漫画みたいな毎日。「ルービックキューブと長男。」
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漫画みたいな毎日。「ルービックキューブと長男。」

やなぎだ けいこ

長男が、ルービックキューブにハマっている。

以前、お祭りでくじ引きか何かでもらったルービックキューブがあったが、然程、熱心ではなった。

何かにハマる時というのは、前触れもなく、突然やってくるのだ。

長男がトランペットのレッスンから帰ってくると、珍しくやや興奮気味に話し始めた。

「トランペットの先生、最近、ルービックキューブの練習してるんだって!世界で一番凄い人は4秒で6面揃えるって動画、見せてもらったんだ!」

そして、自分の引き出しから、ずっと使っていなかったルービックキューブを取り出し、せっせとやり始める。

ルービックキューブ、私が子どもの頃にも流行っていたなぁ、と懐かしく思っいつつ、しかし、4秒で6面揃えるってどういったことなのだろう?!

正に、「目にも留まらぬ早業」なのだろう。

長男が本を読んでいる時に、末娘が「これ貸して♪」とルービックキューブを手にした。機嫌の良かった長男は「いいよ。」と2つ返事。

しばらく、末娘はくるくるとルービックキューブを回していたが、飽きたのか、静かになった。

と思ったら、長男の怒る声。

「なんで、こんな事になってるの?!説明してよ!」

見ると、ルービックキューブに貼られているシールが剥がれた後、テープで留めてあった。

古いものであるし、正規のルービックキューブではなかったので、シールの角が剥がれかけていたのだろう。末娘が触っているうちに完全に剥がれてしまい、マズイ!と思ったものの、長男が怒るから、「剥がれちゃった」と言えず、自分で直そうとしたのではないかと、私と夫は推測した。

そして、それを伝えると、長男はますます激しい怒った。

「やっちゃったからって、言わないのは駄目だろ!」と。

その言い分もわかる。

でもね、本当のことを言ったら怒られる、って思ったら、そんな勇気が出ないこともある。

末娘と自分の小さい頃の姿を重ねた。

本当のことを、怖がらずに言えるには、安心した環境が必要だと私は思う。

失敗をどうリカバリーするかを、誰かが伝える必要がある。

責めることは、嘘をつくことや、隠すことを上手にしていくだろう。

してしまった失敗を、隠すのが良いと思っているわけではない。

でも、失敗したり、壊した本人は、自分でも「まずいなぁ・・・悪かったなぁ・・」と思っているのだ。それはもう、ものすごく、身体全体がギュッと縮こまってしまうような感覚なのだ。小さくなって、消えてしまいたくなるような。

謝ったら受け入れてもらえるだろうか、

謝っても怒られるかもしれない、

でも言わなくちゃ・・・・

直せたら、いいかもしれない。

末娘がどう感じていたかを言葉にして怒っている相手に伝えるには、まだ経験が少なすぎるかもしれない。

だから、これは、私の経験に基づく想像でしかない。

でも、長男に怒られる末娘の小さな身体を見ていると、自分の心も身体も、ギュッと縮こまる。


基本的には、兄弟、兄妹喧嘩に口を出さないようにしている。

どちらをフォローしても、彼等の関係性に影響すると思っているから。

4歳、8歳と年齢が離れていることもあり、当然下の弟妹は兄に敵わない。力での喧嘩では、下の人たちが視線で助けを求めたり、〈もう、止めたいけど、言えない〉ような状況になった場合には、止めに入る事もある。

