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「ビリギャル」というエナジードリンクの成分は何か?才能や努力などの論文50個以上掲載

こんにちは、トキワです。(※2万字になるのでお時間ある際にお願いします)

今回は才能と努力についてこの2-3か月で調べたことをまとめます。さしあたって本人には申し訳ございませんが、教育業界でそのテーマでよく出てくる「ビリギャル」を使います。

ところでビリギャルの本人である小林さやかさんは1988年生まれの35歳だそうで、私は1991年生まれの32歳でかなり年齢が近いです。

ビリギャルを調べてみると書籍は2013年、映画化は2015年にされてたそうですが、私自身は両方ともまったく触れておらず、知りませんでした。(著者の坪田さんの本は「人間は9タイプ」のほうを読んでいて、その方がビリギャルの著者とも知らなかった)

その頃は、アメリカに語学留学に行ってて、帰ってきてからも夜22時ぐらいまでスタートアップで働いてはスキルを磨いてて、とても忙しかったので、あまりそういったものに触れる時間がありませんでした。

元々貧困・虐待家庭で育ち、コミュ障のため学校でいじめにあい、何も武器を持ち合わせていなかったので、大学は全部教育ローンでグラフィックデザインとプログラミングを学び、それを無駄にしまいと企業で成果を出すために這いつくばっていました。

じゃあなぜビリギャルを知ったのか、と言えば、それは私自身が今年度から宇都宮市にある星の杜中学校高等学校の非常勤講師になったことをきっかけに教育業界にきたからです。

10年以上IT業界にいた人間がなぜ急に教育業界にきたかというと、元々コロナ前は海外で事業をやっていたのですが、コロナでそれが厳しくなり、コロナ禍では学校向けに事業を展開しようとし、その最中に星の杜の先生からオファーをもらったことがきっかけでした。

教育業界における「ビリギャル」の知名度はとても高く、もはやインフルエンサー。SNSでは誰かが小林さやかさんの投稿をシェアするので、私自身もさすがに知るようになります。

最近特に話題になったのは以下の投稿でしょうか。いやもう少し前に海外大学合格をSNSで知ったかもしれません。

本も映画も見てませんが、これを読んで「おお、なるほど」と思いました。これは確かに色んな人を引き付け、そしてだからこそ反感を買うんだろうなあ、と。

確か同じような文体を前もどこかで見たなあと思いふけってると、そうだ、箕輪厚介さんだと思い出し、そして彼は確か「読むエナジードリンク」と言ってました。まさにそれだ、と思いました。

つまり読むと元気になる、ということです。逆に言うと元気にしかなりません。そういう本や文章もあっても全然いいと思っています。ただし読む側が「元気になるために読む」という用法用量が守られているのかは心配になります。

一方で、私はどうしてもすんなり入ってこない性格で、「それは本当だろうか」と疑問を感じ、「~~なんじゃないだろうか」と仮説をたてて、「ちょっとこの書籍や論文読んでみるか」と検証したくなります。

なので今回も上記のnoteからビリギャルというコンテンツをエナジードリンクと例えつつ、才能と努力の関係、もしくは遺伝と環境の関係について、調べてみたのでここでまとめます。

エナジードリンクは用法用量を守って正しくお使いください!!


問い①:地頭はないのか?あるのか?

日本人は「地頭」という言葉が大好きだ。でも、この言葉が一体何を意味するのかをちゃんと言語化できる人に、あまり出会ったことがない。この「地頭」って一体、なんなんだろう。何を根拠に、人は地頭が良い、悪い、と決めたがるんだろう。
(中略)
地頭が悪い子なんていません
坪田先生は、「さやかちゃんは地頭が良かったですよ」と言い切る。でも、「あなたのお子さんも、地頭良いですよ。地頭悪い子なんて、いませんから」と、続ける。

note「ビリギャルは、元々頭が良かったんだよ。」

小林さやかさんに対して悪い気持ちはないですし、今回のnoteに賛成できる部分はあるのですが、ここだけは賛成できません。(それにしても地頭を言語化できる人に会ったことないって人間関係やばいですね、、、)

「地頭」という言葉を使う人で確かに根拠がない人は多いかもしれませんが、逆に小林さやかさんも「地頭が悪い子なんていない」に対する根拠がありません

ちなみに「地頭」の意味をネットで調べると以下の意味が出てきます。

大学などでの教育で与えられたのでない、その人本来の頭のよさ。一般に知識の多寡でなく、論理的思考力やコミュニケーション能力などをいう。「―がいい」「―を鍛える」

goo辞書「地頭(じあたま) とは? 意味・読み方・使い方」

「本来の頭の良さ」という部分からするに「生まれ持ったもの」「遺伝的な知能」を考えざるを得ません。

この「地頭」について調べてみましたが、最近ビリギャルの合格した慶應義塾大学の安藤寿康先生の新しいご著書が発売されました。なんとも刺激的なタイトルです。

慶應義塾大学は2007年ごろから慶応義塾双生児研究(Keio Twin Study)を立ち上げており、安藤先生この中でかなり中心的な役割をされています。

安藤先生のご著書は上記だけではなく、過去にも多くご執筆されていますが、「昨今の遺伝子解析サービスのおかげでデータがかなり増えてきた」と上記で書かれており、おそらくほぼ最新のデータになるかと思われます。

双子、特に一卵性双生児は、遺伝が100%同じ(最近ここは議論の余地があるようですが)ため、養子などで違う環境に置かれた場合、遺伝の影響か、環境の影響かを知るのにとても多くの示唆を得ることができます。

まず上記ご著書からデータを以下に抜粋します。分かることとしては「知能(地頭)は年を経るごとに遺伝の割合が大きくなる」のと「学業成績(日本)は年を経るごとに共有環境(家庭)の割合が大きくなる」ということです。

