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トランス初期の私が、会社の健康診断を受けた時の話

 毎年、会社が指定するクリニックで健康診断を受けているのですが、今年も10月に受けてきました。今回は少々緊張する健康診断となりました。というのも、今年5月からホルモン剤を服用していて、その薬の作用で胸が少々膨らみ始めていた頃で、内科健診で医師に指摘されるのではないかと思っていたのです。

ていうか、本当は指摘されたかったです。

理由はいろいろですが、自分の体が他の人から見ても、男性のそれではないと分るくらいトランスが進んでいることを実感したい。それが正直な気持ちでした。


JRタワー内で迷子

 健康診断当日、名駅高層ビル群のJRタワー内にあるクリニックですが、迷子になってしまった。昨年はなにも迷うことなくクリニックに行けたのに、今回はクリニックがある階に上がるエレベーターが見つからない。
年のせいか?それともホルモンによるボケが原因か?
予約時間も迫っているし、仕方ないので、見かけた警察官に場所を聞いて、予約時間5分前に、やっとクリニックにたどり着いた。


更衣室

 受付を済ませて、待合室で名前が呼ばれるのを待っていたのですが、なかなか呼ばれない。結局15分くらい経ってから、やっと名前(もちろん、「すみれ」ではなく男性名で)を呼ばれた。
 男性用(見た目オッサンですから)の更衣室に案内されて、ここで着替えてから、奥の検査待合室で待ってくださいと言われ、健診用の服を渡された。

 人前では堂々と脱げない体になってしまった私は、更衣室の奥まで行って、誰か入って来てもすぐには見えない場所でサッと着替えて、更衣室の反対側の出入口から、検査受付の場所に行った。まあ、他の人に裸を見られても、気付かないレベルの胸ではあったと思う。まだ、小太りおじさんのほうが胸は大きいのです。

 検査受付カウンターで番号が書かれたタグを渡され、カウンター前のたくさん並べられた椅子に座っていると、直ぐに番号で呼ばれた。


身長と体重と腹囲の計測

 初めは身長、体重、そして腹囲の測定をしました。検査室のデータ入力端末には、前回の検査数値が表示されていて、今回の数値と比較できるようになっているのですが、予想以上に今回の腹囲が細くなっていたのか、測り直された。それでも80cmは越えていましたが・・・。
 本当は80cmを切りたかったのですが、目標に全然届いていなかった。出来ることなら、70cmくらいまでにしたいのですが、オトコのこの骨格じゃ、いくら頑張っても無理。ならば、あばら骨二本くらい、へし折ってやろうかと思っていたりしますが。


アルコール消毒でBBクリームが!

 次に呼ばれた検査が、血圧測定と問診、そして採血でした。今回初めて健康診断で、血圧が高いと言われた。また問診では、医師に処方されている薬の有無とか、サプリメントを飲んでいたりするのか聞かれたが、サプリメントどころか、薬局では一般には売っていない女性ホルモン剤、しかも強めのやつを個人輸入して、飲んでますって言えずに、「何も飲んでません」って言ってしまいました。

 そして問診の後、その場で直ぐに採血となり、アルコール綿で採血する場所を消毒された。実は私は、腕のシミを隠すために、BBクリームを塗ってあったのですが、もちろん今日の採血時に消毒されることは分かっていたので、消毒をされるであろう部分を避けて、BBクリームを塗ってありました。がしかし、予想に反して、結構広い範囲で消毒をされ、アルコール綿にBBクリームの色が付いてしまった。
 茶色く汚れたアルコール綿を見て、看護師は一瞬動きを止めたが、何かを悟ったのか、それに関しては何も触れずに、血管の位置を確かめて、「はい、ちょっとチクッとしますよー」って言って、採血をしてくれました。

 少し恥ずかしい思いをしてしまいましたが、看護師の配慮?で、アルコール綿に付いた茶色いものが何なのか説明せずに、何とか採血は終わった。


スムーズ終わった腹部エコー

 採血の次は、腹部エコー検査で、薄暗い部屋の中に呼ばれた。
そこでは、ベットで横になり、検査着を胸の所まで捲り上げられ、腹にジェルを塗りたくられて、冷たいブローブでグリグリと腹の中を探られた。


緊張した内科健診

 エコー検査は何の問題もなく終わり、次は医師による内科健診となった。
今度はとても明るい部屋に呼ばれ、少しの問診を受けた後、聴診器による胸の音を聞く検査へと移った。
 ネットなどで読んだ話によれば、女性の場合とか、明らかにMTF(トランス女性)と分る場合は、服の裾はたくし上げずに、聴診器を服に中に入れて検査する医師もいるとのことで、私はどう判断されるのだろうと思っていたら、

「はい、服を上にあげて」
・・・
・・・
(うん、そうだよね、分かっていましたよ、見た目はただのオッサンだから・・・)
私は心の中で叫びながら、服の裾を胸のギリギリの所まで上げると、もう少し上まで上げてと言われしまったので、仕方なく胸の上までバッと捲った。

(この胸の膨らみ、何か訊かれたらどうしようか)

そんな事考えていたら、「はい、後ろ向いて」と言われ、今度は背中側から胸の音を聞かれた。

「よし、いい音ですね、何も問題ありません!」


診察した医師は、「次は、視力検査だね、この部屋出て右の奥です」って言われて診察は終わった。

(えっ? それだけ?)
(ねぇ、先生、この胸見て何か聞くことはないの?)
(普通のオトコと変わらない?)

私は、ありがとうございましたと、お辞儀をして部屋の出口へ向いながら、

(次の健康診断の時は、ボインになって来るから、覚えておけ!)

心の中で啖呵を切って、診察室を出ました。


その後、視力測定、聴力測定をして、今年の健康診断は終わった。


来年はもうちょっと胸は成長しているのだろうか?
多くのMTFの場合、ホルモンによる胸の成長はBカップ止まりのようです。Cカップまで成長すると勝ち組、Dカップまで成長すると、神だそうです。


健康診断をした夜、洗面所で歯を磨いている妻の胸を、後ろから鷲づかみしてモミモミしてみた。

(あ~~、質量が全然違う!)


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