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噂の社長秘書。
私はまる。ワールド・ブルー株式会社の広報部長。
社内で、社長秘書のゆにさんが噂になっている。
最初にその噂を聞いたのは、広報部の部下からだった。
「社長と秘書のゆにさん、昨日の朝2人で一緒にいるところを見た人がいるんですって」
驚きつつも、友人でもあるゆにさんをフォローした。
「え、秘書だから社長と一緒にいても全然問題ないじゃないですか?」
すると、部下は勢い込んでこう言いだした。
「会社の近くの『喫茶 花』で、2人でモーニング食べてたそうですよ!いい感じで」
他の部下まで集まってきて、盛り上がり始めた。
「ゆにさんって、社長のことをチャーミングって言ったから秘書課配属になったんですよね。社長のお気に入りなのかな」
「そうだとしたら、2人でいるって意味深!気になるぅ」
(ゆにさん、何やってるの?大騒ぎになっちゃってるじゃない!これは真相をちゃんと聞かなきゃ)
慌てて広報部を抜け出しこっそりゆにさんに連絡し、この日の夕飯の約束を取り付けた。
夜。
会社から少し離れたイタリアンレストランへ、ゆにさんを連れて行った。
ここは日替わりランチメニューのパスタが美味しいだけでなく、レディースセットのミニデザートも好評のお店。
夜の料理もとてもおいしく、いつもお店は満員。
いつもだったら美味しい料理を楽しみにするのだが、今日は大きなミッションがある。
大好きなイタリアンに喜ぶゆにさんとは対照的に、私はどう話を切り出そうか考えていた。
「まるさん、どうしたの?なんかさっきから難しい顔してる」
ゆにさんに聞かれて、はっとした。
「ちょっとね…ゆにさんに聞きたいことがあって」
「あぁ、もしかして、社長とのこと?」
こちらから切り出すまでもなく、ゆにさんがさらりと言った。
「噂のこと、知ってるの?」
「うん。マイトンさんに前のめりで聞かれちゃったよ。おじいちゃんとはどういう関係?って」
ゆにさんは気にするそぶりも見せず、前菜を食べている。
私は続けた。
「ずいぶん噂が広まっていてね…みんな興味津々だよ」
「ふぅん。そうなんだ」
「まさかと思うけど、違うよね?」
「何が?」
「2人が付き合ってるとか、ないよね?」
するとゆにさんは、心底おかしそうに笑った。
「やだー、まるさん。なんのはなしですか。噂信じちゃったの?」
「信じてはないけど、少しだけ、もしかして…とは思ったよ」
ゆにさんは口元をふいてカトラリーを置き、姿勢を正して言った。
「社長とは、一切後ろめたいことは、ありません」
表情は真剣そのものだ。
「本当?信じていいのね?」
「もちろん」
社長が軟禁状態でかわいそうに思って、朝早くなら社員が少ないと思い、『喫茶 花』へ案内したこと。
噂になるといけないから、ゆにさんだけ会社に戻ろうとしたら、社長に誘われて朝食をともにとったこと。
お店の居心地がよくて、ついゆっくりしてしまい、2人で慌てて会社に戻ったこと。
おそらくその姿を社員に目撃されたこと。
案の定、先輩秘書に厳しく注意されたこと。
話を聞いて、やっと安堵した。
でもやはり心配だ。
「ゆにさん、誤解を招くような行動はしないほうがいいよ」
「そうだね、ちょっと脇が甘かったかな」
ゆにさんはニコニコと続けた。
「社長のこと、放っておけないんだよね。ついお世話しちゃう」
さすが世話好きのゆにさん。
「わかるけどさ。大人だからある程度節度を持たないと。変な噂が立つと困るのはゆにさんなんだから、気を付けてね」
「わかった。気を付けるよ」
…ふぅ。
この話はこれで一区切り。
さて、食事をちゃんと楽しもう。
この時はまだ、あんなことになるとは想像していなかった。
平和に毎日が過ぎていくものだと思っていた。
(続く?)
<あとがき>
短いスパンで続編を書いてしまったゆにです。
また一本、頭のネジが飛んで行った音がしました。
今回は、広報部長まるさんを担ぎ出しました。
前回の時に、噂になりそうと言われたし、喫茶店の店員さんに詮索されちゃったので、そこに乗っかってみました。
次はどうなるか…まだ決めてないです。
社長秘書シリーズ1話
社長秘書シリーズ2話
「ワールド・ブルー株式会社」とは?
「ワールドブルー物語」社長秘書近辺の人たちの記事
社長 蒼広樹さん
広報部長 まるさん(友情出演)
社長の孫 マイトンさん
『喫茶 花』マスター 小花さん
『喫茶 花』店員 波さん
最新のワールドブルー物語はこの中にあります
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