左は一卵性双生児と二卵性双生児の相関。右は遺伝、共有環境(家庭)、非共有環境(家庭以外)の割合。

学業成績が年を経るごとに家庭環境に依存するのはおそらく「塾に通えるかどうか」が大きいのではないかと思います。

一方で、知能(地頭)の場合、ご著書の最後のほうに言及されているのですが、「選択肢の多い自由な状態になればなるほど選択に個性(遺伝)が出る」とあります。この場合、学校による管理より大学や仕事といった自由な環境になればなるほど個性が出やすいということです。

さらに「知能(地頭)」にも2種類あり、言語性知能(Verbal IQ)と、非言語性知能(Non-verbal IQ)があります(参考)。言語性知能は、「単語の意味を答える」などのような知識・記憶力を問われる知能です。

一方で、非言語性知能(Non-verbal IQ)のほうを脳科学者・中野信子さんは「地頭(機転がきく・柔軟性など)」と定義しており、以下のように紹介しています。

Non-verbalな部分は、柔軟にものごとに対処する力だとか、いわゆる「地頭」と呼ばれるところと考えてもらえればいいでしょう。「あの人はあまり知識はないけれども、地頭が良いよね」という場合。機転が利くとか、未知の状況に当たった時に柔軟に対応できる、すばやく決断できるとか、そういう部分です。
ここは生まれつき決まってしまう要素の大きい部分です。遺伝率がけっこう高くて、だいたい70〜80パーセントぐらいと考えられています。でも環境要因はゼロではありません。とはいえ訓練は難しいとされています。がんばってもなかなか伸びるものでもないというか。

脳科学者・中野信子氏が説く「地頭」と「教養」の遺伝的な違い

というわけで地頭は明確にあります

地頭の存在を確認せずに「地頭はない」「地頭の悪い子はいない」と言い切ってしまうのは、本人の言う通りビリギャル(小林さやかさん)に地頭がないからではないか、と思います。

じゃあ地頭が低い・無いなら社会的に成功できないのか?最低限お金を稼いだり幸せになることができないのか?というとそうではありません。ビリギャルがそうであるように。

地頭(知能 IQ)がそもそも価値があるのか?地頭以外に価値あるものは何なのか?というのが次の論点になります。

※ちなみに「遺伝率」なのですがかなり誤解の多い用語です。例えば、あるコミュニティ・集団にテストを受けてもらい、平均点が50点だったとして、とある生徒が70点でとある生徒が30点だったとします。この平均と20点の差(分散、ばらつき)が遺伝の原因が7割、環境の原因が3割、という使い方になります。もう少し詳しく知りたい人は以下をご覧ください。

問い②:地頭(知能 IQ)に価値はあるのか?

結論から言うと、地頭(知能)は「諸刃の剣」です。環境に応じて良いときもあれば悪いときもあります。知能IQこそ「用法用量正しく使う」必要があります。

(1)地頭(知能 IQ)の良いところ、得すること

まず分かりやすいので良いところから紹介します。

ボストン大学「アメリカのベビーブーマー7403人を追跡調査。IQテストのスコアが1ポイント上がるごとに年収は平均で約2万5千円~6万円高い。」(論文

2021年のメタ分析ではIQが高い人ほど様々なアイデアを生み出すための「発散的思考」が得意になる傾向にあることが分かった。相関係数は3.1~3.7ほど。(論文

テルアビブ大学など「経済的な成功や学校の成績、学位取得には、グリットよりもIQのほうが48~90倍重要。中でも比率や割合などの数字を使った推論や、文章において段落ごとの関係や役割を理解できるかが重要。」(論文

ペンシルバニア大学やイリノイ大学など「数百人のセールスパーソンの営業成績・EQ・IQの関連を比べたところ、EQはパフォーマンスが高いわけではなく、IQが高いほうが重要だった。」(論文)「EQと仕事の成績は1%ぐらいしか関係なく、IQの場合は約14%影響がある。」(論文

2011年の系統的レビュー&メタ分析によると、IQスコアが1標準偏差アップするごとに長期的な死亡率が24%改善される傾向にあった。IQ130なら平均より48%死亡率が改善される。(論文

法務省の2021年の矯正統計調査「能力検査値 」によると受刑者のうちIQ89以下は全体の7割も占める。IQが高いほうが犯罪に手を染めにくい。(データ

コーネル大学など「相対的にIQが低い人のほうが陰謀論やスピリチュアルな話を信じやすい傾向にあった。(IQの高い人は陰謀論などを信じづらい)」(論文

ブロック大学など「15874人を対象に行った研究によると幼少期の認知能力(≒IQ)が低い人ほど、大人になってから差別的で画一的な思想になりやすく、また保守的な思想になりやすい。(IQの高い人は差別をしづらい)」(論文1論文2

男性のIQと失業/貧困率/高校中退の関係(1年間のうち1か月以上、参考
130以上:失業2%、貧困率:2%、高校中退:0%
90~110:失業7%、貧困率:6%、高校中退:6%
75以下:失業12%、貧困率30%、高校中退55%

名古屋大学大学院と慶応大学「1000人を対象に行った研究によると収入は若いときは共有環境(家庭環境)の影響を受けやすく、年齢を経るごとに遺伝と非共有環境の影響を受けやすくなる。」(下記図①)

図①:画像掲載の書籍、元の論文。共有環境(家庭環境)は、愛着による安定した人間関係や、親の収入による学歴への影響の可能性がある。

まとめると、IQが高いと仕事の成績がよく年収が高くなる、また陰謀論を信じづらく、差別せず、犯罪者にもなりづらく、死亡もしづらい、ということです。とても極端です笑。すごく良いかすごく悪くないかな感じします。

