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【バベットの晩餐会・心が解放される時】

夏の猛烈な熱波が過ぎたあとは、あっと言う間に肌寒い秋風の季節が到来のオランダです。

この季節になると見たくなる映画「バベットの晩餐会」について語ってみましょう。

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デンマーク映画です。信仰にのっとった禁欲的な生活を送る19世紀後半の小さな漁村が舞台です。

ある信仰の創始者である父のもとで育てられた美しい姉妹をめぐり、物語が進行していきます。

質素で閉鎖的な村の描写が淡々と美しく描かれていて、全てにおいて控えめで静謐な描写が続きます。スクリーンに映し出される色もグレイッシュなトーンで統一され、静かな美しさを表現しています。

やがて、バベットというフランスのパリコミューンで全てを失った女性が、この美人姉妹のもとにやってきて家政婦として住み込み始めます。彼女の持つ人間らしい情緒が、村の静けさを際立たせます。

乾パンを水とビールに漬けたものと干した魚をお湯で戻して切ったもの。それが村人の普段の質素な食事。。

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そんな時、パリからの連絡で宝くじで1万フランを当てたことを知るバベット・・・♡

美しき姉妹の亡き父の生誕100年を祝う食卓を準備したい、と姉妹たちに願い出るのです。

パリで本格フレンチの食材を手にいれるためにしばらくの休暇を申し出るバベット。

ウミガメや、うずらや牛の頭など、これまで見たこともないような恐ろしい食材(?)をたんまり抱えて帰ってきたバベットを見て、村人たちは仰天し、固く団結し、約束を交わします。

それからはもう映画を観てください、と言いたいのですが、この先のシーンの見どころを3つ挙げてみましょう。(これから先はちょいネタバレ気味ですので、映画をご覧になる方は読まない方が良いかもしれません。ご注意を!)


見どころ☆その1 料理のシーン

それまでの映像のトーンとは少し違い、動きが出てきます。

100年以上前の素朴なキッチンで火をおこし、無駄のない動作で数々の食材を使い、伝統的手法にてご馳走を作り始めるバベットなのですが、このシーンが凄く美しくて、温かくて、バベットのプロフェッショナルとしての誇りを存分に感じます。

古い調理器具はシンプルだけど高い品質のもので、見るだけで幸せな気分に。

そして戦々恐々と静かに待っている村人と、真心を込めて料理をするバベットとの対比がまた素晴らしい。こんなに丁寧に作られたお料理、どんな味がするんだろう?と本当にワクワクして猛烈にお腹がすきます。


見どころ☆その2 料理とお酒とテーブルのしつらえ

料理は是非もう映画を見て欲しい!ので、ワインについて。

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フレンチ料理一品一品に合うワインのチョイスは
アペリティフのシェリーから
シャンパン(ヴーヴ・クリコ)
赤ワイン(クロ・ヴージョ)、
チーズ
デザート
別室に移りコーヒーとコニャック・・・♡

バベットの料理への情熱を通して、フランス人がどれほどワイン好きか、ワインと食事との組み合わせに如何に心を砕いているか、がよく分かります。そして宝くじに当たったからこその奮発ぶりが気持ちいい!食材もものすご~く贅沢です。

そして当時の食事をサーブするワイングラス、お皿、銀盆。。。お皿はリモージュのアビランドでしょうか??

テーブルはシンプルな白いテーブルクロスで覆われ、中央にアイボリー色のキャンドルが何本も並びます。そのキャンドルの光がグラス製のキャンドルホルダーやワイングラスに反射してとても美しい。シンプルだけれど品のあるテーブルセッティングです。

見どころ☆その3 食卓を囲み美味しいものを食べると自分が解放される

さあ、そして見どころその3。
あまりにも美味しいお料理と禁断のお酒の数々に、閉鎖的な人々の心がドンドン解放されていく様子がたまりません。

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そう、禁欲的な生活をしてきた人々が、ひとくちひとくち味わうたびに笑顔をこぼします。それも最初はわずかな笑顔。。。

遠慮がちな笑顔から次第に心がほぐれていき、静かに食事を摂るのが美徳だったのに会話が始まり、イキイキと心の交流を始めていきます。その少しずつ自分を解放していく様がとても魅力的で、「食」を通して真心が届き、思わず口元が緩み自分の感情を露出させることに抵抗がなくなっていく描き方が、心理的な解放を表し本当に秀逸だと思わされます。

少し肌寒くなり始める頃、ぬくもりを感じたい時には是非ご覧いただきたい良質な作品です。美味しい食事を味わう感覚に襲われますよ。


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