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ショートショート|なつとふゆとはるとあき

僕は夏。
兄は冬、妹は春、一番下の妹は秋。
さぁ、これから僕の季節。夏休みをみんな楽しみに待っている。
「ねぇ。僕の休みは何したいかな?」
「そうね。私のときはみんな暖かくなって嬉しいって言いながら、桜を見てのんびり楽しそうにお弁当食べてたわ」
「僕のときは、寒そうにしてたけど雪でお団子作って投げ合って笑ってたよ」
次々に自分たちの季節の休みにいかに人々が楽しそうに過ごすか自慢するように語りだす。
秋は黙ったままだった。
「秋は?」
「……だって。秋は、休みがないんだもん」
僕たちは一斉に黙ってしまった。
確かに、秋休み、なるものはない。
こういう時、なんて言えばいいんだろう。
「秋は、食べ物が美味しいよね。柿や栗。さんまやカツオ」
冬兄がぽつりと言う。
「そうそう、それに涼しくなってみんな嬉しそうだし、紅葉も綺麗だし」
春が続いて言い
「夏。みたいに鬱陶しくないし」
とさらに付け加えてくる。
「なんだよ、それ」
僕と春がぎゃあぎゃあ言い合っていると。
「……でも、夏はみんな元気になるよ」
秋が控えめに呟く。
「みんなとってもきらきら光ってて……。私好きだな……」
「秋~!」
僕は秋の言葉に瞳をうるうるさせて抱きついた。
「休みという名前があるかないかなんてどうでもいいんだよ~。秋は存在するだけでみんなを癒すんだから」
「そうそう」
「みんな、僕たちを味わってくれればそれが一番」
「……みんな、好きな時に休みをとれればいいのにね」
「たしかに~」
僕たちは声をそろえて言い、笑いあうと下界を見下ろした。
四人で手をつなぐ。最近、春と秋が小さくなってきている。僕はその小さな手を離さないようにしっかりと握った。
「みんなが楽しめるように」
と僕がいう。
「健やかに育つように」
春が朗らかに笑い
「癒されるように」
秋がたおやかにいうと、
「たくましくなるように」
冬兄がいった。
そして僕たちはお互いのおでこをくっつけあって祈った。


***おわり***


昨日(8/19)第2回「物語の発想法を学ぶ」講座が開催されました。


2021-08-19 ショートショートチャレンジ#500文字

【次回までにチャレンジ】
ショートショートを執筆してみよう!
テーマ:夏休み
文字数:500字程度
8月25日(水)まで
「#物語の発想法を学ぶ」

とあったのでチャレンジしてみました。

書き終えてからハタと気づいて調べましたが、今って秋休みあるんですね。
もう書いちゃったので、秋休みがなかった時代もあった、と知れるということでお許しください。

そして文字数もなんだかんだ、786文字に。。。
すみません。
コンテストではないからそのまま載せちゃいました。


#物語の発想法を学ぶ

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