今回は、長男が度を越して末娘を責め続けていたので、夫が見かねて、言った。

「誰かの失敗を、怒って、追求するのは、建設的じゃないよ。」

そして、こう続けた。

「最初から怒って、〈どうしてこうなったの?!〉なんて、強く問いただされたら、何も言えなくなっちゃうよ。

本当に原因が知りたいなら、怒りたい気持ちは、ちょっと辛抱して、聞く必要があると思うよ。

そして、次にこうなったら、ちゃんと言ってね、って言われると思えば、きっと、隠したり、嘘をつかないと思うんだけどな。

みんな、そうやって、大きくなるんだから。ちょっとだけ大きい人の方が、辛抱してやらなくちゃならないこともあるよ。」

本当にそうだと思うのだ。

次女として育った私は、正にそうだった。

勝手に触って姉の大事なものを壊したり、失くしたりしたことを、姉に正直に伝え謝ったものの、却って怒られ、許してもらえず、どうしたらいいのか途方に暮れた。

そして、次には、隠したり、嘘をつくようになった。本当の事を言うのが、怖くなってしまったのだ。

今、振り返ってみると、そこには、あったのは、こんな気持ちだったと思う。

〈大好きなお姉ちゃんに、嫌われたくない。〉

「妹は、いつも自分の居ない時にも、机の周りをいじったり、物を勝手に触ったりする!それもやめて欲しい!」と長男は怒るが、それも、〈兄たちへの憧れ〉からくる興味に他ならないのだと思う。

お兄ちゃんは、何をしているの?

お兄ちゃんは、何で遊んでいるの?

どんな本を読んで、どんな物を集めているの?

私も大きくなったらできるかな。

お兄ちゃんたちのやっているように。

同じように上手にできるかな。

末娘の視線は、いつもそんな風に、兄たちを追っている。


末娘が長男のルービックのシールを剥がしてしまった翌日。

私は、歯科受診の帰りに、一人で、ショッピングセンターの玩具売場に行った。新しいルービックキューブを買うために。

シールが剥がれたくらいで、あんなに怒って!という苛立ちもあった。でも、長男にしたら、妹は、自分の大事なものを勝手に壊した、と思っている。

公式のルービックキューブは、なんだか豪華だ。  

箱を開けると、ルービック・キューブの開発者、エルノー・ルービックさんの顔写真が載っている。面を揃えるガイドもついているようだ。シールだと剥がれてしまうから、色パネルが埋め込み式になっているではないか!

「きっと、正規のものは、動きもいいはずだよ。」

昨夜、長男が寝た後に、ルービック・キューブを買おうと思う、と私が話したら、夫がそう呟いたこともあり、クリスマス前だが、奮発した。

帰宅して、ダイニングテ-ブルの長男の場所に置いた。

長男は、「なにこれ?あ、妹のか。良かったね、買ってもらって。」と言うので、「あなたの新しいルービック・キューブだよ、今まで使ってたのは、妹に譲ってあげて。」というと、「え?いいの?」と意外そうな顔をしていた。

なんとなく、苛立ちがおさまらない私は、

「・・・今度のは、シールじゃなくて、色パネルがはめ込み式だから、簡単には壊れないと思います。」

と素っ気なく言ってしまった。

我ながら、大人気ない。

末娘は、お下がりのルービック・キューブをもらって、嬉しそうにくるくると回していた。

大好きなお兄ちゃんと同じルービック・キューブだ。


長男に伝えてみよう。

本当のことを言えないのは、大好きな人の大事なものを壊したことで、嫌われるのが、怖いって思ってるからかもしれない、と。

勝手に物を触るのも、あなたに憧れているからだよ、と。

長男は、自分が常に一番上にいるから、この気持ちが理解できるかはわかならない。

第一子にしかわからない気持ちもあると思う。

でも、弟や妹にしか、わからない「兄や姉に憧れる」気持ちがある。

どちらの言い分も、感じる気持ちも、善し悪しではない。

立場が違えば、感じ方は当然、違うのだから。

でもやっぱり、小さな人の育ちを考えるとき、〈ちょっとした辛抱〉は、大切なんだよな、と家の中でも、社会でも、大きな人である私は、反省しながら、この言葉を繰り返す。


大きい人が、ちょっとだけ、辛抱してやらなくちゃならいこともあるよね。


そして、小さな人が大きな人になった時には、小さな人に対して、ちょっとだけ辛抱してやれるようになるのだ。


こうして、循環しながら、人は育つのだと思うから。




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やなぎだ けいこ

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面白い至上主義。
やなぎだ けいこ
東京生まれ東京育ち。障害児施設・公立保育園に10年勤務後、神奈川県逗子市にて玄米おむすび専門店を立ち上げる。家族それぞれが「育つこと」を考え2011年に札幌市に移住。山にほど近い環境で、鍼灸師の夫と学校に行かない選択をしている三人の子どもたちとの「漫画みたいな毎日」。