(2)地頭(知能 IQ)の悪いところ、損をするところ

さて、数は少ないんですが、悪いところを紹介します。良いところが極端だっただけに、こちらのほうがおそらくかなり人生全般に効いてきそうな内容です。

名古屋大学など「一卵性双生児(遺伝がかなり似てる人)が違う大学に進学した場合、その後の一卵性双生児の年収に違いはほとんど見られなかった。」(論文解説

クレムソン大学「大学のころにどれだけ優秀だった人でも、学校を卒業してから2~3年たつと、社員の成績は業績と全く関係なくなった。」(論文

ハーバード大学「700人以上のアメリカの富豪の大学時代の成績は中の上(GPA2.9)」(解説

これは遺伝(地頭・IQ)と学力が関係なく、学力と業績が関係ないことを示しています。つまり学力は何のためのものだったのか、ということです。その割にいまだに学歴にはブランドがあります。

地頭(知能 IQ)と学力の相関はだいたい0.4~0.6ぐらいだとされています(論文解説)。つまりIQ=学力、ではないのです。IQが低くて学力が高いことをオーバーアチーバー、IQが高くて学力が低いことをアンダーアチーバーと言います。

もちろんIQが高くて学力も高ければ、周りからの見られ方も自然です。普段の会話の相手は同じぐらいのIQの人に出会いやすいためです。

しかしオーバーアチーバーなら例えば「東大なのにこんなこともできないの」と言われたり、アンダーアチーバーなら周りに会話が合う人が少なくなってしまいます

一見「学力が関係ないなら気にせずすぐに仕事で稼げばいい」となりそうですが、学力=一定のレベルのコミュニティへのアクセスだとすると、人間関係に苦労することが多くなるのです。そのためIQ≒学力≠業績をデメリットに挙げました。人間関係の苦労を示す研究もあります。

カリフォルニア大学デービス校「各国から集めたビジネスリーダー379人のIQを調べ、さらにその部下に上司としての能力を質問。その結果、IQ120以上で上司に対する評価は大きく低下する。」(論文等

ピッツァー大学「メンサ会員3715人を対象に行われた調査。IQ130以上だった者の20%が不安障害と診断(全国平均は10%)。」(論文等

アイデアをすぐ出せるので起業家向きですが、仕事仲間に恵まれないと誰にも分かってくれない状態に陥ります。もし難関大学で同じぐらいのIQの人と起業できれば、分かってくれる人がいる状態で仕事をこなすことができます。

良いところで死亡率の改善を紹介しましたが、一方で、精神的なストレスを感じやすくなり、精神疾患を患いやすくなるようです。これも理解しあえる人が少ないことが原因だと思われます。

理解しあえる人が少ない理由として(1)陰謀論とまでいかなくても一般的な雑談ですぐに共感できないこと(疑問を持ってしまうなど)や、(2)日常的に探究へ時間を費やしていて人関係を築く能力の向上に時間を費やしてこなかったなどが原因なのかもしれません。

これらがIQが1番重要だとは限らない根拠となります。ここすごく大事なことです。

個人的に思うところとしては、もちろん違うIQの人と人間関係を成立させることも重要なのですが、それだけでは心の底から理解しあえる人が増えないため、受験勉強がなくても同じぐらいのIQの人と出会える場所があるともっと人生が豊かになりやすくなるのではないか、と考えています。

ここまで地頭(知能IQ)・学力・年収だけの関係図をまとめるとこんな感じになります。そもそも地頭(知能 IQ)が完全に良いわけでもなければ、学力が良いわけでもないことが分かりました。

さて、ここでビリギャルの話に戻りますが、もしビリギャルに地頭がなかったとした場合、慶應義塾大学に受かったのはどういうことなのか?考え直す必要があります。完全なオーバーアチーバーとなります。

個人的には小林さやかさんは実は遺伝的な知能が実は高いのではないかと思っており、ご本人にはぜひとも遺伝子検査と知能検査を受けてみてほしいところです(私のnote参考)。

いずれにせよ知能と学力の相関はすごく高いわけではないので、知能があったとしても無かったとしてもそれだけで受かったわけではないことが分かります。

では地頭以外に何が重要なのでしょうか?世界、ふしぎ、発見!!

補足:人生にポジティブに影響する地頭(知能 IQ)以外の遺伝要素

身体的な特徴は遺伝によるところが大きいです。例えば一重二重、鼻の高さ、顔の輪郭、肥満・脱毛、そして肌の色です。(身長は摂取できる栄養といった環境による影響もあります。)

そして以下のとても理不尽な調査もあります。

経済学者ダニエル・ハマーメッシュらの調査では、ルックスがいい者ほど収入が高く、平均で美女は8%、美男は4%ほど平均的な見た目の人たちより収入が高い。「人生に満足だ」と回答した美男美女は55%だったに対し、見た目が下位にランクされた人たちは45%にとどまる。

書籍「美貌格差: 生まれつき不平等の経済学

問い③:IQなど遺伝以外に何が人生にネガティブに影響するのか?

「なんだ、やっぱり成功するには元々才能が必要なんだ」「努力したって、最初から結果は決まってるんだ」
そういうメッセージが、子どもたちに伝わってしまっていることを、自覚して欲しい。
講演先で出会う親御さんたちが、口々にこう言った。「さやかちゃんはやっぱり頭がいいんですよ!うちの子は地頭が悪いから…」
お母さんがそういうのを、すぐ後ろでこどもが黙って聞いていた。一度なんかじゃない。こういう場面に、何度も出会った。私は、いつも泣きたくなった。その子の痛みが、伝染してくるようだった。私もかつては「地頭が悪い」と言われてた。でも、その言葉に根拠など、なにもなかった。それなのに、どうしてこの言葉はこんなにも威力がでかいのか。

note「ビリギャルは、元々頭が良かったんだよ。」

地頭・才能・遺伝の次はやっぱり「環境」の話ですね。地頭については小林さやかさんに対して反対の意見でしたが、ここから先はかなり同じ意見になります。

上記遺伝の部分でも簡単に紹介したキーワードとして「共有環境」「非共有環境」というのがあります。遺伝以外の要素がこの2つで、共有環境とは双子・兄弟姉妹が共有する環境のことで一般的には「家庭環境」のことを言います。

