「ビリギャル」というエナジードリンクの成分は何か?才能や努力などの論文50個以上掲載
こんにちは、トキワです。(※2万字になるのでお時間ある際にお願いします)
今回は才能と努力についてこの2-3か月で調べたことをまとめます。さしあたって本人には申し訳ございませんが、教育業界でそのテーマでよく出てくる「ビリギャル」を使います。
ところでビリギャルの本人である小林さやかさんは1988年生まれの35歳だそうで、私は1991年生まれの32歳でかなり年齢が近いです。
ビリギャルを調べてみると書籍は2013年、映画化は2015年にされてたそうですが、私自身は両方ともまったく触れておらず、知りませんでした。(著者の坪田さんの本は「人間は9タイプ」のほうを読んでいて、その方がビリギャルの著者とも知らなかった)
その頃は、アメリカに語学留学に行ってて、帰ってきてからも夜22時ぐらいまでスタートアップで働いてはスキルを磨いてて、とても忙しかったので、あまりそういったものに触れる時間がありませんでした。
元々貧困・虐待家庭で育ち、コミュ障のため学校でいじめにあい、何も武器を持ち合わせていなかったので、大学は全部教育ローンでグラフィックデザインとプログラミングを学び、それを無駄にしまいと企業で成果を出すために這いつくばっていました。
じゃあなぜビリギャルを知ったのか、と言えば、それは私自身が今年度から宇都宮市にある星の杜中学校高等学校の非常勤講師になったことをきっかけに教育業界にきたからです。
10年以上IT業界にいた人間がなぜ急に教育業界にきたかというと、元々コロナ前は海外で事業をやっていたのですが、コロナでそれが厳しくなり、コロナ禍では学校向けに事業を展開しようとし、その最中に星の杜の先生からオファーをもらったことがきっかけでした。
教育業界における「ビリギャル」の知名度はとても高く、もはやインフルエンサー。SNSでは誰かが小林さやかさんの投稿をシェアするので、私自身もさすがに知るようになります。
最近特に話題になったのは以下の投稿でしょうか。いやもう少し前に海外大学合格をSNSで知ったかもしれません。
本も映画も見てませんが、これを読んで「おお、なるほど」と思いました。これは確かに色んな人を引き付け、そしてだからこそ反感を買うんだろうなあ、と。
確か同じような文体を前もどこかで見たなあと思いふけってると、そうだ、箕輪厚介さんだと思い出し、そして彼は確か「読むエナジードリンク」と言ってました。まさにそれだ、と思いました。
つまり読むと元気になる、ということです。逆に言うと元気にしかなりません。そういう本や文章もあっても全然いいと思っています。ただし読む側が「元気になるために読む」という用法用量が守られているのかは心配になります。
一方で、私はどうしてもすんなり入ってこない性格で、「それは本当だろうか」と疑問を感じ、「~~なんじゃないだろうか」と仮説をたてて、「ちょっとこの書籍や論文読んでみるか」と検証したくなります。
なので今回も上記のnoteからビリギャルというコンテンツをエナジードリンクと例えつつ、才能と努力の関係、もしくは遺伝と環境の関係について、調べてみたのでここでまとめます。
エナジードリンクは用法用量を守って正しくお使いください!!
問い①:地頭はないのか?あるのか?
