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日本人は真面目ではない、不安なだけ(性格の国際比較)

こんにちは、トキワです。

突然ですが、私自身、社会問題の当事者でした。

貧困家庭育ちやいじめなどの経験があります。そのため20代はずっと社会問題の研究をしてきており、「悪者図鑑」という本の出版にまで至りました。

悪者図鑑は「人間にどんな悪い影響があれば悪者になるのか」という研究成果なのですが、30代になってたまたま教育業界にくるようになり、現在は「良い影響」も調べています。

その結果、先日以下のnoteを書きました。

いわゆる「才能(遺伝)と努力(環境)どっちが大事?」という問題ですが、調べたことですごく色々分かってきて楽しかったです。

特に面白いと感じたものの一つに「性格(Personality)」があります。

性格診断というと16personalitiesのMBTIが有名ですが、学術的にはそこまで信頼されていません。信頼されているのがビッグファイブです。

ビッグファイブとは言葉の通り、性格を5つの要素で表現します。

Openness    :開放性(好奇心、美的感性、想像力)
Conscientiousness:誠実性(責任感、ルール)
Extraversion   :外向性(社交性、自己主張、反対は内向性)
Agreeableness  :協調性(思いやり、敬意、信用)
Neuroticism   :神経症傾向(不安、抑うつ、情緒不安定)

今回はその性格の国際比較を紹介しますが、やっぱり日本に住んでいる以上、「日本人の性格」に焦点を当てていきます。

「日本人ってやっぱり~~だよね」というイメージが色々覆されたので紹介していきます。

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日本人は真面目じゃないし協調性もない、陰キャで不安症

では早速、日本人のビッグファイブから紹介していきます。参考にしている論文はこちらです。56か国、約1万8千人を対象に調査されています。

1つ目は外向性(Extraversion)です。分かりやすいように一番上に日本(Japan)を置いてますが、平均より下の内向的な性格です。内向的だから「陰キャ」と表現していますが、内向的なことの良さはまた後ほど書きます。

外向性(Extraversion)

2つ目は協調性(Agreeableness)です。「和を以て貴しとなす」「空気を読む」の文化だとよく言われますが、実際のところは平均よりもかなり低くでています。

あれ、じゃあ日本は何で他人に合わせてるのでしょうか?

協調性(Agreeableness)

3つ目、神経症傾向(Neuroticism)です。これがなかなかの衝撃だったのですが、日本は国際比較でダントツ1位です。日本人の大多数はすごく不安を感じています!

おそらく人と違うことをして何か言われるのが不安だったり、だからコロナ後もずっとマスクをつけていたり、治安がいいのも「何となく変な人を排除」があるからだったりするのかもしれません。

神経症傾向(Neuroticism)

4つ目は、誠実性(Conscientiousness)です。こちらも国際比較でダントツの最下位で、「日本人は真面目」というイメージも、ただ実は不安なだけだったというのが分かりました。

誠実性(Conscientiousness)

最後が開放性(Openness)で、こちらは香港とほぼ同じ値で、最下位です。アニメや漫画など創造性豊かな国民かと思えば、純粋な知的好奇心は実はかなり低いことが分かります。

開放性(Openness)

つまりまとめると、日本人は、真面目ではなく、協調性もなく、新しいものに興味ももたず、ただただ内向的で不安症な国民性なのです。

都道府県ごとの分析・調査も行われています(論文)。いわゆる県民性ですが、地方のほうが不安傾向にあり、都会のほうが外向的・知的好奇心・誠実というのが分かりますが、県によっても違います。

左上:外向性、右上:神経症、左真ん中:協調性、右真ん中:開放性、一番下:誠実性

さらに神経症傾向&勤勉性と、内向性&外向性でまとめた図が以下です。51か国、1万2千人以上に自分がよく知っている他人を評価した結果となっています。この調査でも日本は「真面目ではなく、内向的で、不安」というのが分かります。

論文はこちら

ただ生物の進化の過程で、こういう性格になった側面ももちろんあるでしょう。例えば日本は地震や台風といった自然災害の影響を受けやすい場所に位置しており、それらを対策するために不安を感じやすくなったのかもしれません。

現に不安を感じやすい一つの原因となっているのがセロトニンという脳内の神経伝達物質です。セロトニンの量が少ないとか、感じづらいとか、処理しづらいとか様々な理由で、不安になりやすく、さらにこれらは遺伝的に影響を受けます。