先に紹介した学力のグラフでも、算数・数学や体育などがかなり共有環境による割合が高く、おそらく親が一緒に見てくれるとか、塾などに行けるなどがあるのでしょう。

ここでは家庭環境と家庭以外の環境のネガティブな影響について紹介します。安藤先生の「教育は遺伝に勝てるか」から始めますが、家庭環境に関してはどうやら愛着の問題が大きそうです。

どんな行動の個人差にも原則として遺伝の影響があるというのが行動遺伝学の第一原則ですが、例外があります。それが乳幼児期の子どもと親との愛着のあり方で、これには珍しく遺伝要因がほとんどありません。愛着、つまり子どもが親や大人に対して示す安定した心理的な距離の取り方は親のかかわり方が非常にものをいうようです。(中略)ここで子どもの見せる母親との安定した関係の取り方を一卵性と二卵性で比較すると、その類似性はほぼ同じで、共有環境が70%近くなります。

安藤寿康「教育は遺伝に勝てるか?」

愛着形成に問題があれば愛着障害となり、それは結果的に「虐待」となるでしょう。虐待には殴る蹴るといった身体的・性的・心理的なものだけでなく、放置無視などネグレクトもあります。愛着障害になると適切な人間関係が結びづらくなります参考)。

また近年では虐待より広義のマルトリートメント(不適切な養育)という概念も存在し、具体例として以下が挙げられます。

子どもの前で夫婦喧嘩(面前DV)
スマホ・タブレットを与えて放置する
子どもを兄弟姉妹と比較して批判したり、親戚などの前で笑いものにする
子どもを萎縮させるほどの威圧的・高圧的な指導(教育虐待)
褒めるべきときに褒めない
「子どもにナメられるから」という理由で笑顔を見せない

参考「マルトリートメントとは

小林さやかさんがご紹介されていた「子どもの前で保護者が子どもをけなすこと」もおそらくマルトリートメントにあたり、もしかしたら愛着形成に問題があるかもしれません。そしておそらく講演の前後だけでなく、家庭でも同じように起きてる可能性もあるでしょう。

虐待・マルトリートメントによるネガティブな影響は様々な研究で検証されています。

子どものとき虐待を受けた人では、記憶に関係する海馬の容積が減少したり、ストレス耐性が弱まったり、うつ病や自殺のリスクが高まる。(論文1論文2

激しい虐待を受けた人では、感情や思考をコントロールし、犯罪抑制力の機能を持つ右前頭前野内側部の容積が平均19.1パーセントも小さくなっていた。(解説

モノアミンオキシターゼAというタンパクの量が遺伝的に少ない子どもは虐待を受けると行動異常になったり、暴力的になったり、反社会的になりやすくなる。(論文解説

「特別な問題がありそうにない普通の家庭で育った人でも、およそ3分の1に愛着スタイルに問題がある。」(書籍

また、虐待・マルトリートメント環境にいなくても、経済的なストレス(貧困)だとIQが平均で9~10低下したり(論文)、自分と他人を比較することで一時的にIQが低下したり(論文)、いじめを被害を受けるとその後のIQが低下する(論文)、といった研究もあります。

家庭環境(共有環境)以外の環境(非共有環境)のネガティブな影響も見てみたいと思います。安藤先生の「教育は遺伝に勝てるか」から以下グラフを抜粋します。

左は遺伝と環境の割合、真ん中は飲酒、右は都会と田舎の比較

家庭以外の環境で起きやすいのは(非共有環境が7割前後)、15歳未満では「登校拒否」「いじめ(人や動物に対する虐待)」「器物破損」、15歳以上では「不倫」「悔悟の念の欠如」となっています。これらは色んな条件がそろった環境によって起きることが多い、ということです。

都会と田舎の比較はなぜ行っているかというと、安藤先生いわく「限定された環境だと環境の影響が大きくなり、選択肢の多い自由な環境だと遺伝・個性の影響が大きくなる」ということで、都会は選択肢が多いため遺伝強め、田舎は選択肢が少ないため環境強めとなります。

真ん中のグラフの16歳~18歳の飲酒の傾向ですが、都会では何かしらの遺伝要素によって自ら飲酒を選択しがちで、田舎では家庭(共有環境)次第で飲酒に触れるということです(例えば親がよく飲んでて勧めてくるなど)。

右のグラフは男女別かつ悪い行動別に細かく見ることができます。興味があればぜひ見てみてください。

問い④:IQなど遺伝以外に何が人生にポジティブに影響するのか?

学び方や感じ方はそれぞれ違うし、得意不得意ももちろんある。知識詰め込み型の勉強が得意な子もいれば、対話を通して言語化するのが得意で、そこから学びを吸収する子もいる。褒められたらもっと頑張れる子もいれば、叱られてこんちくしょうで頑張るほうが結果が出やすい子だっている。
(中略)
結果じゃなく、プロセスを見てあげて欲しい。そして、小さな成長を見逃さず、認めてあげてほしい。失敗は、もっとうまくできるために必要なステップだと、本人が思える環境を作ってあげて欲しいそしたら必ず、その子の才能が見えてくるから

note「ビリギャルは、元々頭が良かったんだよ。」

さて、私としてはここがこのnoteの本題です。地頭がいいと年収がよくなる可能性が高い一方で、人間関係がうまくいかず精神的につらい思いをする可能性もあり、地頭がよければ絶対人生がよくなるわけではないことが分かりました。