小林さやかさんに対して悪い気持ちはないですし、今回のnoteに賛成できる部分はあるのですが、ここだけは賛成できません。(それにしても地頭を言語化できる人に会ったことないって人間関係やばいですね、、、)
「地頭」という言葉を使う人で確かに根拠がない人は多いかもしれませんが、逆に小林さやかさんも「地頭が悪い子なんていない」に対する根拠がありません。
ちなみに「地頭」の意味をネットで調べると以下の意味が出てきます。
「本来の頭の良さ」という部分からするに「生まれ持ったもの」「遺伝的な知能」を考えざるを得ません。
この「地頭」について調べてみましたが、最近ビリギャルの合格した慶應義塾大学の安藤寿康先生の新しいご著書が発売されました。なんとも刺激的なタイトルです。
慶應義塾大学は2007年ごろから慶応義塾双生児研究(Keio Twin Study)を立ち上げており、安藤先生この中でかなり中心的な役割をされています。
安藤先生のご著書は上記だけではなく、過去にも多くご執筆されていますが、「昨今の遺伝子解析サービスのおかげでデータがかなり増えてきた」と上記で書かれており、おそらくほぼ最新のデータになるかと思われます。
双子、特に一卵性双生児は、遺伝が100%同じ(最近ここは議論の余地があるようですが)ため、養子などで違う環境に置かれた場合、遺伝の影響か、環境の影響かを知るのにとても多くの示唆を得ることができます。
まず上記ご著書からデータを以下に抜粋します。分かることとしては「知能(地頭)は年を経るごとに遺伝の割合が大きくなる」のと「学業成績(日本)は年を経るごとに共有環境(家庭)の割合が大きくなる」ということです。
学業成績が年を経るごとに家庭環境に依存するのはおそらく「塾に通えるかどうか」が大きいのではないかと思います。
一方で、知能(地頭)の場合、ご著書の最後のほうに言及されているのですが、「選択肢の多い自由な状態になればなるほど選択に個性(遺伝)が出る」とあります。この場合、学校による管理より大学や仕事といった自由な環境になればなるほど個性が出やすいということです。
さらに「知能(地頭)」にも2種類あり、言語性知能(Verbal IQ)と、非言語性知能(Non-verbal IQ)があります(参考)。言語性知能は、「単語の意味を答える」などのような知識・記憶力を問われる知能です。
一方で、非言語性知能(Non-verbal IQ)のほうを脳科学者・中野信子さんは「地頭(機転がきく・柔軟性など)」と定義しており、以下のように紹介しています。
というわけで地頭は明確にあります。
地頭の存在を確認せずに「地頭はない」「地頭の悪い子はいない」と言い切ってしまうのは、本人の言う通りビリギャル(小林さやかさん)に地頭がないからではないか、と思います。
じゃあ地頭が低い・無いなら社会的に成功できないのか?最低限お金を稼いだり幸せになることができないのか?というとそうではありません。ビリギャルがそうであるように。
地頭(知能 IQ)がそもそも価値があるのか?地頭以外に価値あるものは何なのか?というのが次の論点になります。
※ちなみに「遺伝率」なのですがかなり誤解の多い用語です。例えば、あるコミュニティ・集団にテストを受けてもらい、平均点が50点だったとして、とある生徒が70点でとある生徒が30点だったとします。この平均と20点の差(分散、ばらつき)が遺伝の原因が7割、環境の原因が3割、という使い方になります。もう少し詳しく知りたい人は以下をご覧ください。
問い②:地頭(知能 IQ)に価値はあるのか?
結論から言うと、地頭(知能)は「諸刃の剣」です。環境に応じて良いときもあれば悪いときもあります。知能IQこそ「用法用量正しく使う」必要があります。
(1)地頭(知能 IQ)の良いところ、得すること
まず分かりやすいので良いところから紹介します。
