・音楽においては、美術の岡倉天心-フェノロサのような評価者が現れず「日本の音楽は俗なもの」という認識になってしまった
・アイルランド民謡がペンタトニックだったため、「ダイニホンテイコク」という架空の国にあらまほしき「ウタ」として輸入され「文部省唱歌」なるものが成立
・そんななかも、戦前や1960年代ぐらいまでは江戸からの三味線音楽の伝統がまだ残っていた
・戦後のアメリカ資本文化の流入のなかで、アメリカを真似たが真似きれない音楽が流行(=1969年のヒット曲。)アメリカ音楽の本当にかっこいいポイントを真似しきれず外側だけ似せて、日本伝統音楽の伝統を脱臭しつつ継受した
・1990年代以降、ユーロビートの影響等も受けて「J-POP」なる様式を成立させる
・1990年代以降、アメリカのメインストリームはヒップホップが席巻するが、語学の壁に加え"音楽的な好み"の壁があり、以降音楽的な鎖国状態に陥る
・なんとなくネオソウルだの音楽的に"高度"なことをやろうとするが、それは音楽人たちの個人的趣味であり、聴衆の心を揺さぶる主要な要素にはなっていない(聴衆は音楽人をアイドル視したり、何らかのタイアップだからそれを"よい"と信じているだけ)

この日本の音楽、とくに明治以降のポピュラー音楽について、
昭和の当事者も多くが草葉の陰に入りつつある今、そろそろ総括が必要だと思います。

⑤「日本のルーツ・ミュージック」をたどりたい、受け継ぎたい

クラシックをたどるとグレゴリオ聖歌があります。
ロックをたどるとブルースが、アフリカ音楽があります。
J-POPは、何かたどれますか?

古い国といいつつ、その音楽をきわめて歴史の浅い根無し草にしてしまっている。
そんな感覚があります。

"伝統音楽"というとすぐに雅楽までトンでしまう。
地元の祭りの音もわからない。
祖父母、曽祖父母に聞こえていた風景が、僕にはもう聞こえていない。
そのことが、無性に悔しいし恥ずかしいのです。

聖歌やブルースにあたる古層の文化で、いまもなお生き続けているものは、
ほぼこの国にはないようにも感じます。
かろうじてわらべ唄、音頭、歌舞伎、能狂言、雅楽、とかでしょうか……

それでも、誇れる、恥じない音楽をやりたいんです。
自分は結局生まれ育ちが「ニホン」、ゲーム音楽とJ-Popとクラシックの国生まれなのでしょう。
祖父母の代に滅びた「日本」には、追いつける日は来ないのでしょう。
それでも追いかけることはできるし、追いかけることは無駄ではないと信じています。



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