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販促担当が考えるべき「黒い人形」論争

みなさん、こんにちは。SUMMERです。

今回は、みなさんも幼い頃遊んだであろう、「人形」にまつわるダイバーシティのお話です。(なんだか怖い話しの冒頭みたいですねw)

さて。みなさん「人形」と聞いて、なにを思い浮かべますか?

リカちゃん人形、バービー人形、シルバニア人形、ウルトラマン人形、なかにはなぜかテディベアを思い浮かべた人もいるかもしれませんね!今回はその中でも、「リカちゃん」 や 「バービー」 といった、わたしたち人間の形を模した人形に関する炎上事例を、SUMMERの考えも含めたうえでご紹介させていただきます。


1.日本を代表する人形「リカちゃん人形」

日本で生まれ育った人なら、おそらく一度は目にしたことがあるでしょう「リカちゃん」ですが、みなさん外見を思い出せますでしょうか?

そうそう・・・

こちらが「リカちゃん」です。

(引用元:http://licca.takaratomy.co.jp/profile/index.html)

なまえ:香山リカ / 年齢:小学5年生 / 外見:金髪・西洋風ドレス

ちなみに「リカちゃん」から発売されている「ファミリードール」たちはこんなかんじ。

(引用元:http://licca.takaratomy.co.jp/products/doll/index.html)


みなさん、ここまでで違和感を感じますか?


そうです。みんな金髪 なんです。

日本人の名前がつけられ、日本のこどもたちのためにつくられた人形のはずなのに、外見は西洋人(白人)なのです。

そして、商品サイト上の『おうちのかたへ』というページには、こんな記載があります。

(引用元:http://licca.takaratomy.co.jp/profile/parents.html)


女の子らしい美的センスをはぐくみます。


ここが、『人形』の怖いところです。こどもは無意識のうちに、じぶんの身近にあるものにあこがれを抱きます。たとえば、「大きくなったらウルトラマンになりたい!」のように。

ここでなにが起きうるかというと、「リカちゃんみたいにかわいくなりたい」と言ったこどもが描く「かわいい」は「金髪、小柄、大きな目、白い肌、女の子らしいドレス」になりうるということです。


2.ドールテスト

『Doll Test(ドールテスト)』ご存知の方もいらっしゃると思います。とくに、心理学の授業を受けた経験のある方はご存知かもしれません。これは1950年代、アメリカの黒人差別の歴史における、代表的な事件のひとつである『ブラウン判決』の行方を大きく変えたといわれている実験です。

『ブラウン判決』を語るにはとても時間がかかるので、今回は割愛します。が、気になる方はこちらの”ニッポニカ”の解説を読んでいただければなんとなくわかるかと思います。

『ドールテスト』は、アメリカのアフリカ系・アメリカ人の夫妻、クラーク夫妻により行われた実験で、目的としては、「黒人隔離がいかに非人道的であり、どんな影響を人々に与えうるのか」を説くためです。

気になる『ドールテスト』の内容ですが、まずクラーク夫妻は白と黒の2体の人形を用意し、こどもたちに問いかけます。

「どちらの人形が良い人形?」

すると、白人のこどもたちはもちろんのこと、黒人のこどもたちも「白い人形」を指さします。

(あまり「黒人」というワードは使いたくないのですが、文章がわかりにくくなってしまうので今回はすみませんが「黒人」というワードを使わせていただきます。)

「では、悪い人形はどっち?」こどもたちは、「黒い人形」を指さします。

そしてここから考え深いのは、黒人のこどもたちに「どちらの人形がじぶんに似ていると思う?」と問いかけるのです。

すると、こどもたちは先ほど自ら「悪い人形だ」といった「黒い人形」を指さし、「じぶんはこっちの人形に似ている」と言うのです。

この一連の動画を使い、クラーク夫妻は、アメリカにおける黒人隔離社会が黒人のこどもたちにどれほどの劣等感を与えているのか、どれほどの自尊心を失っているのか、を裁判で説きました。

なぜわたしがここで『ドールテスト』を挙げたのかというと、この実験が行われた当時の社会的背景は、現代も変わっていないように思えるからです。



3.現代も変わらぬ差別的な社会とは?