まとめると、IQが高いと仕事の成績がよく年収が高くなる、また陰謀論を信じづらく、差別せず、犯罪者にもなりづらく、死亡もしづらい、ということです。とても極端です笑。すごく良いかすごく悪くないかな感じします。
(2)地頭(知能 IQ)の悪いところ、損をするところ
さて、数は少ないんですが、悪いところを紹介します。良いところが極端だっただけに、こちらのほうがおそらくかなり人生全般に効いてきそうな内容です。
これは遺伝(地頭・IQ)と学力が関係なく、学力と業績が関係ないことを示しています。つまり学力は何のためのものだったのか、ということです。その割にいまだに学歴にはブランドがあります。
地頭(知能 IQ)と学力の相関はだいたい0.4~0.6ぐらいだとされています(論文、解説)。つまりIQ=学力、ではないのです。IQが低くて学力が高いことをオーバーアチーバー、IQが高くて学力が低いことをアンダーアチーバーと言います。
もちろんIQが高くて学力も高ければ、周りからの見られ方も自然です。普段の会話の相手は同じぐらいのIQの人に出会いやすいためです。
しかしオーバーアチーバーなら例えば「東大なのにこんなこともできないの」と言われたり、アンダーアチーバーなら周りに会話が合う人が少なくなってしまいます。
一見「学力が関係ないなら気にせずすぐに仕事で稼げばいい」となりそうですが、学力=一定のレベルのコミュニティへのアクセスだとすると、人間関係に苦労することが多くなるのです。そのためIQ≒学力≠業績をデメリットに挙げました。人間関係の苦労を示す研究もあります。
アイデアをすぐ出せるので起業家向きですが、仕事仲間に恵まれないと誰にも分かってくれない状態に陥ります。もし難関大学で同じぐらいのIQの人と起業できれば、分かってくれる人がいる状態で仕事をこなすことができます。
良いところで死亡率の改善を紹介しましたが、一方で、精神的なストレスを感じやすくなり、精神疾患を患いやすくなるようです。これも理解しあえる人が少ないことが原因だと思われます。
理解しあえる人が少ない理由として(1)陰謀論とまでいかなくても一般的な雑談ですぐに共感できないこと(疑問を持ってしまうなど)や、(2)日常的に探究へ時間を費やしていて人関係を築く能力の向上に時間を費やしてこなかったなどが原因なのかもしれません。
これらがIQが1番重要だとは限らない根拠となります。ここすごく大事なことです。
個人的に思うところとしては、もちろん違うIQの人と人間関係を成立させることも重要なのですが、それだけでは心の底から理解しあえる人が増えないため、受験勉強がなくても同じぐらいのIQの人と出会える場所があるともっと人生が豊かになりやすくなるのではないか、と考えています。
ここまで地頭(知能IQ)・学力・年収だけの関係図をまとめるとこんな感じになります。そもそも地頭(知能 IQ)が完全に良いわけでもなければ、学力が良いわけでもないことが分かりました。
さて、ここでビリギャルの話に戻りますが、もしビリギャルに地頭がなかったとした場合、慶應義塾大学に受かったのはどういうことなのか?考え直す必要があります。完全なオーバーアチーバーとなります。
個人的には小林さやかさんは実は遺伝的な知能が実は高いのではないかと思っており、ご本人にはぜひとも遺伝子検査と知能検査を受けてみてほしいところです(私のnote参考)。
いずれにせよ知能と学力の相関はすごく高いわけではないので、知能があったとしても無かったとしてもそれだけで受かったわけではないことが分かります。
では地頭以外に何が重要なのでしょうか?世界、ふしぎ、発見!!
補足:人生にポジティブに影響する地頭(知能 IQ)以外の遺伝要素
身体的な特徴は遺伝によるところが大きいです。例えば一重二重、鼻の高さ、顔の輪郭、肥満・脱毛、そして肌の色です。(身長は摂取できる栄養といった環境による影響もあります。)
そして以下のとても理不尽な調査もあります。
問い③:IQなど遺伝以外に何が人生にネガティブに影響するのか?