例えば赤ちゃんが泣きやすいか泣きづらいか、周囲の音などに敏感かどうかによって変わり、さらにその敏感かどうかはセロトニンの遺伝によっても決まってくるようです。(参考

生物の進化の過程で、必要な遺伝が残ってきたという意味で、国際的にみても日本人はセロトニンの特定の種類が多い(この種類は不安になりやすい)ことも分かっています。(ただしセロトニンの個人差が性格に影響するレベルかどうかは疑問)

5-HTTLPRのS型アレルと、個人主義・集団主義のグラフ(参考

不安で、自尊感情も、自己肯定感も、幸福度も低い

この日本人の不安は他の調査では別の形で表れています。

以下は、「自分をどれだけ愛せているかを測る指標」である自尊感情を調査した結果のグラフです。日本はダントツの最下位です。

論文はこちら

この自尊感情、他の調査では時系列での分析もされています。1980年代から2013年に日本で刊行された論文を分析した結果が以下ですが、年々下がっているのが分かります

小塩真司・岡田涼・茂垣まどか・並川努・脇田貴文( 2014)「 自尊感情平均値に及ぼす年齢と調査年の影響 ─ Rosenbergの自尊感情尺度日本語版のメタ分析─」『 教育心理学研究』 62, 273-282.

別の時系列データも紹介します。YG性格検査という検査が日本ではもっとも長く広く使われてきたのですが、以下は100本以上の論文のメタ分析の結果になっています。

特に上のグラフはネガティブな感情に関連するものが多いのですが、1980年代ごろに一度下がるものの、再度増加し、不安さが強くなっていることが分かります。


小塩真司・市村美帆・汀逸鶴・三枝高大( 2019)「日本における情緒不安定性の増加─ YG性格検査の時間横断的メタ分析─」『 心理学研究』 90, 572-580.


そして、不安や自尊感情よりも有名なのが、日本人の「自己肯定感」です。日本財団の18歳意識調査で「誇れる個性」や「憂鬱」などでネガティブな結果となっています。

日本財団の18歳意識調査

さらに、これも有名ですが、World Happiness Report 2023(世界幸福度レポート)でも日本は比較的低い順位であり、2023年は47位となっています。

GDPは4位、一人当たりGDPは32位に比べるとさらに低い

性格は遺伝要因もありますが、環境要因もあり、だいたい半々です(以下参考)。つまり不安などネガティブな感情が高まっているのは環境の影響もあるということです。環境については最後に紹介します。

ビッグファイブは「NEO-PI-R」ですが、他にも性格診断の方法があります。

日本人は、不真面目だけじゃなく、優しくもない

ここまで様々なグラフを紹介しましたが、これらは以下の本を参照しています。

この本の中で他にも日本人の性格に関する興味深い記述があったので、紹介したいと思います。

性格研究のなかに「ダークトライアド」と呼ばれるものがあります。これは自己愛症(ナルシシズム)、権謀術数主義(マキャベリズム)、精神病質(サイコパシー)の3つのことです。

それぞれの意味は以下になります。

ナルシシズム:成長・発達の過程において他者に向けられるようになる愛情や愛着が、自分自身にだけ向いているような状態がナルシズムであり、誇大性・高い自尊心・エゴイズム・共感の欠如などの特徴

マキャベリズム:対人操作・搾取・道徳観に対する冷笑的無視・自己中心・欺瞞・超合理的思考に基づく行動などの特徴がある。

サイコパシー:継続的な反社会的行動・衝動性・利己主義・無反省という特徴がある。

この国際比較を行った研究があります。

アメリカ、オーストラリア、ブラジル、ハンガリー、ロシア、そして日本で、ダーク・トライアドの3つの性格特性が測定されていた。そして結果から、日本はこれらの6カ国のうちで、ナルシシズムはもっとも低く、逆にマキャベリアニズムとサイコパシーはもっとも高いことが示された。
(略)
ナルシシズムのような自分自身に対する強いポジティブな感覚はやはり低いようである。これは、先ほどの自尊感情の結果とも一致している。その一方で、マキャベリアニズムとサイコパシーといったような、自己中心的で人の 痛みがあまりわからないような性格 は、日本人の特徴のようである

同書より

稼げる性格は?健康的な性格は?ビッグファイブそれぞれの特徴

「不安だとダメなの?」「内向的じゃダメなの?」と思った人もいるかもしれませんが、そういうことではありません。

それぞれの性格に良い面と悪い面があり、それは環境や目的によって変わってきます。先に書いたとおり、自然災害に対してちゃんと対策ができるのは不安が強いからかもしれません。