ドールテストが行われた1950年頃のアメリカと、現代の世の中はさほど変わっていない とわたしが思う理由は、この風刺写真を見てもらえれば明らかかと思います。

(引用元:http://www.chrisbuck.com/)


この作品は、写真家の Chris Buck さんによるものです。

違和感を覚えますよね。

しかし、この写真であれば違和感を持たないはずです。


わたしたちも知らず知らずのうちに、人種差別社会のなかにいて、人種差別を気付かぬうちに受け入れていることを実感していただけたと思います。

この感覚、この視点を忘れないうちに次の事例に進みたいとおもいます。


4.今後日本でも起こりうる?!海外で起こった炎上事例

こちらの画像は、アメリカの大手スーパーマーケット ”ウォールマート” にて撮影されものです。

(引用元:https://abcnews.go.com/Business/black-barbie-sold-white-barbie-walmart-store/story?id=10045008)


この1枚の写真によりウォールマート は大炎上したのですが、みなさん理由はなんとなくわかりましたかね?

そうです。値段の違い が炎上の火種となりました。

この一枚の写真はSNS上で瞬く間にひろがり、「黒人の価値は白人の価値よりも低いのか!」と多くの批判の声があがりました。

ただこの画像を余談なしで見たとしたら、恐らくなにも感じなかった人が多数いたはずです。そして、販売促進や店舗の価格戦略などを担当されている方がみれば、「黒い人形の売れ行きが悪かったのだろう」「ピンクの人形の方が人気なのだろう」といった感想が出てくることは容易に予想がつきますし、理解もできます。

実際に、ウォールマートの広報担当、Melissa O'Brien さんはこのように述べました。

春の在庫整理に伴い、当店のいくつかの商品をクリアランス商品として販売していました。

(引用元:https://abcnews.go.com/Business/black-barbie-sold-white-barbie-walmart-store/story?id=10045008)


しかしこの類の事例は、ニュースとしては取り上げられていないものの、SNS上に多数存在しています。

もしもあなたの肌の色が濃かったら。そしてSNS上でこのような画像が多数回っていたら。わたしの肌の色の価値、わたしの人種の価値、は白人の人たちよりも低いのだろうか。と思ってしまうかもしれません。

いや。むしろそれよりも前に、これら棚にアジア人のバービー人形が並んでいないことに、私たちは違和感を覚えるべきなのかもしれませんね。


5.これからの日本で、物販に関わるみなさんが気をつけるべきこと

今後、東京オリンピックの開催や外国人観光客/労働者の増加により、日本も多種多様な顧客を抱えていくことになります。それは、決して何十年も先のことなんかではなく、ほんの2、3年でガラッと変わりうることです。

したがって、販売促進担当者や、ストアマネージャー、さらには商品パッケージのデザイナーまでもが多様性に気を配らなければなりません。

ほんの少しの値段の差、ほんの少しのクオリティの差、ほんの少しの言葉のミスチョイスが、ある一定の人々の心に大きな傷を与えうるということを、常に念頭に置いていなければなりません。

そしてその与えてしまった傷をぬぐうことは、このSNSが発達した世界では非常に難しいのが現状です。

実際に "Shoprite" というスーパーマーケットでも、同じような炎上が起きました。これに対する企業の反応は、「単なる置き間違えで、人種差別ではない」とし、配置し直した画像を発表。しかし、人々の傷ついた心に響くはずもなく、さらなる反感を買う結末となりました。

誰かが傷つき発信し、それを見たほかの誰かがまた傷つき発信し、そしてこの連鎖は瞬く間に世界中へと広がっていくのです。


ここまであらゆる企業の人形に関わる炎上事例を紹介させていただきましたが、もう炎上が怖くて、わけが分からなくなってしまった人もいるかもしれません。

ただ、みなさんの身近に、人種の垣根を越えて多くのこどもたちに夢を与えている会社があります。

そう!世界が誇る、「ディズニー」です。

肌の白い子、肌の黒い子、肌の黄色い子、黒髪の子、赤髪の子

いろいろな外見、個性を一つの世界観に包含することができるこの世界こそ、わたしたちが目指すべき、社会のあるべき姿なのかもしれません。

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