地頭・才能・遺伝の次はやっぱり「環境」の話ですね。地頭については小林さやかさんに対して反対の意見でしたが、ここから先はかなり同じ意見になります。
上記遺伝の部分でも簡単に紹介したキーワードとして「共有環境」「非共有環境」というのがあります。遺伝以外の要素がこの2つで、共有環境とは双子・兄弟姉妹が共有する環境のことで一般的には「家庭環境」のことを言います。
先に紹介した学力のグラフでも、算数・数学や体育などがかなり共有環境による割合が高く、おそらく親が一緒に見てくれるとか、塾などに行けるなどがあるのでしょう。
ここでは家庭環境と家庭以外の環境のネガティブな影響について紹介します。安藤先生の「教育は遺伝に勝てるか」から始めますが、家庭環境に関してはどうやら愛着の問題が大きそうです。
愛着形成に問題があれば愛着障害となり、それは結果的に「虐待」となるでしょう。虐待には殴る蹴るといった身体的・性的・心理的なものだけでなく、放置無視などネグレクトもあります。愛着障害になると適切な人間関係が結びづらくなります(参考)。
また近年では虐待より広義のマルトリートメント(不適切な養育)という概念も存在し、具体例として以下が挙げられます。
小林さやかさんがご紹介されていた「子どもの前で保護者が子どもをけなすこと」もおそらくマルトリートメントにあたり、もしかしたら愛着形成に問題があるかもしれません。そしておそらく講演の前後だけでなく、家庭でも同じように起きてる可能性もあるでしょう。
虐待・マルトリートメントによるネガティブな影響は様々な研究で検証されています。
また、虐待・マルトリートメント環境にいなくても、経済的なストレス(貧困)だとIQが平均で9~10低下したり(論文)、自分と他人を比較することで一時的にIQが低下したり(論文)、いじめを被害を受けるとその後のIQが低下する(論文)、といった研究もあります。
家庭環境(共有環境)以外の環境(非共有環境)のネガティブな影響も見てみたいと思います。安藤先生の「教育は遺伝に勝てるか」から以下グラフを抜粋します。
家庭以外の環境で起きやすいのは(非共有環境が7割前後)、15歳未満では「登校拒否」「いじめ(人や動物に対する虐待)」「器物破損」、15歳以上では「不倫」「悔悟の念の欠如」となっています。これらは色んな条件がそろった環境によって起きることが多い、ということです。
都会と田舎の比較はなぜ行っているかというと、安藤先生いわく「限定された環境だと環境の影響が大きくなり、選択肢の多い自由な環境だと遺伝・個性の影響が大きくなる」ということで、都会は選択肢が多いため遺伝強め、田舎は選択肢が少ないため環境強めとなります。
真ん中のグラフの16歳~18歳の飲酒の傾向ですが、都会では何かしらの遺伝要素によって自ら飲酒を選択しがちで、田舎では家庭(共有環境)次第で飲酒に触れるということです(例えば親がよく飲んでて勧めてくるなど)。
右のグラフは男女別かつ悪い行動別に細かく見ることができます。興味があればぜひ見てみてください。
問い④:IQなど遺伝以外に何が人生にポジティブに影響するのか?
さて、私としてはここがこのnoteの本題です。地頭がいいと年収がよくなる可能性が高い一方で、人間関係がうまくいかず精神的につらい思いをする可能性もあり、地頭がよければ絶対人生がよくなるわけではないことが分かりました。
さらに、学力・学歴はあまり年収に関係がないこともわかり、そうすると地頭や学力以外に何が大事なんだ!と感じます。先に紹介した内容でも「富裕層でも成績が中の上」ってことはそれぐらいの学力でも富裕層になれる可能性がある、ということです!笑
※ただし「虐待・マルトリートメントがない」という前提つきです。もしそれがあるとまず自分自身の愛着障害を克服することが必要になってきます。
(1)運と知的好奇心(性格)
いきなり身も蓋もないことかもしれません、そう「運」が大事なのです。
これを読んでいただくとわかるのは、確かに大事なのは運なのですが、運が良くなりやすい要因があることも分かり、それは知的好奇心や外向性の高さといった性格(パーソナリティ)になります。
そしてその性格は真似すれば変わるほどに環境からの影響がとても大きいのです。以下、「教育は遺伝に勝てるか」からグラフを抜粋します。
真ん中のグラフの「パーソナリティ(NEO-PI-R)」は性格研究で一番学術的に信頼されているビッグファイブの要素になっていまして、神経質(精神安定)、外向性、開拓性(開放性)、同調性(協調性)、勤勉性(誠実性)で構成されています。
性格への遺伝の影響は上記グラフの場合、同調性の30%台後半から、開拓性の50%台前半までの間で、他の研究でも高くて70%ぐらいとなっていて、遺伝と環境半々ぐらいになりがちです。しかも環境は家庭環境よりも家庭以外の環境(非共有環境)からの影響のほうが強いことが分かります。
