見出し画像

『砂の器』と木次線 出版までの道のり(1)

 いつもありがとうございます。このブログでは書籍【『砂の器』と木次線】に関する情報をお伝えしています。本の概要をお知りになりたい方は、以下の記事をご参照ください。

 本書について、いろいろとご質問をいただくのですが、多くの方から聞かれるのが「本を書くのにどれくらいかかったのか?」というお尋ねです。
 結論から申し上げますと、本を書くことを思いついて作業を始めてから実際に出版されるまで、約1年5か月かかりました。その間、どのような作業をどういう手順で行ったのか、何回かにわけてご説明したいと思います。
 取り立てて変わったことはありませんが、何かのご参考になるようでしたら幸いです。


最初の3か月にやったこと

作業開始から発売までのスケジュール

 上の表は、本書を書こうと思い立ってから発売までに行った作業をスケジュール表に落とし込んだものです。2022年8月に作業を始めて、2023年12月15日に刊行にこぎつけました。今回は、最初の3か月に行ったことを述べたいと思います。

準備①カット表

 本書を書くための準備作業を始めたのは、2022年の8月でした。
 最初にとりかかったのは、映画『砂の器』のDVDを観ることでした。作品そのものの鑑賞として2時間23分の映画を最初から最後まで通して観ることももちろん行いましたが、それだけではありません。
 今回の本では、映画の前半と後半にそれぞれ1回ずつある亀嵩パートに絞って考察を行うことを、最初から決めていました。なので、2つの亀嵩パートについては、1カットずつ時間(タイムコード)を記録して、それらを「カット表」にまとめました。
 漠然とした感想や論評ではなく、具体的にどのシーンのどの映像の話をしているのか、読む人にわかりやすく伝えるためにも、筆者自身が考察の対象をカット単位で精緻に把握する必要があると考えたからです。

カット表

 作成した「カット表」は本書にも収録していますが、そもそもは筆者が対象を把握するための作業用ですので、本を読む際には無視していただいても全く支障はありません。文字も小さくて、読みにくいですし…。ただ興味のある方にとっては、作品を理解するための一つの材料にしていただけるかもしれません。

準備②資料収集

 映画『砂の器』には、原作者の松本清張、監督の野村芳太郎、脚本の橋本忍、山田洋次など、そうそうたる顔ぶれが関わっていますが、まずはこれらの関係者が『砂の器』について何を語っているか、書籍や雑誌記事などを調べるところから始めました。また、木次線沿線で行われたロケに関して報じたものはないか、当時の新聞記事なども探しました。
 この頃、筆者は東京に住んでいましたので、国立国会図書館(東京本館)に何度も足を運びました。夏の暑い盛りは特にそうですが、東京で一人で時間を過ごす場所として、国会図書館ほど素敵なところはそうそうないと思います。エアコンも効いていて静かで快適ですし、お金も資料のコピー代くらいでほとんどかかりません。
 何より資料が格段に充実しています。一般的な図書は本館2階、雑誌は新館2階。新館4階の新聞資料室では、全国紙の地方版や地方紙の昭和の頃の紙面が、大抵マイクロフィルムで閲覧できます。国鉄関係の資料は新館3階の議会官庁資料室にあります。

 資料収集(リサーチ)は最初の3か月だけでなく、原稿が完成するまで何度も継続して行いました。

準備③構成

 上の①②を通して、ある程度情報を集めつつ、本の全体構成を考えました。切り口が違う4つの章を立て、その前後に「はじめに」(執筆の動機など)、「おわりに」(まとめ)を置くことにしました。

準備④企画書

 出版社に「本を出してください」とお願いするための出版企画書を作成しました。タイトル、キャッチコピー、企画趣旨、筆者プロフィール、ターゲットとする読者層、出版希望時期、原稿完成予定などを、A4で2枚程度にまとめました。
 これを③の構成のメモとあわせて、松江市のハーベスト出版にメールで送りました。2022年の10月のはじめだったと思います。ハーベスト出版のことは、以前から地域を題材とした良い本をいろいろと刊行されているのをなんとなく知っていましたので、相談させてもらいました。

執筆①「はじめに」「第1章」の仮原稿

 企画書と構成メモだけでは、どういう本になるのか、出版社としてもイメージがつかみづらいのではないかと考えました。そこで「はじめに」と「第1章」だけは、この時点で書ける材料をもとに、仮の原稿をとりあえず書きました。先に企画書などを担当者に読んでもらってから、「実は仮原稿もあります」と伝えて、改めてメールで送りました。
 そして10月末にアポをとって松江の出版社を訪ね、最初の打ち合わせを行いました。(続く)


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?