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【ショートショート】お母さんがお母さんになった日



今日は、
私にとって特別な日。



―ピロンッ
『誕生日おめでとー!』

―ピロンッ
『おめでとう!今日はお腹いっぱいケーキ食べなよ!』



友だちから届いたおめでとうメール。
追加で書かれていた内容を見て思わず笑ってしまった。

食べたいけどお腹いっぱい食べたら
数字が増えそうだよ。


「でも、今日くらいいいかもしれない」


だって、
食べるのは私だけじゃないから。





定時であがるなりお店に向かった。

いつもより急いで家に帰ってきた私に、
台所に立っていたお母さんはビックリしていた。


「そんなに早く帰って来なくてもケーキはなくならないよ」


そんな言葉を背に部屋に入り準備をした。






「おめでとう」


私の大好きなチョコレートケーキと
ピンクの箱をもらった。


中には、欲しいと言っていたリップと香水が。


「ありがとう!」


豪華なご飯に大好きなケーキ。
欲しかったものが目の前にある。


すごく幸せ。


そんな私をみて嬉しそうに笑っているお母さん。


「はい。お母さんにもプレゼント!」
「え?お母さんにも?」


なんで?
ふしぎそうなお母さんに
当たり前じゃんと言った。


だって、

 

「私の誕生日ってことは、お母さんがお母さんになった日でもあるんだよ?」



私の年齢=お母さん歴なんだから。



その言葉にお母さんの唇が震えた。


「お母さん。私のお母さんになってくれてありがとね」


お父さんが亡くなって
私をここまで育ててくれたお母さん。

夜遅くまで働いていて
今では手がシワシワになっている。




お母さんがいてくれたから
私はここまでがんばれた。



「ありがとうね。お母さん」



そして、おめでとう。




私の誕生日=お母さんがお母さんになった日



―おわり―





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