さらに以下はGenelifeという遺伝子検査のデータをもとに作ったビッグファイブの遺伝的な人口分布です。上記の安藤先生のグラフは平均的なものですが、個人差があるため、社会のなかで一定の割合で存在しています。(勤勉性は行動持続性と読み替えています)
例えば外向性の高い人は社会に8.26%いるのに対して、低い人は48.99%いる、という具合です。このグラフでは、知的好奇心(開放性)は基本的に高い人のほうが多いようです。遺伝子検査を受けると自分の遺伝的な性格が参考程度にわかります。
「ビリギャル」の著者であり当時の塾講師だった坪田さんはツイッターで「高校生の機嫌、特に恋愛」について指摘していますが(以下)、それもまたセロトニンやドーパミンの量や処理能力といった遺伝・脳の機能によって変わってくる部分であり、それは才能の要素も多くあります。
ちなみに知能IQと知的好奇心は同じだと考えそうですが、実は違うようです。その相関係数は約0.31とあまり高くありません(参考、ちなみに協調性とIQは0.2、神経症とIQは-0.1)。そうなると仮説ですが、以下のマトリクスを考えることができます。
その他の性格要素については以下にまとめましたので興味ある方はご覧ください。
(2)マインドセットやモチベーション
やる気や気の持ちようにマインドセットやモチベーションという言葉があります。マインドセットはちょっと怪しいところですが、モチベーションについては少しは効果がありそうです。ただなんとモチベーションも遺伝の影響があるようです。
読者の方で「モチベーションと年収が関係ある」という論文をご存じの方はコメントください。
(3)努力・練習・グリット
基本的に人は努力すればうまくいくと思っている人が多いかと思われます。ただしグリットについては上述のとおりIQのほうが重要であることが分かっていますし、そもそもグリット自体にどれだけ効果があるのか疑問視されている研究を以下に紹介します。
さらに練習の限界や、一つのことに集中しないほうがいいこと、そして努力については遺伝の影響があることが示唆されています。努力ですべてが上手くいくわけではなく、努力もまた一つの要素であるということです。
(4)運動、食事、睡眠
日本には「文武両道」という言葉がありますが、まさに近しいことが近年研究によって分かっています。
以下の書籍に多く書かれており、まだ全部読めてないのですが、例えば脳の海馬などに影響して学習能力が向上したり、ストレス・不安・うつ・注意欠陥障害・依存症・PMSにポジティブに影響したりするようです。
身体的な特徴の一つに身長がありますが、身長は遺伝だけで成り立っていません。普段食べる栄養の影響もあります。
また食べるものによって腸内細菌に影響し、腸は脳の機能(学習能力)や性格・行動に影響します。食べ物ではなく、周囲のストレスからでも腸内環境に影響するようです。
「ストレスを減らして、ちゃんとしたものを食べよう」という至極当たり前のことなのですが、これは睡眠にも同じことが言えます。この現代の資本主義社会では仕事に文字通り「忙殺」されているとも言えますし、もしくはゲームなどに中毒になっていて睡眠時間が減ってるのかもしれません。
(5)教育(語彙・計算)
さてやっと教育の出番が来ました。ただしすでに紹介したように学歴と年収の関係は弱く、よくて若いころのみ影響するのでした。つまり学歴を目指す教育よりも優先されることが色々あることがお分かりになっていることだと思います。
従来の教育の中で重要視されているのは「読み書きそろばん」でしょう。読み書きに関して言えば「語彙の発達」が重要です。
安藤先生の「教育は遺伝に勝てるか」の中でも環境上効果があることの一つに「本の読み聞かせ」があり詳細に分析されています(以下)。
「そろばん」、つまり算数・数学に関しても将来のキャリアに影響しているようです。算数・数学は遺伝の影響もありますが、先に紹介した安藤先生の学力のグラフにあるように家庭環境(通塾など)も影響してきます。
理科や社会、英語も大事ですが、もしかするとそれよりも語彙や計算のほうを徹底的に学校でもやったほうがいいかもしれません。
というよりむしろ、学校で知的好奇心を伸ばしたり、体育の時間を楽しい方向に充実させたり、家で睡眠をとれてない子は学校で昼寝だけでも提供したりすることによって、人生にいい影響がある可能性があります。IQの高い子がいた場合も適切な対応が求められることになります。
先生方にはいつまでも戦後から続く内容を教えるのではなく、また「正解がないから自分で学ぼう」と教えることを放棄せず、最先端の発達に役立つ部分を自分で調べて教えてもらいたいものです。探究が必要なのはまず先生です。
(6)所属グループ、メンター
