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『寝れないときには、童話でも。』第一夜、人魚姫は泡になった後、ーーになったって知ってる?

「それでもかまいません」と、人魚のお姫さまは言いました。

こんばんは、そしてはじめまして。
向日葵へい と申します。
この題名につられたということはあなたは普段眠れていないのでしょうか……?
私もそうです、似た者同士ですね。何ちゃって。

自分が小さな頃、寝物語として、大人の方におとぎ話や昔話を読んでもらった懐かしい記憶はありませんか?
この記事は、
「眠れない時は、小さな頃に戻った気持ちで、懐かしい童話でも1つ読んでみてはどうかな?これが意外と面白くて、いい睡眠導入剤になると思うんだな」
というコラムもどきです。

しかしながら、

童話は短くて、話も読みやすいし、わかりやすい。そして何より青空文庫などネット上でも話が転がっていて簡単に読めるんです!読んで!

……とか言っても、正直、興味が湧かない限り読みゃしませんよ。人間って生き物は。

そこで、

私が全力で、童話の『個人的に(重要)』面白いと思ったポイントをいくつかご紹介させていただくのはどうだろうかと思い至りました。
少しでも童話に興味を持っていただけたら幸いです。

どうぞ、今夜は自分のために童話を読み聞かせてあげてください。
あ、タイトルの答えはいちばん最後に書いてあります。ご安心を!

さあ、前置きが長くなりました。
本題に参りましょう。

今回取り上げるのはアンデルセン作『人魚姫』

人魚の姫、人魚のひいさま、色々な訳され方がありますが、もうこれほど有名な童話ですと大筋は大体存じ上げている方が多いですよね。
そう!(大筋知っていたら、下の数行読み飛ばしてかまいません)

人魚の姫さんが、人間の王子に恋して、王子会いたさに魔女と契約して人間になるけれど、その契約のせいで美しい声を奪われ、王子に会えても話せないし、他にも色々な制約がかけられてしまう。何だかんだあった末に、王子は人魚姫ではない人間の女性を花嫁として迎えることになり、制約の1つである「恋が叶わなかったら泡になって消える」により人魚姫は泡になって消える。おーしまい。
って話ですねー。

そんな『人魚姫』のお話、個人的推しポイントは3つになります。

1.なんと悲しき、「勘違い」
2.人魚姫の父親、マジ空気。
3.かつてこれほどまで健気なヒロインがいたか

です。ではご紹介します。

1.なんと悲しき、「勘違い」

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お笑いコンビのアンジャッシュの鉄板ネタと言えば「勘違い」ですよね。あれは終始笑っていられるのですが、こちらの勘違いは終始、読者の胸の痛みが伴います。『人魚姫』における勘違いは、王子によって中盤から発覚します。どれほどツラいものかと申しますと、人魚姫のあまりの救われなさに「アンデルセン、タンスの角に思い切り足の小指ぶつけてしまえクソ野郎」と叫ぶぐらいです。ほんとアンデルセンを恨まざるを得ない。
「勘違い」場面の1つを、少し引用させていただきます。王子が人魚姫に話しかけているシーンです。(「……」は省略です)

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王子ぃぃぃぃい!!?人魚姫がいちばん若い娘、(王子の後の花嫁となる人)の姿を塗り替えてんじゃねーんだよ。もともと人魚姫が助けたの!おわかり?テメェがハッキリと気がついた時にはじめて見た相手がシスターだっただけなの!
ってかそもそも人魚姫のことを王子が一切(潜在的には知らないが)顕在的には覚えてないって、人魚姫辛すぎるだろ!
でもシスターも悪人じゃないから恨めないんだよ、畜生!辛い!(オタクによる高速詠唱)

みたいな感じで叫んでいます私はw

2.人魚姫の父親、マジ空気。

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ディ〇ニー映画『リトル・マーメ〇ド』のお父さんって娘のことを大切に思っていて、最高にカッコ良いですよね。しかし、元になった『人魚姫』のお父さんは、カッコ良い悪い以前の問題で、そもそも存在が空気なんです。セリフすらないw
お父さんのお母さん(人魚姫から見たらおばあちゃん)と人魚姫のお姉さま方に見せ場が全て取られてます。父の威厳は、哀しい哉、全くありませんw


余談、(逆に?)おばあちゃんがかなり魅力的なキャラとして描かれています。おばあちゃんは途轍もなく仕事が出来る方であらせられるんですけど、全く謙遜することなく「私ってスゴイでしょ?」と見せびらかす系の可愛いおばあちゃんです。

3.かつてこれほどまで健気なヒロインがいたか

いや、いない!(反語)私が何か書くより、読んだ方が早いです。引用いたします。

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人魚姫ぇ……。お前ってやつはよぉ……。もう何も言うまい……泣


以上が個人的推しポイント3つでした。

「死なない魂」を望んだ人魚姫の結末は?

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ここまで読んでくださってありがとうございます。
お待たせいたしました。タイトルの答えをお教えいたします。

アンデルセンの『人魚姫』の世界では独特な命の捉え方があります。

人間は、人魚より寿命はかなり短いが、寿命を迎えて肉体が死んでも「死なない魂」があり、天に昇れる。
人魚は三百年も生きれるが、死ぬときは泡となり魂諸共全てが無に帰すため、「死なない魂」を持っていない

というものです。
人魚姫は王子と出会い、恋をし、自分も人間のような「死なない魂」を手に入れたいと苦しみます。
人魚姫は、「死なない魂」を手に入れるためにも、人間になるためにも、人間の愛を受けなければなりませんでした。それも普通の愛ではありません、「私が愛するのはあなただけだ」という強い愛情です。

結局、それを手に入れることが出来ずに人魚姫は泡となって消えてしまいます。
みんながよく想像する結末はここですが、
…………この続きあるんだな。誰かの二次創作でも何でもなくて。
焦らすの好きじゃないので言ってしまいますね。

人魚姫は泡となって消えた後、「大空のむすめ」に生まれ変わります。
空気の娘とか訳され方はいっぱいありますがね。

どうして「大空のむすめ」に生まれ変われたのか。
「大空のむすめ」になると何が出来るようになるのか、どうなるのか。それを理解すると人魚姫の結末にまた違った解釈をすることができます。

悲しく切ない話がアンデルセンには多くありますが、それだけでは終わらせないのが彼の童話です。
大空のむすめ」に生まれ変わった人魚姫はどんな気持ちで結末を迎えるのかはぜひあなたの目で確かめてみてください。
『人魚姫』は『人魚のひいさま』という名前で青空文庫にありますよ。


では良い夢を。

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