さらに、学力・学歴はあまり年収に関係がないこともわかり、そうすると地頭や学力以外に何が大事なんだ!と感じます。先に紹介した内容でも「富裕層でも成績が中の上」ってことはそれぐらいの学力でも富裕層になれる可能性がある、ということです!笑

※ただし「虐待・マルトリートメントがない」という前提つきです。もしそれがあるとまず自分自身の愛着障害を克服することが必要になってきます。

(1)運と知的好奇心(性格)

いきなり身も蓋もないことかもしれません、そう「運」が大事なのです。

経済学者ブランコ・ミラノヴィッチらが118か国の収入レベルを調べた研究によれば、世界における収入格差の約半分は、その人が住んでいる国とその国の所得分布。(論文

教育心理学者ジョンDクランボルツ「成功したビジネスパーソンのキャリア調べた研究では、参加者の人生におけるターニングポイントの8割には、本人が予想もしない偶然が関わっていた」(論文

東京大学大学院元教授の矢野眞和「所得は素質と運と努力の組み合わせで決まり、全体の6割ほどに運が影響」(論文

イタリア・カターニア大学などのチーム「運が企業の業績を左右する割合は30%。また、1000人が住む仮想都市を作り、一人ずつの才能は正規分布に従うよう設定し、ランダムで資産が増えるイベント(運)を発生させる。結果、才能よりも運のほうが重要。」(論文)→イグノーベル賞受賞参考紹介動画

中央ヨーロッパ大学「スターウォーズなどのヒット作は、個人の能力よりもランダム性によって生まれ、ヒットの予測はできない」(論文

スタンフォード大学「卒業生12500人を対象に調査。仕事経験が15年以上で経験した役職が2つ以下だった人は経営幹部になる確率はたった2%だったのに対して、5つ以上の人だと18%に上昇した。」(論文

ウィスコンシン大学など「過去に実施された天才にまつわる調査から13件を選び、約8000人のデータを分析。開放性(未知の情報にポジティブな興味を持ち行動する。知的好奇心)が重要。」(論文

心理学者リチャード・ワイズマン「1000人以上の運のいい人と悪い人を調査。運のいい人は新しい経験を積極的に受け入れ、外向的で、あまり神経質ではない。さらに運が悪い人に運がいい人と同じ行動をしてもらうと80%の人が運がよくなったと実感した。」(書籍

心理学者ネイサン・ハドソンら「複数の大学に通う大学生を400人以上集めて、それぞれに自分の性格で変えたいところを教えてくださいと指示。そのうえで事前に用意したアクションリストの中から好きなものを選んでこなしてもらう。4か月後、確実にこなした人ほど性格テストの結果が変わった。」(論文

これを読んでいただくとわかるのは、確かに大事なのは運なのですが、運が良くなりやすい要因があることも分かり、それは知的好奇心や外向性の高さといった性格(パーソナリティ)になります。

そしてその性格は真似すれば変わるほどに環境からの影響がとても大きいのです。以下、「教育は遺伝に勝てるか」からグラフを抜粋します。

左は性格と各要素の一卵性・二卵性の相関、真ん中は遺伝・共有環境・非共有環境の割合、右は一緒・別々に育った場合の比較

真ん中のグラフの「パーソナリティ(NEO-PI-R)」は性格研究で一番学術的に信頼されているビッグファイブの要素になっていまして、神経質(精神安定)、外向性、開拓性(開放性)、同調性(協調性)、勤勉性(誠実性)で構成されています。

性格への遺伝の影響は上記グラフの場合、同調性の30%台後半から、開拓性の50%台前半までの間で、他の研究でも高くて70%ぐらいとなっていて、遺伝と環境半々ぐらいになりがちです。しかも環境は家庭環境よりも家庭以外の環境(非共有環境)からの影響のほうが強いことが分かります。

さらに以下はGenelifeという遺伝子検査のデータをもとに作ったビッグファイブの遺伝的な人口分布です。上記の安藤先生のグラフは平均的なものですが、個人差があるため、社会のなかで一定の割合で存在しています。(勤勉性は行動持続性と読み替えています)

例えば外向性の高い人は社会に8.26%いるのに対して、低い人は48.99%いる、という具合です。このグラフでは、知的好奇心(開放性)は基本的に高い人のほうが多いようです。遺伝子検査を受けると自分の遺伝的な性格が参考程度にわかります。

協調性(FKBP5遺伝子 イムノフィリン)、外向性(ミトコンドリアSLC6A2遺伝子 ノルエピネフリン)、開放性(GPX1遺伝子 過酸化水素)、行動持続性(ADRB1遺伝子 アドレナリン受容体とADRB3遺伝子 脂肪分解や熱産生に関わる遺伝子)、神経質(HTR3A遺伝子 セロトニン受容体

「ビリギャル」の著者であり当時の塾講師だった坪田さんはツイッターで「高校生の機嫌、特に恋愛」について指摘していますが(以下)、それもまたセロトニンやドーパミンの量や処理能力といった遺伝・脳の機能によって変わってくる部分であり、それは才能の要素も多くあります。

ちなみに知能IQと知的好奇心は同じだと考えそうですが、実は違うようです。その相関係数は約0.31とあまり高くありません参考、ちなみに協調性とIQは0.2、神経症とIQは-0.1)。そうなると仮説ですが、以下のマトリクスを考えることができます。


知能IQ130以上のギフテッドも好奇心が高いか低いかで人生が大きく変わりそう

その他の性格要素については以下にまとめましたので興味ある方はご覧ください。

(2)マインドセットやモチベーション

やる気や気の持ちようにマインドセットやモチベーションという言葉があります。マインドセットはちょっと怪しいところですが、モチベーションについては少しは効果がありそうです。ただなんとモチベーションも遺伝の影響があるようです。