次に紹介するのが人間関係、グループ、ネットワーク、コミュニティです。よく親が「あのおうちの子と遊んではいけません」と言いますが、「一人」の子どもなら多様性の理解になりますが、非行少年など「複数人のグループ」だとその言説は一面正しい部分かもしれません。
グループではないですが、グループの中で重要人物となっているメンターの存在も重要です。
じゃあ誰でもメンターをつければいいのかというと、メンターをつける前に自分でできることを全部やったうえでメンターをつけたほうがいいとのことです。(書籍)
(7)親の収入・資産
親の収入が高ければ子どもの将来の収入も高くなるのか?という問いです。そんなの当たり前だろ、と思われるかもしれません。実際かなり相関しています。(論文)
親の収入が高ければ子どもの「学歴」が高くなることはよく知られていますが(論文)、学歴が収入にそこまで大きく関係しないことを紹介しました。
また、富裕層の学力が中の上であることを先に紹介し、学力と知能IQの相関もそこまで高くないとなると、子どもも遺伝的な知能IQはあまり高くないことが推測できます。
となってくると親の収入が高くても知能が高くない場合、子どもの収入はランダムで下がってくる可能性を考えます。例えばお金があるから音大や美大に進学したり、研究者になりたくて博士課程にいったりして、収入が下がるというパターンです。
ここまでの情報だけでも何となく推測できるのは、親の外向性・内向性の遺伝・週間が子どもの外向性・内向性を通じて子どもの収入に影響しているのではないか、という仮説です。
つまり、親が高収入でも内向的であれば子どもも芸術やスポーツ、研究などに行って収入が下がるパターンと、親が外向的なら子どもが親の人的資本を継承してパーティに参加するなどの仮説が立ちます。こちらはあくまで仮説なので後ほど検証したいと思います。(ただし研究は欧米の場合は年収がすごく高くなりそうです。)
まとめると以下のようになります。
問い⑤:総括「ビリギャルとは何だったのか」
ここまでの要素を色々まとめると上の円グラフになります。(割合は私が直感的にテキトーに入れていますので参考にしないでください。)
もしビリギャルである小林さやかさんに本当に地頭(知能 IQ)がない場合(オーバーアチーバー)、以下が「ビリギャル」というエナジードリンクの成分なのではないか、と考えます。
ただし何度も言いますが、地頭がない場合、です。地頭(知能)は学力と0.4-0.6というまあまあ高い相関を示しますので、難関大学に受かるのに対して知能は最低でも110~120はあるのではないかと思います。
以下偏差値の人口分布です。ビリギャルが合格したのは慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスSFCの総合政策学部とのことですが、偏差値は79だそうです。偏差値が70以上の場合、全体の2.3%にあたります。
次に知能IQの人口分布です。同じように上位2.3%だとすると知能IQは130以上となり、ギフテッドの水準になります。つまりこれより下の知能だとオーバーアチーバーとなります(悪い意味はありません)。
個人的に思うところですが、もし地頭があるにもかかわらず、「地頭が重要ではない、みんなもできる」と言ってるのであれば、それは詐欺同然です。情報商材と何ら変わりません。なので知能検査を受けていただきたいです。
たとえ地頭がなかったとしても他に恵まれているものがこれだけたくさんあるので、その条件に合わない人に対していうのであれば、ある程度の根拠が必要でしょう。その根拠を探すために海外大学に留学しているのかもしれませんが、留学しなくてもこのように調べることはできます。
とはいえ「とりあえず行動する」は「運のいい人」の強みなので、それ自体はまた何か別のいいことにつながるでしょうし、根拠の薄いnoteがあったからこそ私自身が調べてみようと思ったわけです。社会はそうやって影響しあってできています。
それにしてもやっぱり地頭がなかったとしても、どの辺が「ビリ」なんだろうと思いますよね、、、私の「虐待・貧困・いじめ・うつ・不登校」ですら底辺の世界ではまだマシなほうで、「虐待で死ぬ」とか「境界知能で闇バイトや風俗で捕まる」とか「薬物漬けで何回も刑務所に入る」とか「途上国で人身売買にあう」とか、世の中にはもっと「ビリ」な人たちがいる。「ビリギャル」というタイトルを言われたときに(やっぱりここでも)疑問に思わずそのまま受け入れたという、、、。
頑張れば慶応義塾大学に合格できる「人生の範囲」を「社会のビリ」とは言わないわけで、どちらかというと「高校生のときまで日本の偏差値という基準において何もしてこなかっただけ=ビリ」という定義なんですよね。やっぱり情報商材のニオイがすごいですね、、、。
問い⑥:どんな教育や社会にしたらより多くの人たちが幸せになることができるのか?
