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日記 1/29~ 嘘と正典

1/29(日)

京都駅周辺デート。つけ麺を食べて大垣書店を巡り茶をしばいた。

昨日「ユートロニカのこちら側」を読み終えたので、次に読む本として小川哲「ゲームの王国」を探すが、「君のクイズ」「地図と拳」など単行本は売っているのに、文庫本は一冊も置いてなかった。直木賞を受賞したのだからたくさん在庫があってもいいはずなのに。結局どこの店舗にも「ゲームの王国」はなかったので、直木賞の候補作になった「嘘と正典」という短編集を買うことにした。あとプルーストを読む予定もないのに、柿内正午「プルーストを読む生活」に惹かれた。「プルーストを読む生活」を読む生活がしたい。膨大な量の長編小説とじっくり向き合いながらこういう読書日記を記す生活ってきっと楽しいだろうな。すごく贅沢でかけがえのない時間が過ごせると思う。

残りの時間はベローチェで過ごした。高3の受験勉強で忙しかった頃、馬鹿でかい地球儀を囲んだ円形のカウンターがあって、そこがお気に入りの席だったなと思い返す。
甘ったるい抹茶ラテを飲みながら彼女とたわいのない話をした。最近好きな音楽の話など。自分はXGという日本の7人組のHipHop / R&B ガールズグループと、そのメンバーのCOCONAさんを布教をしておいた。日本人離れしたパフォーマンスと面構え、ラップセンスに一回観ただけで心を鷲掴みにされる。彼女は大比良瑞希「Little Woman」というアルバムが好き。緑の謎の生物が愛くるしくて印象に残る。

今日の川柳。日々汗水を垂らして、自分で自分を囲う籠を作っているような気がしてる。

1/30(月)

午後3時からT研究室のグループミーティング。研究の進捗を生めていないことが心に重くのしかかってきて、朝なかなか起きれない。無駄にゴロゴロとベットの上で過ごし、なんとか正午から作業を始める。seq2seqモデルを用いた時系列予測手法の実装を8割ほど完了するが、肝心のミーティングには間に合わず。なんとか誤魔化しながら担当教員のN先生に報告した。終わりに就活のことについて聞かれ、博士後期課程に進みますと宣言した。もうその道で進むと決めているのだが、その決意は豆腐のようにゆるゆる。道端の土壌のような信念を持ちたい。

小川哲「魔術師」を読んだ。50ページほどの短編。タイムトラベルをするという演目を披露したマジシャンのお話で面白かった。まず小川さんの下調べがすごい。四つ玉、スライハンドなどのマジック用語や歴史的なマジシャンについて知った。そして世界観や設定の作り込みが緻密で、安心して物語に身をまかせることができる。タイムトラベルのパラドックスについてしっかりと言及されていた時は信頼できる作家さんだなと思った。惹きつけられるような謎を残す終わり方も好きで、その解釈をどうするか自分の中でうまく整理がついていないけれど心を掴まれた。マジックでは演出が肝心だが、小川さんも小説における演出が凄まじい。

以前からTwitterで交流させてもらっているTさんからツイキャスで本の話をしようとお誘いを受ける。読書を趣味とされている方とお喋りをするのは初めてでとても楽しみだ。ただ不特定多数の人に聞かれる形で話をするといった経験が全くないから、どんな自分が現れるのか予測不能で不安ではある。けどいい機会をいただけたので思う存分本について語りたい。

最近詠んだ川柳を母に見せたところ、「なんかあんたが可哀想になってきたわ」と言われた。確かに暗い句が多いけれど、自分としてはすごく楽しみながら詠んでいる。今回の句は、ハンカチを落とすという行為とロケットが自ら重さ(質量)の一部を後方に射出しその反作用で前に進んでいく様子を重ねようかなと思ったけれど、自分の実感と乖離しそうだったので、実直に「命懸け」の五文字を最後に配置した。素朴だけど好きな句が詠めた。

1/31(火)

インターン実習5日目。岩田具治「トピックモデル」を読み、自然言語処理でよく扱われるユニグラムモデル、混合ユニグラムモデル、トピックモデルについて学ぶ。打ち合わせは朝と午後に2回。午前中に出勤簿の書き方を教わり、午後でSさんからデータセット作成の依頼を受ける。画面を共有して依頼内容を説明されている時、「静的解析」が「性的解析」に変換されてお互いに爆笑した。Sさんは「たとえ個人的に調べてたとしても、会社のPCで調べるわけないんですけどね〜」と弁明していた。これがきっかけで少し壁を感じていたSさんと一気に打ち解けられたような感じがあった。

小川哲「ひとすじの光」を読み始める。競馬の馬の血統についてのお話。スペシャルウィークという馬が出てくるので調べてみたらウマ娘が出てきた。スペシャルウィークは主人公的なポジションの馬みたい。

今日の川柳は五七五の形を崩してまで「を」を入れるかどうかで迷ったけど、入れると俗っぽさがいい感じに抜けるような気がした。

2/1(水)


