見出し画像

タンゴミロンガの魅力、オーガナイザーの魅力

ブエノスアイレスでは、まだタンゴ界の再開の目処は立たないので、ミロンガ(タンゴを踊るサロン)によってはzoomを使ってオンラインミロンガを開催している。

Abrazo(抱擁)のないミロンガなんて、と興味はなかったのだけど、友達の誘いで参加してみたら、それがとても良かった。
ミロンガの価値は踊るだけじゃないなぁと改めて実感。

いつものフロアで聴き慣れたタンゴが流れ、ミロンガで会っていた世界中の顔馴染み達が画面の中に居て、懐かしくて思わず涙ぐんだ。
タンゴで繋がった人と人の絆って素敵だ。

またオーガナイザーの挨拶がとても温かくて、よかった。「ミロンガのファミリー達、みんなが恋しいわ。」と言われると、画面のこちら側で「わたしも。」と頷いてしまう。

ミロンガのオーガナイザーというのは、ミロンガの要だ。
オーガナイザーによってミロンガのカラーはガラリと違う。
彼らが自分のミロンガをどうオーガナイズするのかの意思を持って、DJを選び、客を選び、客の配置をアレンジする。

面と向かって客を選ぶオーガナイザーもいない訳じゃないが、大抵はやんわりと、その場に見合っているのかを告げられている気はする。
場違いなミロンガに紛れ込んで、誰ともカベセオ(目を合わせること)が出来ないような場所に案内されたりすると、「お呼びじゃないのね」と思わざるを得ない。

オーガナイザーは自分のミロンガにふさわしい客を招待し、大事に扱い、いい場所に座らせる。そうやって全体の雰囲気を作り上げ、ファンを増やしていく。だから、行くわたし達もその場にふさわしくあるべきなのだ。

それがわかってからは、初めて行く場所の時は、知っている人に「どんなミロンガ?」と聞くようになった。
黒のドレスにパールのネックレスの似合うミロンガと、ヒョウ柄とカジュアルな組み合わせで行ける場所は違うし、プロの若いダンサーばかりが集まるミロンガと、趣味で踊る旅行者も多い場所はまた違う。
その場にしっくりきていると、踊りに誘われる頻度も高いし、楽しめる。
逆に、踊り方や装いがその場に合っていないと、何より自分が居心地悪い。

ブエノスアイレスに来て最初の頃は、武者修行みたいにあらゆるミロンガに出かけて行った。
いろんな雰囲気のミロンガを体験し、いろんなタイプの踊りに出会いながら、自分の好みを見つける期間だった。
6年経っていまは、決まった曜日の決まったミロンガに落ち着いた。あとはイベントや友達に誘われて他のミロンガに行き、トータルで週に2回から3回踊りに出かける程度。

わたしが好んで行く場所のひとつが、オンラインミロンガを開催した日曜日の夜のEl Beso。
このミロンガは落ち着いた温かみのある雰囲気で、地元の人にも旅行者にも人気が高い。これはオーガナイザーの運営力のなせる技だろう。

おそらくファン作りの秘訣は沢山あるだろうが、中でも客の名前を覚えるのは基本中の基本かと思う。
ここのオーガナイザーはごく初期にわたしの名前を覚えてくれた。それだけでも嬉しかったが、さらに耳もとで「あなたはわたしのお気に入りの踊り手よ。」と言ったのだ。
わたしはこの口説き文句に、すっかりやられた口だ。

いまや、あなたのミロンガは、わたしのお気に入りです。

この記事が参加している募集

コンテンツ会議

おうち時間を工夫で楽しく

読んでくださり、ありがとうございます。 サポートのお気持ちとても嬉しいです。ありがたく受け取らせていただきます。感謝💕