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幼稚園の懐かしい笑顔

以前、私のコンプレックスに関する記事を書いたついでに
ネットサーフィンをしていたらこんな記事を見つけた

【コラム】保育所の保育士は貧乳に限る・韓国

記事そのものは、勘違いが激しい保育園児の
保護者にまつわる馬鹿馬鹿しいエピソードなんだけれど
そう言えば上の子が幼稚園児だった頃にお世話になった
さとみ先生(仮名)のことをふと思い出した
ちなみにさとみ先生は巨乳ではない
巨乳が似合いそうな雰囲気ではあったけれど

今回はさとみ先生について書いていこうと思う


今からもう10年以上前の話である
上の子は当時年長さんで、来年には小学校に入学するために
幼稚園では色々と卒園に向けて準備をしていた

上の子の通っていた幼稚園にさとみ先生という
新卒で入ってきた当時20歳の若い先生がいた

さとみ先生は上の子の担任になることはなかったけれど
普段の保育時間が終了した後の、延長保育の時間にお世話になったり
上の子の園バスの送迎で付き添いで乗ってきて
子供の様子を報告してくれたりしていたので
親子ともに親しくしていた先生でもあった

さとみ先生は長身でがっしりした体型だったけれど
それもそのはずで、学生時代はソフトボール部で
ピッチャーをしていたらしく、体を動かさないといられないタイプ

幼稚園に就職した後も、毎週スポーツジムに通って
「筋トレを欠かさない毎日ですー」とほがらかに笑っていた

こういうことを書くと、ごっつい女性を想像するかもしれない
でも風貌は真逆で、色白でフワフワしたとても可愛らしい顔立ち

そこがギャップで彼女の魅力を高めていたと思う


上の子が幼稚園を卒園する日が来た

卒園式の日、卒園するクラスは自分の受け持った子たちではないから
さとみ先生はいつもと同じ笑顔かなと思っていたんだけれど
意外にも、涙を流しながら子供たちを見送っていたさとみ先生を見て

『もう、上の子とここに来ることもないんだな』と

なんだか寂しい気持ちになった


数年後、風の便りでさとみ先生が幼稚園を辞めたという話を聞いた

その話をすると私の母は笑いながらこう言った

「それは、結婚だよ!めでたい話じゃないの
だって、あれだけ可愛いかったんだからね」

母は呑気だなと思いながら、でも私はその通りだろうと思っていた

きっと、さとみ先生は優しくて誠実な男性と
どこかで新しい毎日を送っているのだろう

もう会えないのは個人的に残念だけれど

『幸せになって下さい』と心から思った


月日は流れ、上の子は中学生になった
中学校では一年生の授業で職業体験というものがある

職業体験は、自分がやってみたい仕事を一週間ほど
企業の協力で体験させてもらうことになっていた

上の子は何をするか最後まで迷っていたけれど

「私、幼稚園に行ってくる」と夕飯の時に言ってきた

「いいんじゃない、やってみなよ」

そして上の子の職業体験が始まったのだった


娘が行くことになった幼稚園は
中学校からそれほど遠くない場所にあった

自宅からはそこそこ距離があるので、自転車で通うことにした

「私、うまくやれるかな…」

娘は不安げな表情で幼稚園に出かけて行った

こちらも、はらはらしながら一日を過ごしていたのだけれど
夕方、予想に反して明るい表情で帰ってきた娘がこう言った

「あのね、さとみ先生に会ったんだよ!」

「さとみ先生は主婦になったんじゃなかったんだ」

「え?それは知らないけど、向こうもものすごくびっくりしてて
元気だった?って質問攻めにあっちゃった」

さとみ先生のほがらかな笑顔が頭に浮かんできた

娘の話によると、さとみ先生は以前の幼稚園を辞めた後
今の幼稚園に転職したらしい

「私の元担任の先生とも、今も連絡を取っているみたい」

娘は楽しそうにさとみ先生の話をしてくれた


それから一週間、娘にとってはとても楽しい毎日が待っていた

「私さぁ、中学から一緒に行った子たちの中で
一番子供たちに人気が出ちゃったんだよね」

完全なる自己満足だけど娘は嬉しそうだった

「そういえばさとみ先生がさ、今の私の顔をLINEで
元担任の先生に送ったみたい」

「へぇ、返信が楽しみだね」

「なんか、思ってたの違うとか言われたら怖いけど…」

娘はどこか嬉しそうに言った


娘の職業体験最終日
さとみ先生は娘にこんな言葉をプレゼントしてくれた

『○○ちゃんが幼稚園の頃と変わらないで
いつも笑顔でいてくれて嬉しかったよ』

『○○ちゃんも自分のやりたい事を頑張って下さい
そしていつまでも笑顔を忘れずにいて下さい』

さとみ先生らしい言葉だなぁ思った

「私、さとみ先生にまた会えて嬉しかったよ
またいつか再会できたらいいな」

まさか幼稚園の頃だけでなく
中学生になってからもお世話になるなんてなぁ

人との縁はこういうことがあるから面白い

さとみ先生のほがらかな笑顔を思い出しながら
心が温かくなるのを感じていた


その後、偶然スーパーで買い物中に会った
娘の幼稚園時代のママさんにこんな話を聞いた

「あの幼稚園がね、規模を縮小するために
希望退職者を募っていて
それでさとみ先生は辞めたみたいだよ」

「さとみ先生はすごく前向きな性格だから
新しい環境でやろうと思ったみたいだね」

なんだか、さとみ先生らしいなぁと私は思った

母の早とちりで勝手に結婚を祝福していた私って…

でも…

『さとみ先生、いつまでも幸せでいて下さい』


(注)このお話は個人の特定を避けるために
一部の設定や個人情報は架空のものとなっていますのでご了承下さい



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