読者の方で「モチベーションと年収が関係ある」という論文をご存じの方はコメントください。

マインドセット、ミシガン州立大学など「約37万人の過去データを分析して、マインドセットで学校の成績は上がるのか調べなおしたところ、あまり影響はなかった。」(論文

ケース・ウェスタン・リザーブ大学「マインドセットに関する63の研究をまとめたうえで、大半の実験には複数の間違いがあると報告。マインドセットの効果は実験エラーによるもの。」(論文

「内発的動機づけが高い人は、外発的動機づけが高い人よりも仕事のパフォーマンスが高いことが明らかになった」(論文

「6か国の1万3千組の双子を調査したところ、学業に関するモチベーションは4割ほどが遺伝の影響」(論文、以下図)

(3)努力・練習・グリット

基本的に人は努力すればうまくいくと思っている人が多いかと思われます。ただしグリットについては上述のとおりIQのほうが重要であることが分かっていますし、そもそもグリット自体にどれだけ効果があるのか疑問視されている研究を以下に紹介します。

さらに練習の限界や、一つのことに集中しないほうがいいこと、そして努力については遺伝の影響があることが示唆されています。努力ですべてが上手くいくわけではなく、努力もまた一つの要素であるということです。

アイオワ州立大学「過去のグリットの研究から約7万人のデータを分析。グリットの高さと学校の成績にはほとんど関係がなく(相関係数0.18)、グリットが高くても仕事のパフォーマンスは3%しか改善しないことがわかった。」(論文

ミシガン州立大学「1万時間の法則についてメタ分析を行うため、プロのチェスプレイヤーとミュージシャンのデータを調査。練習量とパフォーマンスの関係は一致せず明確な結論は出なかった。練習量が少なくても一流になれたり、練習量が多いのに成果が出ない人が現れたりした。また、集中的な練習はそこまで大事ではなく、他に何が大事か?を考えることがより重要である。そして練習の重要性が占める割合は12%ぐらいだとわかった。(練習の重要性はジャンルによって異なり、ゲームは26%、音楽は21%、勉強は4%、専門職は1%。)」(論文1論文2

アリゾナ州立大学「S&P1500社のデータから約4500人のCEOを選び、全員が関わった役職や産業の数などを調べたうえで二つのグループに分けた。ジェネラリスト(複数の業界や企業に挑戦した経験がある)とスペシャリスト(特定の業界や企業だけを経験)。CEOの業績を評価したところジェネラリストのうが19%高い。(一つのことをコツコツやるより色々やるほうがいい)」(論文

カイザースラウテルン工科大学など「15か国6000人以上のアスリートを対象にメタ分析。世界レベルのアスリートほど10代のうちに複数のスポーツに時間を使い、ひとつの種目に狙いを定める時期が遅かった。逆に子供のころに特定の種目に絞った選手は成人後にトップになれない傾向があった。」(論文

努力ができるかどうかも遺伝子が関わっているのではないか、という興味深い報告が、米ミシガン州立大学とテキサス大学の研究グループによって、実験心理学の専門誌Psychonomic Bulletin & Review に発表されました。研究は、双子850組を対象としたもので、楽器の練習を黙々とこなせるかかどうか(努力ができるか否か)の比較が実施されました。(論文解説

(4)運動、食事、睡眠

日本には「文武両道」という言葉がありますが、まさに近しいことが近年研究によって分かっています。

以下の書籍に多く書かれており、まだ全部読めてないのですが、例えば脳の海馬などに影響して学習能力が向上したり、ストレス・不安・うつ・注意欠陥障害・依存症・PMSにポジティブに影響したりするようです。

身体的な特徴の一つに身長がありますが、身長は遺伝だけで成り立っていません。普段食べる栄養の影響もあります。

また食べるものによって腸内細菌に影響し、腸は脳の機能(学習能力)や性格・行動に影響します。食べ物ではなく、周囲のストレスからでも腸内環境に影響するようです。

「人間ではうつ病などのストレスに関連した精神疾患では、腸内細菌の分布の変化が知られています。善玉菌と考えられているラクトバチルス・ファルシミニスは腸管粘膜バリアの破綻と、精神的なストレスによっておこる視床下部-下垂体-副腎系の活性化を予防する可能性が示されています。」(書籍

「腸内細菌をまったくもたないように繁殖させたマウスは、通常の腸内細菌をもつマウスと比べて非社会的な行動が多くなり、ほかのマウスと過ごす時間が少なくなる。また、不安傾向の強いマウスに大胆な性格のマウスの糞便微生物を移植したところ、移植されたマウスはより社交的な行動をとるようになったことが確認された。」(解説

「ストレスを減らして、ちゃんとしたものを食べよう」という至極当たり前のことなのですが、これは睡眠にも同じことが言えます。この現代の資本主義社会では仕事に文字通り「忙殺」されているとも言えますし、もしくはゲームなどに中毒になっていて睡眠時間が減ってるのかもしれません。

1日に4時間半ほどしか眠らない睡眠不足が5日間続くと、うつ病や統合失調症などの患者に似た脳機能の変化がみられ、不安や混乱、抑うつ傾向が強まることが分かった。(参考

日本人の睡眠時間の割合。40代では6時間未満が半数になる。

(5)教育(語彙・計算)

さてやっと教育の出番が来ました。ただしすでに紹介したように学歴と年収の関係は弱く、よくて若いころのみ影響するのでした。つまり学歴を目指す教育よりも優先されることが色々あることがお分かりになっていることだと思います。

従来の教育の中で重要視されているのは「読み書きそろばん」でしょう。読み書きに関して言えば「語彙の発達」が重要です。

「小学校3年生までに読書に習熟することは、高校を卒業できるか、職業が成功するかどうか最も重要な予測因子。毎年、アメリカの3分の2の子どもは、また貧困層の子どもの80%は、小学3年生の学年末までに読書能力が身に付きません。低収入の家庭の子どもは、そうでない家庭の子どもに比べてその子の育つ環境で聞く語彙も少ないし、3歳までに知る語彙も少ないのです。」(書籍