ここからは私の個人的な探究テーマに移りますので、付録・番外編です笑。読みたい人だけ読んでください。
私は先にも紹介したとおり、虐待・貧困環境で育ち、運よく脱することができました。検査を受けた通り、おそらく知能が高かったためですが、ストレスによって知能が下がることが分かっているので下がりきらなくて運がよかったです。
社会問題の当事者でありながら、才能が少しはあるそんな稀有な存在である私だからこそできることがあると思っており、18歳からずっと社会活動をしてきました(過去の活動はこちらから)。
私は世界にある色んな要素がお互いにどのように影響しているのかを可視化・計算したいと思っています。今回でいえば「人間の成功の要素は何か?」という部分に絞った内容になりますが、研究テーマはそれよりさらに広いです。
私は、人間がほかの動物と違うから、自分自身が人間だから、「ほかの動物より人間が優れている」とは全く思いません。なので「社会」はないと思っていますし、「人間の営み」も「自然の一部」としか思っていません。
そのため「社会はジャングルと同じ」だと思っています。なのでこの研究プロジェクトの名前を「SORIN(叢林、jungleの意味)」と名付けています。詳細は以下の記事にて。
最後に
もしかしたら虐待を過去受けたことがあって知能が低い人がこのnoteを読んだら絶望を感じるかもしれません。ただ私の考えは違います。
まず成功の条件に合致している人をすぐに見つけてどんどん支援することでどんどん稼いでもらいます。そうすると税収が増えて、公共サービスが充実します。そして成功の条件に合致しない人たちは充実した公共サービスを受けることができるのです。
公共サービスときくと安かろう悪かろうと感じますが、もし生活保護が月20万円もらえたらどうでしょうか?いや30万円でもいいかもしれません。そしたら高額納税者に感謝するかもしれません。
高額納税者も顔が見えて感謝されたらうれしいかもしれません。ここでやっとコミュニティや国家としての仲間意識が生まれるのかもしれません。現状これがないので高所得者は自分と家族だけのことを考えて、タックスヘイブンや所得税の低い国へ移住するのでしょう。
そして今回は年収をメインに見ましたが、幸福に関係する要素はあまり見てませんでした。例えばグリットは幸福度に影響するようです。年収が低くても多額の生活保護をもらいながら幸せな人生を送れたら問題ないかもしれません。
今回の調査で学歴が年収にとってあまり意味がないことがわかりましたが、では勉強しなくていいのか、と考えると違う気もします。もちろん生活を最低減成立させるために、スキルや気を付けるべきことを教育の中で学ぶことは大事です。
また学力に影響を与えるのが知能(遺伝)よりも家庭(共有環境)だとすると、学校・大学の同級生というのは同じぐらいの家庭環境=文化や経済が同じととらえることもでき、同じような友達・仲間を見つけたいなら学力を鍛えるのがいいのかもしれません。
ただ小説を読んで批評したり、歴史を知って過去に思いをはせたり、宇宙の不思議を探究することは、心の豊かさや人生の楽しみとしてとらえることが大事なのではないかと思います。また、それが個人の知的好奇心をはぐくむことができれば、運のいい人も増えることでしょう。
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