図書館で「トピックモデルによる統計的潜在意味解析」を借りる。極めて良書。抽象的な数式だけでなく具体例と共に説明するってやっぱり大事。論文交流会が10:00からあったけれど、発表者のT君の体調不良によりなくなったので、11時まで図書館で読み耽った。

S研にいくと今日は人が少なかった。H君からコロナに罹ったとの連絡がきたのでおそらくT君もコロナかもしれない。自分も危険だ。

帰りの電車で小川哲「ひとすじの光」「時の扉」読了し、少しの時間を使って丸善に寄った。「はじめまして現代川柳」という本が良さそう。今自分の中では川柳にすごく夢中なのだけど、実際に読んだ句は平岡直子さんの句のみなので、川柳という形式が好きなのか平岡さんの感性が好きなのか確かめる必要がある。そういう意味でも様々な柳人の句が収まったこの本はうってつけだと思う。

この一ヶ月、樺沢紫苑「アウトプット大全」で学んだ「1冊のノートにすべてをまとめる」という教えを実践している。読書や勉強のメモ、日記、プレゼンの構想など、思考の軌跡を何でも書き殴っており、そのことについてツイートすると憧れの切実さんからリプがきて舞い上がる。最近読書垢の人たちと少しずつ交流ができていて嬉しい。

https://www.youtube.com/@SETSUZITSU


今日の句は「ひとすじの光」を読みそこから思考を飛躍させて、世界から戦争を無くすための手段について考えみた。

2/2(木)

S研出勤。杉山聡「分析モデル入門」の自然言語処理の章を読み、Deep Transformerの実装を試みる。訓練データの用意に苦戦し、諦めてXAIを動かすことにしたがライブラリのヴァージョン関係でつまづく。不毛な時間を過ごした。こんなことならずっと書籍で勉強している方がよかったなと後悔する。研究室からの帰り際、B4のT君と初めてお話ができた。T君はB1の頃からS研にいる古参。B4なのに卒業研究をしながら、国内の学会で発表する論文を書き上げていてすごい。

小川哲「ムジカ・ムンダーナ」読了。音楽を通貨とする島の話。小川さんのどの短編も重層的な構造で細部への拘りを感じる。そして競馬、マジック、音楽と色んなジャンルの物語を書かれるので、「嘘と正典」を読んでいると一冊の文芸誌を読んでいるような気にさせられる。

今日寝る前に考えたこと。ちゃんと頭で考えた上で言葉を吐きたいなと思う。人と喋っているとそれがなかなかできなくて、吐く言葉はより空虚で自分のものじゃないみたい。そしてそのことに喋っている時は気付けなくて、終わってから後悔することが多い。間を繋ぐだけの脊髄から発しているような言葉は吐かないということを自分に課したい。

2/3(金)

インターン実習6日目。頂いたデータセットに間違いがあったため、計測時間を修正して再度加工を行う。ついでにSさんにお願いされていたデータセットも作成する。

14:00からSさんと打ち合わせ。計測時間を修正しても残存した例外データについて議論し、じっくり話し合いをしながらお互いの理解を深めていくと、以前までは少し感じていたSさんへの怖さが和らぐ。議論がとても楽しい。イメージの共有に不可思議な表現を使って一緒に笑い合ったり、的確な疑問を投げかけて良い質問だねと言ってもらえて気分がぶち上がった。

今日は節分なので家族で恵方巻きを黙って食べる。今年の方角は南南東微南。自分だけは紫蘇いりロング鉄火巻きを食べた。早めに食べ終わった母がジロジロと見つめてきて笑かせようとしてくる。豆撒きは前の家の車が帰ってきたと同時に「鬼は外!!」と家族みんなで豆を投げつけ即座にドアを閉めた。

小川哲「最後の不良」を読んだ。「流行」をテーマにした面白い短編。自分の好きぐらいは他人の目、いや自分のもう一つの目になんか晒したくない。

2/4(土)

AI・データサイエンス概論講座最終日。自然言語処理で使われるword2vec, RNN, Transformerなどの深層学習モデルとGAN(敵対的生成ネットワーク)について学ぶ。モデルを実装したサンプルコードも配布されたので自学自習が捗る。

22:30より読書垢のTさんとツイキャス。ライブ配信でお話しするといった経験がなくて少し緊張したけど、すごく楽しい時間が過ごせた。本を話すことに一切の遠慮がいらないのって初めてで、開放感があってすごく気持ちいい。ただ自分をよく見せようとする自意識が働くのか、頭の回転が鈍りうまく話すことができなかったけど、本好きの人に向けて本の話をする楽しさを知ることができて本当によかった。多数の人に向けて一人でお話を進めていける人のことを尊敬するし憧れる。良い影響を受けて自分の中で何かが変わった気がした。

今日の川柳はコウノトリとラグビーボールをどう繋げるかで悩んでいたのだけど、最後の最後で中原中也の詩が手助けしてくれた。

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