「調査対象語の語彙540語(辞書語彙270語、新聞語彙270語)のうち「知っている」と答えた語の割合を3000人に対して調査。年収1200万円以上の人は80%以上の単語を知っているのに対して、年収400万円未満の人は65%の単語しか知らないことが分かった。」(参考

「アメリカの0~4歳の子どもを持つ社会経済レベルの高い家庭、そして低い家庭、また様々な家庭において、親子でやり取りする言葉の差異を長期間にわたり調査。その結果、子どもが4歳になるまでに最大で3000万語の言葉数の差があり、言葉数の多かった家庭の子どもほど、その後の学力と相関関係があることが分かりました。そして、もう1つ重要な発見として、学力と言葉数の関係では、社会経済レベルに関係なく”たくさん話した家庭の子ども”は学力も高かった。」(書籍解説

安藤先生の「教育は遺伝に勝てるか」の中でも環境上効果があることの一つに「本の読み聞かせ」があり詳細に分析されています(以下)。

「そろばん」、つまり算数・数学に関しても将来のキャリアに影響しているようです。算数・数学は遺伝の影響もありますが、先に紹介した安藤先生の学力のグラフにあるように家庭環境(通塾など)も影響してきます。

約5000人のアメリカ人の13歳時点で数学の成績が上位1%だった人は35年後に有名な学者やCEOになる確率が高く、数学が苦手な人より4倍も業績が高い。(論文

理科や社会、英語も大事ですが、もしかするとそれよりも語彙や計算のほうを徹底的に学校でもやったほうがいいかもしれません。

というよりむしろ、学校で知的好奇心を伸ばしたり、体育の時間を楽しい方向に充実させたり、家で睡眠をとれてない子は学校で昼寝だけでも提供したりすることによって、人生にいい影響がある可能性があります。IQの高い子がいた場合も適切な対応が求められることになります。

先生方にはいつまでも戦後から続く内容を教えるのではなく、また「正解がないから自分で学ぼう」と教えることを放棄せず、最先端の発達に役立つ部分を自分で調べて教えてもらいたいものです。探究が必要なのはまず先生です。

(6)所属グループ、メンター

次に紹介するのが人間関係、グループ、ネットワーク、コミュニティです。よく親が「あのおうちの子と遊んではいけません」と言いますが、「一人」の子どもなら多様性の理解になりますが、非行少年など「複数人のグループ」だとその言説は一面正しい部分かもしれません。

イエール大学「良くも悪くも所属するネットワーク次第で自分に影響がある。肥満や幸せは伝染する。」(書籍解説動画

スタンフォード大学「1000人の被験者をその幼少期から死亡まで追跡調査したターマン調査というものがあり、健康状態や困難から立ち直る回復力など所属する社会集団によって影響を受けることが分かった。」(参考解説

グループではないですが、グループの中で重要人物となっているメンターの存在も重要です。

教育学者ベンジャミン・ブルーム「世界的に成功したアスリート、科学者、芸術家を対象にした1985年の調査結果によると、ほぼ例外なく国際的レベルに達することを目的として師匠をつけて研鑽を積んでいた」

「1250人の企業幹部を対象に調査を行い、被験者の3分の2にメンターがいて、そうした役員は平均給与が高く、また自分の仕事に対する満足度も高いことが分かった。メンターがいる企業役員の平均給与は、いない人より28.8%も高い。回答した女性役員の場合は、全員にメンターがついていた。」(参考

「メンターを得た起業家はそうでない起業家に比べて7倍の資金を調達し、3.5倍も早く事業を成長させていた。」(書籍

じゃあ誰でもメンターをつければいいのかというと、メンターをつける前に自分でできることを全部やったうえでメンターをつけたほうがいいとのことです。(書籍

(7)親の収入・資産

親の収入が高ければ子どもの将来の収入も高くなるのか?という問いです。そんなの当たり前だろ、と思われるかもしれません。実際かなり相関しています。(論文

親の収入が高ければ子どもの「学歴」が高くなることはよく知られていますが(論文)、学歴が収入にそこまで大きく関係しないことを紹介しました。

また、富裕層の学力が中の上であることを先に紹介し、学力と知能IQの相関もそこまで高くないとなると、子どもも遺伝的な知能IQはあまり高くないことが推測できます。

となってくると親の収入が高くても知能が高くない場合、子どもの収入はランダムで下がってくる可能性を考えます。例えばお金があるから音大や美大に進学したり、研究者になりたくて博士課程にいったりして、収入が下がるというパターンです。

ここまでの情報だけでも何となく推測できるのは、親の外向性・内向性の遺伝・週間が子どもの外向性・内向性を通じて子どもの収入に影響しているのではないか、という仮説です。

つまり、親が高収入でも内向的であれば子どもも芸術やスポーツ、研究などに行って収入が下がるパターンと、親が外向的なら子どもが親の人的資本を継承してパーティに参加するなどの仮説が立ちます。こちらはあくまで仮説なので後ほど検証したいと思います。(ただし研究は欧米の場合は年収がすごく高くなりそうです。)

まとめると以下のようになります。

問い⑤:総括「ビリギャルとは何だったのか」

ここまでの要素を色々まとめると上の円グラフになります。(割合は私が直感的にテキトーに入れていますので参考にしないでください。)

もしビリギャルである小林さやかさんに本当に地頭(知能 IQ)がない場合(オーバーアチーバー)、以下が「ビリギャル」というエナジードリンクの成分なのではないか、と考えます。

