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【11】人間には強み・弱みなんて無い。あるのは「特徴」だけ(不登校からのキャリアデザイン パネルディカッション編①)

※この記事は2019年8月18日に京都市で開催した、イベント「不登校からのキャリアデザイン〜「行かない」の先を、生きやすく。〜」における講演・パネルディスカッションの書き起こし原稿になります。登壇者・主催者のプロフィールはこちら


人間には強み・弱みというのは基本的にはなく、人間としての特徴があるだけ

曽和(以下、曽):第 1 部(講演パート)で中島さんから「不登校児は劣っているんじゃない」という話がありました。休憩時間の間、そのことについてちょっと具体的に中島さん、門川さんと話していまして。

 例えば採用基準で「知的好奇心が旺盛な人をとりたい」という会社は多いんですね。「知的好奇心が旺盛」というのは「社会的望ましさ」が高いので。人事の人に「知的好奇心旺盛な人をとりたいですか?」と聞くと「はい」と返ってきます。

でも、実際の採用ジャッジを見ていると、バックパックで 30 カ国回っていました!っていうような人に対しては、「あぁ、こいつはうちの仕事をじっと我慢してこなすことができないんじゃないか。色んなところに目が移って仕事がつまらないと感じて辞めてしまうんじゃないか」と思われて評価が低い。つまり採用しないんですね。もっと言うと、「飽き性」だと評価されてしまう、というようなこともあります。

門川(以下、門):「社会的望ましさ」が高い項目で評価されても会社によってはアンマッチになることもあると。曽和さんの著書の中に、「人間には短所長所というのは基本的にはない。人間としての特徴があるだけ」と言う言葉がありました。とても興味深いなと思うんですが・・・。

曽:本当にそうなんです。今、大学のキャリアセンターにもしょっちゅう提案しているんですが。 就職用に履歴書とかのフォーマットがありますよね。あれに「強み・弱み」って書いてあるんです。もう、あれやめましょうよと。

「特徴」って書かないと。「強み・弱み」っていうのは、さっき言ったように会社によって変わるんで。その人にとっての強みが、ある会社にとっては弱みになりえることが往々にしてあるし、学生側も何を強みとして書けばいいんだろうかと。

もっというと、そういう風に問うこと自体が、いわゆる「社会的望ましさ」っていう軸を強制する感じになるんですよね。「社会的望ましさ」と言いながらも、僕の感覚で言うと、「社交性がある方がいいよね」といっても、3 分の 2 くらいはそう思っているかもしれないけど、残りの 3 分の 1 は実は「そういうのウザいよな」って思ってる人がいるくらいの状況ですよね(笑)そんな状況でも「社会的望ましさ」ってつくられていってしまうんですよ。

「社交性がある方がいい」と思っていない人も本当はたくさんいるはずなんです。なのに、「社会的望ましさ」としては「社交性がある方がいい」となってしまって、少数派が押さえつけられている感じがします。なので、ことあるごとに僕は、強み弱みなんて無い。人間には特徴があるだけ。あるとすれば、何かをやるって状況に出くわしたときに、その特徴は良いよね・ダメだよねとなるだけなんだと。良いか悪いかは状況によると。そう思っています。

門:確かに、「強み・弱み」ってなった瞬間に、「それっぽいこと」を書かないとってなっちゃいますね。それが「社会的望ましさ」の軸を強制される感じ、なのでしょうね。

曽:そうです。それで「社会的望ましさ」の軸に自分を当てはめようとするし、その軸で自分を評価してしまうんです。そうすると、そこにいらない劣等感がうまれる。

友達は多くないといけないんじゃないかとか。社交性もそうですけど。そんなのいらないのにむりやり作るみたいなところが、すごくねじれていると思いますね。就活のありかた自体もいろんなところがねじれていて、すごく問題だと思っています。そういうところも全部すっきり通していかないと、なかなか、我々が理想としているところには到達できないだろうなと難しさを感じています。

パソコンで、今まで作った作品を全部見せたら、「素晴らしい能力があるから、ぜひドワンゴに入社してください」と

中島(以下、中):N高校のたちあげのときにね、ネットの高校なので、システムを作ってくれたのがドワンゴのプログラマーさんでした。彼は実は高校中退だったので、N高校の開校と同時に学籍番号 1 番で入学してきたんです。ドワンゴの中でも優秀なプログラマーなんですが、彼は小中学校で不登校、高校は通信制に行ったけれど途中で中退しています。

対人恐怖症で、人と関わるのが苦手でほとんど学校に行っていなかった。でもゲームが好き、ゲームをつくるのが好き。小学校の時からゲームをつくって、プログラミングをするようになっていた。中学生になってからもどんどんつくるようになって、通信制高校は中退したけれど、プログラマーとしての仕事をやりたかった。で、プログラミングの企業にどんどん採用試験を受けに行ったわけです。

でも、ほとんどの会社がまず面接で、対人恐怖症だから面接の段階でことごとく落とされたんです。まともに答えることができないならいらないと、採用してもらえなかった。その中で唯一、ドワンゴを受けたとき。ドワンゴでも面接で面接官の顔すら見れなかったんですが、面接官が「プログラマーとして志望されているんですよね?それなら、プログラマーとしての能力を見せてください」と言われて、それならできますと。持っていたパソコンで、 今まで作った作品を全部見せたら、「素晴らしい能力があるから、ぜひドワンゴに入社して ください」と言われた。

先ほど曽和さんがおっしゃっていた、旧態とした「社会的望ましさ」にとらわれた採用をしていたら、ドワンゴはこの優秀なプログラマーを採用できていなかったわけですね。

【連載:不登校からのキャリアデザイン】

https://note.com/sunaba_corpo/m/m2f2850979f50

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