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腹式呼吸 vs 胸式呼吸

私たちは普段、無意識に呼吸をしています。代表的な呼吸法が腹式呼吸と胸式呼吸ですが、そもそも何が違うのでしょうか。腹式呼吸の方がリラックスする? 胸式呼吸の方がいっぱい吸える? お腹が膨らむのが腹式で、胸が膨らむのが胸式? なんとなくは知っていても、意外とぼんやりとしたイメージしかない呼吸法。今回はその違いについて探っていきましょう。

あなたの呼吸は腹式寄り? 胸式寄り?

片手を胸の中央、もう片方の手をおなかに軽くそえます。手の指を楽に伸ばした状態で、そのまま目をつぶって少し呼吸を観察してみましょう。胸とおなかのどちらの方がよく動きますか。

  • 胸のほうが多く動いた人=交感神経優位の胸式呼吸寄り

  • おなかのほうが多く動いた人=副交感神経優位の腹式呼吸寄り

  • どちらの動きも感じられない人=かなり呼吸が浅い可能性あり!

呼吸運動を行う際、首から下腹部にかけていくつもの筋肉が連動しあって呼吸しています。中でも「横隔膜」「肋間筋」は二大呼吸筋と言われ、肺の動きをコントロールする代表選手たちです。

横隔膜が主役!「腹式呼吸」

腹式呼吸はまたの名を横隔膜呼吸といいます。よく「お腹に空気を入れるように」と表現されますが、吸った空気は肺に入っていくため、おなかに位置する臓器(胃や腸など)にはもちろん空気は入りません。

横隔膜というと、その名前から薄い膜のようなものを想像しがちですが、実際はドーム状の形をした歴とした筋肉で、その厚さは平均して3~5mmほど。焼肉でいうハラミです。横隔膜が収縮することでそのドームが下方に移動し、腹腔内臓器も下方に移動し、お腹が前方に押し出されることから腹式呼吸と呼ばれています。

腹式呼吸のメリットはコスパの良いところ。力持ちの横隔膜は、シンプルな上下運動だけで酸素を取り込むことができます。動きが少ないため酸素消費量も少なく、その分全身への酸素供給量が増えます。全身の酸素が足りているため、自然と呼吸数も少なくすみ、体も疲れにくいという好循環を生みます。

そしてもう一つ、横隔膜は自律神経の密集地帯のため、刺激されることでリラックス効果があるというメリットもあります。その仕組みは以下の通りです。

息を吐くうちにお腹のスペースが小さくなると静脈が圧迫され、血液が心臓に戻ってこなくなります。すると、血液を回すための交感神経にスイッチが入ります。ここでお腹をゆるめて息を吸うと、交感神経の働きで一気に血液が心臓に戻ってきます。そこで身体があわてて副交感神経を活性化させ、バランスをとろうとします。その流れによって結果的に、副交感神経の働きが強まっていきます。

リラックスする呼吸法とは?

力まない程度に吐く息をゆっくりとすると、横隔膜に集まった自律神経を刺激し、副交感神経が優位になり、リラックスすることができます。緊張した時に呼吸を深くすると心が落ち着くのは、横隔膜を動かすことで、自然と自律神経を整えていたのですね。ただし深くいっぱい吸おうとして体に力が入っては本末転倒。「体が力まない程度にゆったり」がポイントです。

呼吸運動で大活躍、横隔膜と肋間筋

肋間筋がメインの「胸式呼吸」

胸式呼吸とは、肋間筋といくつかの呼吸補助筋が協力して​​、胸郭を大きく広げたり狭めたりして行われる呼吸法です。肋間筋は肋骨と肋骨の間の筋肉を指します。​​吸うときに胸が斜め上方向に膨らみ、肩も上下します。激しい運動をした時や過剰に気構えた時など、緊張した時に起こるのがこの呼吸の特徴です。

胸式呼吸のメリットは、胸の筋肉だけでなく肋骨周辺の腹横筋も意識して行うことから、コアが鍛えられ、姿勢・カラダの歪み改善にもつながること。​​また交感神経が優位になるため、体をアクティブに動かしたい時や何かに挑む時、朝スッキリ目覚めたい時などに意識的に取り入れると効果的です。交感神経が活発化した状態での筋トレには、パフォーマンスの向上や体幹の安定も期待できます。ただ、腹式呼吸に比べて、胸式呼吸は酸素を全身に取り込める量が少ないため、安静時に行う呼吸法としては燃費が悪いのがデメリットです。

安静時のアスリートの呼吸は休まっていない?!

エクササイズのためには、筋肉が動きやすくなる交感神経の効果が役立ちますが、最近の研究から、安静時になっても興奮の胸式呼吸から休息の腹式呼吸に戻れていないアスリートが多い、ということが明らかになりました。

筋肉のクールダウン同様、呼吸も意識的にリセット

立命館大学がアスリート1,993人に実施した調査から、約90パーセントのアスリートが安静時も非効率的呼吸パターン(胸式呼吸)である、という結果が出ました。

今回の研究成果により、アスリートの健康管理やトレーニングにおいて、呼吸パターンに着目することの重要性が示された。呼吸機能の低下は、酸素という栄養素を脳に供給することを妨げてしまうため、脳は疲弊して、心身の状態を上手くコントロールすることができなくなってしまう。大多数のアスリートが非効率的な呼吸パターンを有しているということは、安静時であっても心身が絶えず緊張または興奮状態にあり、疲労が蓄積しやすくなっている可能性が考えられる。

約90%のアスリートが、安静時に「胸式呼吸」であることが判明-立命大

睡眠が浅かったり、練習の疲れがなかなか取れない時は、呼吸の中に回復のヒントがあるかもしれません。日常のふとした時に自分の呼吸をチェックしてみたり、緊張したイベントの後や激しい練習の後は特に、筋肉をクールダウンするのと同様、呼吸もゆったり深く軽くすることで整えて、「呼吸リセット」してみてはいかがでしょうか。

腹式呼吸と胸式呼吸。どっちが良くてどっちが悪いというものではなく、生きていく上ではどちらも不可欠の呼吸法です。それぞれの特性を知り、必要に応じて意識的に呼吸法を変えてみることが、健康に生きていく鍵となりそうです。

文・廣浦百合子
コンテンツクリエイター/認定整体師
Sunbears マーケティングチーム

【参考文献】
自律神経、呼吸法で調整
胸腹式呼吸
胸式呼吸のやり方と、集中と体幹の安定をもたらす効果とは?
約90%のアスリートが、安静時に「胸式呼吸」であることが判明-立命大

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