・出生地域が日本(名古屋)
・坪田先生というメンターに出会うことができた運の良さ
・メンターの言うことをまず実行するオープンな性格や遺伝
・塾にいける経済的余裕
・努力でき、モチベーションを高めやすい遺伝
・虐待がなく愛着形成された家庭環境
・ストレス耐性のある脳や腸を構成する生活習慣(栄養、運動、睡眠)

ただし何度も言いますが、地頭がない場合、です。地頭(知能)は学力と0.4-0.6というまあまあ高い相関を示しますので、難関大学に受かるのに対して知能は最低でも110~120はあるのではないかと思います。

以下偏差値の人口分布です。ビリギャルが合格したのは慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスSFCの総合政策学部とのことですが、偏差値は79だそうです。偏差値が70以上の場合、全体の2.3%にあたります。

次に知能IQの人口分布です。同じように上位2.3%だとすると知能IQは130以上となり、ギフテッドの水準になります。つまりこれより下の知能だとオーバーアチーバーとなります(悪い意味はありません)。

個人的に思うところですが、もし地頭があるにもかかわらず、「地頭が重要ではない、みんなもできる」と言ってるのであれば、それは詐欺同然です。情報商材と何ら変わりません。なので知能検査を受けていただきたいです。

たとえ地頭がなかったとしても他に恵まれているものがこれだけたくさんあるので、その条件に合わない人に対していうのであれば、ある程度の根拠が必要でしょう。その根拠を探すために海外大学に留学しているのかもしれませんが、留学しなくてもこのように調べることはできます。

とはいえ「とりあえず行動する」は「運のいい人」の強みなので、それ自体はまた何か別のいいことにつながるでしょうし、根拠の薄いnoteがあったからこそ私自身が調べてみようと思ったわけです。社会はそうやって影響しあってできています。

それにしてもやっぱり地頭がなかったとしても、どの辺が「ビリ」なんだろうと思いますよね、、、私の「虐待・貧困・いじめ・うつ・不登校」ですら底辺の世界ではまだマシなほうで、「虐待で死ぬ」とか「境界知能で闇バイトや風俗で捕まる」とか「薬物漬けで何回も刑務所に入る」とか「途上国で人身売買にあう」とか、世の中にはもっと「ビリ」な人たちがいる。「ビリギャル」というタイトルを言われたときに(やっぱりここでも)疑問に思わずそのまま受け入れたという、、、。

頑張れば慶応義塾大学に合格できる「人生の範囲」を「社会のビリ」とは言わないわけで、どちらかというと「高校生のときまで日本の偏差値という基準において何もしてこなかっただけ=ビリ」という定義なんですよね。やっぱり情報商材のニオイがすごいですね、、、。

問い⑥:どんな教育や社会にしたらより多くの人たちが幸せになることができるのか?

ここからは私の個人的な探究テーマに移りますので、付録・番外編です笑。読みたい人だけ読んでください。

私は先にも紹介したとおり、虐待・貧困環境で育ち、運よく脱することができました。検査を受けた通り、おそらく知能が高かったためですが、ストレスによって知能が下がることが分かっているので下がりきらなくて運がよかったです。

社会問題の当事者でありながら、才能が少しはあるそんな稀有な存在である私だからこそできることがあると思っており、18歳からずっと社会活動をしてきました(過去の活動はこちらから)。

私は世界にある色んな要素がお互いにどのように影響しているのかを可視化・計算したいと思っています。今回でいえば「人間の成功の要素は何か?」という部分に絞った内容になりますが、研究テーマはそれよりさらに広いです。

私は、人間がほかの動物と違うから、自分自身が人間だから、「ほかの動物より人間が優れている」とは全く思いません。なので「社会」はないと思っていますし、「人間の営み」も「自然の一部」としか思っていません。

そのため「社会はジャングルと同じ」だと思っています。なのでこの研究プロジェクトの名前を「SORIN(叢林、jungleの意味)」と名付けています。詳細は以下の記事にて。

最後に

もしかしたら虐待を過去受けたことがあって知能が低い人がこのnoteを読んだら絶望を感じるかもしれません。ただ私の考えは違います。

まず成功の条件に合致している人をすぐに見つけてどんどん支援することでどんどん稼いでもらいます。そうすると税収が増えて、公共サービスが充実します。そして成功の条件に合致しない人たちは充実した公共サービスを受けることができるのです。

公共サービスときくと安かろう悪かろうと感じますが、もし生活保護が月20万円もらえたらどうでしょうか?いや30万円でもいいかもしれません。そしたら高額納税者に感謝するかもしれません。

高額納税者も顔が見えて感謝されたらうれしいかもしれません。ここでやっとコミュニティや国家としての仲間意識が生まれるのかもしれません。現状これがないので高所得者は自分と家族だけのことを考えて、タックスヘイブンや所得税の低い国へ移住するのでしょう。

そして今回は年収をメインに見ましたが、幸福に関係する要素はあまり見てませんでした。例えばグリットは幸福度に影響するようです。年収が低くても多額の生活保護をもらいながら幸せな人生を送れたら問題ないかもしれません。

今回の調査で学歴が年収にとってあまり意味がないことがわかりましたが、では勉強しなくていいのか、と考えると違う気もします。もちろん生活を最低減成立させるために、スキルや気を付けるべきことを教育の中で学ぶことは大事です。

また学力に影響を与えるのが知能(遺伝)よりも家庭(共有環境)だとすると、学校・大学の同級生というのは同じぐらいの家庭環境=文化や経済が同じととらえることもでき、同じような友達・仲間を見つけたいなら学力を鍛えるのがいいのかもしれません。

ただ小説を読んで批評したり、歴史を知って過去に思いをはせたり、宇宙の不思議を探究することは、心の豊かさや人生の楽しみとしてとらえることが大事なのではないかと思います。また、それが個人の知的好奇心をはぐくむことができれば、運のいい人も増えることでしょう。

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