それぞれの特徴を紹介していきます。

外向的(外向性が高い):年収が高くなりやすい参考)、集会へ参加する頻度が高い、お酒を飲みに行く傾向がある、強盗や殺人の発生率の高さに関連、田舎に住んでいると引っ越し確率が高くなる

内向的(外向性が低い):1回1回正確に分析して次に活かす、粘り強い、スポーツ選手や音楽家など黙々と行う仕事に向いてる(参考)、大学レベルの勉強でも成績が高くなりやすい(認知能力よりも重要)(書籍)、リモートワーク合う、道徳倫理に敏感、罪悪感感じやすい、ギャンブルなどやらない、都市では社会性が低い人のほうが引っ越しをする確率が高くなる

協調性:平均寿命が高い、強盗発生率や殺人発生率が低い、年収が低くなりやすい参考)、気難しいリーダーは協調性が低い

勤勉性:学業成績が高い(知能と同じぐらい関連する)、仕事のパフォーマンスが高い(訓練でうまく技能が向上していく、人事上の評価が高い、生産性が高い、年収が高い)、宗教に関連する活動が多い、粘り強い(GRIT)、神経症が高いと完璧主義になりやすい、誠実性が高いと柔軟性の欠如になりやすくクリエイティブな成果を出しづらい(重要度の低い職種ほど誠実性が重要であり、指導的立場の仕事には誠実性はあまり重要ではない)

開放性:集団内の芸術やエンターテインメント・特許が多い、幸運だと感じてる人が多い、マリファナの使用率が高い、合法的な堕胎が高い、同姓の婚姻率が高い、県外に転居したいと思いやすい、実家を離れて上京しやすい、年収との相関は見られない

神経症傾向:心臓血管疾患での死亡率が高い、ガンでの死亡率が高い、平均寿命が低い、家庭での運動量が少ない、年収が低くなりやすい

主に同書、内向型人間の時代TALENT。出典が知りたい人はTwitterなどでご連絡ください。

そのほかにも様々なことが関連しています。興味のある方は以下をご覧ください。また引き続き私のほうでも調べてお知らせします。

相性のいい性格は?結婚したら性格変わる?環境による性格への影響

先ほど遺伝と環境による性格への影響は半々だと書きました。ではどんな環境がありうるのでしょうか?「性格とは何か」の中でも紹介されています。

国におけるある性格特性の値が、その国の何に関連してくるのかを考えることも重要である。ある国では外向性の平均値が高く、別の国では低いという現象があるとして、それが現実社会の何にも関連しないのであれば、その平均値の違いにはあまり意味はない。やはり実際の社会的な活動との関連が示されて初めて、そこに意味が生じる。

先ほど見たビッグ・ファイブの国際比較調査では、各国のGDP(国内総生産)、ジニ係数(所得配分の不平等さ)、人間開発指数(人間的な生活の度合い)と国レベルの性格特性との関連も検討されている(論文)。

そして、ジニ係数については関連が見られなかったものの、GDPと人間開発指数の高さが外向性、開放性、協調性の高さに関連することが示されている。また主観的幸福感の研究によると、国の主観的幸福感の平均レベルは、1人あたりGDPや購買力などとプラスの関連、市民権や権利の侵害とはマイナスの関連、不平等な格差とはマイナスの関連を示していた。全体的に、幸福感は人々の生活の中での平等や生きやすさに関連していることがうかがえる。

その一方で、自尊感情の国際比較調査研究によると(論文)、国レベルの自尊感情は平均寿命、成人の識字率、1人あたりGDP、そして人間開発指数ともほとんど関連を示さなかった。

「性格とは何か」

主に経済状況との相関関係で分析されています。ここで注意したいのが、「性格が先か、環境が先か」ということです。

つまり「経済が上手くいってるから、外向性・開放性・協調性が上がるのか」、もしくは「外向性・開放性・協調性が高いから、経済が上手くいくのか」ということです。

同書では両方の影響がありうるとされています。つまり、

1、性格(遺伝)が特定の行動をし、
2、その行動が他の人の行動に影響し、
3、全体としてその地域やコミュニティの文化となり、
4、その文化がまた人の行動に影響し、
5、その行動がまた性格に影響する
(次世代の子どもにも何が遺伝されるか選択されうる)

