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君にしか分からなくたって、楽な道は選ぶな


今から6年ほど前。

大学の掲示板の前で、わたしは一人、立ち尽くしていた。


交換留学の選考試験の結果が貼り出されていた。

3人の枠に、申し込んだのは4人。

落ちたのは、わたしだった。


周りで友人たちが次々に選考に通った喜びを爆発させている中で、

友人たちの夢が叶ったことは嬉しいのに、

自分の結果が悔しくて、惨めでしかたなくて。


掲示の下に小さく

「定員に達しなかった大学については二次募集をかけます。」という一文があることに気づいたけれど

もうそれ以上見ていられなくて、まっすぐ家に帰った。



家に着いた瞬間、悔しさと情けなさとでぶわっと涙が出てきた。

大学に入ってまで泣くことなんてあるのかな、と思ってたけど、全然あるじゃん。

最善を尽くしたつもりだった。でもきっと、足りていなかったんだ。


ひとしきり泣いて、少し落ち着いた頭に浮かんだのは、

去り際に見た二次募集の案内。



違う大学でも、留学という夢が叶えられるならチャレンジしてみる?

でも、もうあんな思いしたくない。また落ちたらどうやって立ち直れっていうんだ。



思考はグルグル、堂々巡り。

ああだめだ、気分でも変えなきゃ、と音楽アプリを立ち上げる。

とはいえ何を聴きたい気分かもよく分からなくて、

たまたま流れてきたおすすめを適当に再生することにした。


やれるだけやり切ったかなんて自分しかわからない
だから自分に嘘つくな 自分にはズルするな


え、と思わず声が出た。なんというタイミングだろう。

思わずそのまま続きに耳を傾けていると、やがてサビらしき部分が流れ出す。


君にしかわからなくたって 楽な道は選ぶな
最後に報われるのは、逃げずにいた自分自身だから


2回も惨めな思いをしたくないから、また試験に落ちるのが怖いから、諦めよう。

そう思いかけていた自分の頬をピシャリ、叩かれたような気がした。

もしそんな選択をしたら、きっと将来のわたしは、

あの時、わかっていて楽な道を選んだことをずっとずっと覚えていて、

ずっとずっと後悔する。


気づいたら、曲は終わっていて。

さっきまでモヤモヤしていた気持ちが、はっきりとした輪郭を描いた。


…やっぱり、もう1回チャレンジしよう。



それから数日後、二次募集を行う大学のリストを見に行くと、

その中に、前から少し気になっていた大学が含まれていることに気がついた。

一次募集では誰も応募者がいなかったらしい。幸いにも応募資格も満たしている。

いろいろ他の大学も見てみたけれど、最終的には自分の直感を信じてその大学を選ぶことにした。


友人たちにも、二次募集にチャレンジしてみる、と伝えた。

皆、全力で応援してくれた。素敵な仲間を持ったなあと思う。


面接当日、

キャンパスに向かうわたしのイヤホンから流れるのは、もちろんこの曲だった。


ーーーーー


結果、わたしはその大学への交換留学生となることができ、

新しい土地で、かけがえのない1年間を過ごすことができた。

最初に希望していた大学よりもずっと小規模で、田舎の大学だったけれど、

その分地域に密着した暮らしが新鮮で、面白くて、

最初の大学に落ちたのは、この大学に行くためだったのかな、と思えるようにもなった。


あの時、楽な道を選んでいたら、こんな経験はできなかったから。

投げ出さなかった自分を少しは誇りに思えるし、

あの時、たまたま出会えた

阿部真央さんの「Believe in yourself」は、これからもずっと、私の勝負曲だ。


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