とても複雑な関係性が見受けられます。

経済以外にも、特に神経症(不安)に関しては、学校や職場で何等かのストレスを抱えてないか、教育やメディアでネガティブな情報を受けてないか、自然災害や治安など様々あるでしょう。

基本的に性格は、家庭環境(共有環境)の影響はかなり低いのですが、親による愛着形成(虐待やマルトリートメント)だけは大きく影響を与えます。愛着障害もしくは軽度なものは3分の1ぐらいいると言われてるとすると、環境要因として大きいかもしれません(以下参考)。

また、ライフスタイルの変化や身体の成長・衰えによる性格への影響もあるようで、年齢ごとの性格の変化も調査・分析されています。

外向性:10代後半に下がって、その後ほぼ一定。男性は高齢になって増加
神経症:特に女性は10代後半で増加し、年齢とともに減少
開放性・協調性・勤勉性:年齢とともに増加

若いときは性格が変わりやすく、年齢とともに性格は安定します。MBTIをやったことがある人は、その時の気持ちによって結果が変わったこともあるかと思います。

最後に紹介するのが恋愛・結婚に関する性格です。引き続き「性格とは何か」から引用します。

夫婦の性格の類似性を検討した研究がある(論文)。この研究では、248組の夫婦に対して性格や価値観と、関係の満足度の調査が行われている。そして結果を見ると、価値観や性格のプロフィールが夫婦で似ているカップルほど、関係の満足度は高くなる傾向が示された。

また、恋愛中のカップルの目標の類似性を検討した研究もある(論文)。125組のカップルに調査を行ったところ、女性においては目標のパターンが類似しているほど、相手との関係に満足しやすいという結果が報告されている。また、スリルのある活動に参加する、良い活動をする、宗教上の教義を守る、友人を大切にするといった項目について、カップルはカップルではない組み合わせより互いに似ていることも示されている。

さらに、多くの研究をまとめてメタ分析を行った研究もある(論文)。まず、神経症傾向が低く協調性と勤勉性の高い人は、カップルの相手に満足しやすい傾向が見られた。そして、カップルの類似性と満足度との関連を見ると、39のうち31の研究では満足度を高める効果がないという報告がなされている一方で、6つは類似しているほど関係が満足する、2つは類似しないほど満足するという報告となっており、一貫しないという結果であった。

この点については、結婚期間の長さが関連しているかもしれない。749組の日本人の結婚したカップルを対象とした研究では(論文)、結婚してからの期間がより短いカップルでは互いの性格の類似性が関係満足度を高める一方で、期間が長くなるとその効果が見られなくなる。

実際に、恋愛を経験したり結婚したりすると、神経症神経症傾向が低下し、外向性が上昇するという結果が報告されている(論文)。ただし、その変化は大きなものとは言えないのだが。

「性格とは何か」

お互いの性格が似ている方がよさそうですが、結婚して長い期間たつと関係なくなるそうです。次に浮気・不倫について。

勤勉性が低いと浮気の可能性が高まることが明らかにされた。

一方、自分ではなくパートナーの協調性と勤勉性の高さが自分の結婚生活の満足度を高め、その満足度が自分の浮気の可能性を低くしていくという関係も示された。

たとえば夫の浮気の傾向に対しては、夫本人の性格特性より妻の神経症傾向とナルシシズム傾向の高さ、開放性の低さが影響していた。妻の浮気傾向に対しては、本人(妻)の外向性と夫の神経症傾向の高さが影響していた。

「性格とは何か」

男性である私が「確かにこれはわかる」というと女性から非難がきそうなのでノーコメントです笑。ただお互いに神経症・不安が相手に悪影響を与える可能性がありそうです。妻の不安はヒステリー、夫の不安はモラハラに繋がりそうです。

最後に、まだ気になってること

今回の調査・研究でさらに調べたいのが、
・MBTIとビッグファイブはどのように相関するのか
・ビッグファイブに関する性格診断アプリの開発
・どんな環境ならそれぞれのビッグファイブを強めたり弱めたりするのか
・恋愛の相性だけでなく、仕事の相性や友人の相性のいい性格はあるのか
・職業ごとの最適な性格特性は何か
・集団ごとに性格タイプの最適な割合(例、誠実な人が何割、神経症の人が何割)

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引き続き「人間はどんな影響で良くなるのか、悪くなるのか」を研究していきますので、興味ある方は以下Twitter(X)フォローもお願いします!

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